スノウチニュース<№250> 令和7年8月


【建築関連統計】
6月の鉄骨需要量は26万9,850トン(前年同月比15.3%減)
25暦年上期(1月~6月)鉄骨需要量178万3,600トン(前年度比7.6%減)

国土交通省が7月31日に発表した「建築物着工統計調査」による2025年6月着工総面積は7,400千平方メ―トル(前年同月比16.0%減)となり、前年同月比では3ヵ月連続減となった。着工総面積の減少傾向は建設費・人件費などの高騰もあり、鉄骨造も低需要が続いている。
建築主別は、▽公共建築物が266千平方メートル(同24.2%減)となり、同5ヵ月連続減となる。▽民間建築物は7,135千平方メートル(同15.7%減)となり、同3ヵ月連続減となった。
用途別は、▽居住建築物は4,478千平方メートル(同17.3%減)となり、同3ヵ月連続減。▽非居住建築物は2,922千平方メートル(同13.9%減)となり、同5ヵ月ぶりの減少となった。
構造別では、▽鉄骨造(S造)が2,667千平方メートル(同15.0%減)となり、同1ヵ月で減少となる。▽鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が63千平方メートル(同35.3%減)となり、3ヵ月連続の大幅減。▽鉄筋コンクリート造(RC造)が1,407千平方メートル(同15.7%減)となり、同3ヵ月連続減。▽木造(W造)が3,209千平方メートル(同15.7%減)となり、同3ヵ月連続減となった。
鉄骨系の需要換算では、▽S造は26万6,700トン(前年同月比15.0%減)となり、同1ヵ月で減少となる。▽SRC造は3,150トン(同35.3%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減となった。鉄骨系合計では前月比7.3%減の26万9,850トン(同15.3%減)となった。
25暦年上期(1月~6月)の鉄骨需要量は、▽S造が175万1,400トン(前年同期比7.9%減)、▽SRC造が3万2,200トン(同9.7%増)となり、鉄骨系合計では178万3,600トン(同7.6%減)となった。
25年度(4月~6月)の鉄骨需要量は、▽S造が93万0,300トン(前年同期比4.1%減)、▽SRC造が9,500トン(同51.0%減)となり、鉄骨系合計では93万9,800トン(同5.0%減)となった。

24年6月-25年6月 鉄骨系需要量の推移

年/月 S造
(TON)
前年比
(%)
SRC造
(TON)
前年比
(%)
鉄骨造計
(TON)
前年比
(%)
2024年度6月 313,800 4.9 4,900 -56.0 318,700 2.7
7月 321,600 2.5 2,450 -77.4 324,050 -0.2
8月 273,400 -5.9 10,200 27.6 283,600 -5.0
9月 327,900 2.4 1,500 -70.9 329,400 1.3
10月 295,600 -26.4 17,050 111.7 312,650 -23.7
11月 283,200 2.1 10,050 154.2 293,250 4.2
12月 276,500 -13.8 3,350 -18.3 279,850 -13.8
2025年1月 249,600 -21.4 8,100 153.2 257,700 -19.6
2月 266,800 -10.2 8,350 204.3 275,150 -8.3
3月 304,700 -4.0 6,300 55.8 311,000 -3.2
2025年度4月 375,100 -1.3 3,650 -52.5 378,750 -2.3
5月 288,500 4.6 2,650 -60.6 291,150 3.2
6月 266,700 -15.0 3,150 -35.3 269,850 -15.3
2025暦年(1月-6月) 1,751,400 -7.9 32,200 9.7 1,783,600 -7.6
2025年度(4月-6月) 930,300 -4.1 9,500 -51.0 939,800 -5.0

 

(国土交通省調べ)

 


日建連の6月総受注額約1兆7,073億円(前年同月比20.3%増)
民間工事は1兆2,806億2,000万円(同28.1%増)

日本建設業連合会(日建連)が7月30日に発表した会員企業92社の2025年6月分の受注工事総額は1兆7,073億3,400万円(前年同月比20.3%増)となり、前年同月比では4ヵ月連続増となった。そのうち、▽国内工事が1兆6,166億7,900万円(同22.0%増)となり、同4ヵ月連続増▽海外工事が906億5,500万円(同4.2%減)となり、同1ヵ月で減少となった。
▽民間工事が1兆2,806億2,000万円(同28.1%増)となり、同7ヵ月連続増▽官公庁工事が3,336億6,400万円(同2.7%増)の微増となり、同2ヵ月連続増となった。
民間工事の1兆2,806億2,000万円のうち、▽製造業が2,757億5,900万円(同36.4%増)の大幅増となり、同3ヵ月ぶりの増加▽非製造業1兆0,048億6,100万円(同26.0%増)の大幅増となり、同7ヵ月連続増なった。官公庁工事の3,336億6,400万円のうち、▽国の機関が1,626億9,100万円(同5.0%増)の微増となり、同5ヵ月ぶりの増加▽地方の機関が1,709億7,300万円(同0.6%増)の微増となり、同5ヵ月連続増▽その他が23億9,500万円(同400.0%増)の超大幅増となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。
2025暦年(1月~6月)の受注総工事額が10兆9,666億6,900万円(前年同期比10.9%増)となった。▽民間工事が8兆3,411億3,300万円(同26.8%増)▽官公庁工事が2兆6,142億7,700万円(同9.5%減)▽海外工事が3,802億5,300万円(同6.0%減)となった。
2025年度(4月~6月)の受注総工事額が4兆8,611億6,000万円(前年同期比28.7%増)となった。▽民間工事が3兆8,609億2,600万円(同43.0%増)▽官公庁工事が8,012億3,200万円(同9.9%減)▽海外工事が1,958億4,800万円(同8.9%増)となった。



地域ブロック別受注実績

日建連・地域ブロック別による6月の受注工事額では、▽北海道が444億6,700万円(前年同月比50.6%減)となり、前年同月比では4ヵ月ぶりの減少▽東北が1,003億1,200万円(同71.2%増)の大幅増となり、同1ヵ月ぶりの増加▽関東が9,058億8,600万円(同60.1%増)の大幅増となり、同4ヵ月連続増▽北陸が467億7,800万円(同12.0%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。
▽中部が1,476億6,600万円(同42.8%増)の大幅増となり、同6ヵ月連続増▽近畿が1,834億9,700万円(同32.7%減)の大幅減となり、同5ヵ月ぶりの減少▽中国が928億3,700万円(同10.4%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少▽四国が161億2,400万円(同14.4%減)となり、同3ヵ月連続減▽九州が799億9,200万円(同12.8%増)となり、同5ヵ月ぶりの増加となった。



6月の粗鋼生産量は671.8万トン(前年同月比4.4%減)
5月の普通鋼建築用受注量38.9万トン(前年同月比2.7%減)

日本鉄鋼連盟が7月23日発表した2025年6月の銑鉄生産は475.9万トン(前年同月比5.7%減)となり、前年同月比では3ヵ月連続減。粗鋼生産は671.8万トン(同4.4%減)となり、同3ヵ月連続減となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が482.3万トン(同5.9%減)となり、同3ヵ月連続減。▽電炉鋼が189.5万トン(同0.3%減)の微減となり、同11ヵ月連続減となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が516.9万トン(同5.7%減)となり、同3ヵ月連続減。▽特殊鋼が154.9万トン(同0.4%増)の微増となり、同2ヵ月ぶりの増加となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は582.1万トン(同4.2%減)となり、同6ヵ月連続減▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は456.9万トン(同4.7%減)となり、同6ヵ月連続減▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は125.2万トン(同2.4%減)となり、同2ヵ月連続減となった。
なお、5月の普通鋼鋼材用途別受注量は、▽建築用が38万9,905トン(前年同月比2.7%減)。うち▽非住宅が27万0,783トン(同1.5%減)▽住宅が11万9,122トン(同5.3%減)となった。
用途別受注量の25暦年(1月~5月)では、▽建築用が196万2,865トン(前年同期比6.2%減)。うち▽非住宅が135万7,455トン(同5.4%減)▽住宅が60万5,410トン((同7.8%減)となった。
25年度(4月~5月)では、▽建築用が77万9,293トン(前年同期比6.0%減)。うち▽非住宅が54万6,660トン(同3.6%減)▽住宅が23万2,633トン(同11.1%減)となった。


5月の溶接材料出荷量1万4,101トン(前年同月比10.6%減)
25暦年(1~5月)の総出荷量7万4,731トン(前年比8.6%減)

日本溶接材料工業会が発表した2025年5月の溶接材料出荷量が1万4,101トン(前年同月比10.6%減)となり、前年同月比で14ヵ月連続減となった。建築や造船、建機など主要産業の需要減が大きく響いている。
出荷量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が5,748トン(同13.0%減)となり、同12ヵ月連続減▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,008トン(同7.2%減)となり、同10ヵ月連続減、▽被覆溶接棒が1,358トン(同23.4%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減。その他を含む出荷量計では1万4,101トンとなった。
25暦年(1月~5月)の出荷量は、▽SWが3万0,311トン(前年同期比12.8%減)、▽FCWが2万6,282トン(同7.2%減)、▽溶接棒が7,785トン(同8.2%減)となり、その他を含む出荷量計での総出荷量は7万4,731トン(同8.6%減)となった。
25年度(4月~5月)の出荷量は、▽SWが1万1,677トン(前年同期比10.3%減)、▽FCWが1万0,276トン(同5.4%減)、▽溶接棒が2,798トン(同14.6%減)となり、その他を含む出荷量計での総出荷量は2万8,858トン(同7.4%減)となった。


溶接材料5月の貿易統計

一方、財務省の貿易統計による溶接材料5月の▽輸出量は2,590トン(同30.1%増)となり、同1ヵ月で増加し、▽輸入量は4,531トン(同17.3%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。
25暦年(1月~5月)の▽輸出量は1万3,612トン(前年同期比10.5%増)▽輸入量は2万3,3521トン(同4.5%減)となった。25年度(4月~5月)の▽輸出量は5,152トン(同12.6%増)▽輸入量は9,568トン(同6.1%減)となった。

24年5月-25年5月 溶接材料月別実績表

単位/トン
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比
フラックス入りワイヤ 前年比
被 覆
溶接棒
前年比
合 計 前年比
2024年度 5 6,605 2.1 5,397 ▼3.7 1,773 ▼10.1 15,780 ▼2.1
6 7,546 ▼0.1 5,156 ▼12.2 1,290 ▼38.5 15,363 ▼13.4
7 7,017 ▼4.2 5,570 3.1 1,270 ▼40.4 16,012 ▼6.6
8 5,275 ▼26.7 4,831 ▼9.4 1,200 ▼37.2 13,163 ▼21.3
9 6,982 ▼8.2 5,225 ▼11.5 1,737 ▼16.7 15,888 ▼10.8
10 5,818 ▼21.8 5,349 ▼5.1 1,396 ▼19.0 14,827 ▼13.2
11 6,082 ▼18.0 5,309 ▼8.2 1,910 9.9 15,477 ▼9.3
12 5,567 ▼24.7 5,396 ▼5.4 1,580 ▼7.7 15,527 ▼7.1
2025年 1 5,902 ▼11.2 5,259 ▼1.7 1,242 ▼26.9 14,605 ▼8.9
2 6,191 ▼14.3 5,268 ▼9.4 1,947 9.4 15,193 ▼9.3
3 6,541 ▼16.7 5,479 ▼13.0 1,798 4.0 16,075 ▼10.1
4 5,929 ▼7.5 5,268 ▼3.6 1,440 ▼4.2 14,757 ▼4.1
5 5,748 ▼13.0 5,008 ▼7.2 1,358 ▼23.4 14,101 ▼10.6
2025年度(4~5月) 11,677 ▼10.3 10,276 ▼5.4 2,798 ▼14.6 28,858 ▼7.4
2025暦年(1~5月) 30,311 ▼12.8 26,282 ▼7.2 7,785 ▼8.2 74,731 ▼8.6

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
「福岡天神複合ビル」は竹中工務店で12月着工
S・SRC・RC造、地下3階・地上21階建て、延床約7万平米

野村不動産らは、福岡市中央区の天神明治通りの天神2丁目北ブロックにある大型オフィスビル「福岡天神センタービル」(天神2-198-1ほか)の建て替えに向け、竹中工務店により2023年9月から解体工事と合わせ、隣接する「野村不動産天神ビルI」、「同「ビルⅡ」と「伊藤ビル」も解体し、今年11月末に完了する。
福岡天神センタービル(1976年竣工、地下3階・地上18階建て、延べ床面積約4万4,150平方メートル)と前述のビル3棟の建て替え計画で「福岡天神複合ビル」(敷地面積約4,863平方メートル)の建築規模は、S造・SRC造・RC造、地下3階・地上21階建て、延べ床面積約6万9,000平方メートル。設計・施工は竹中工務店が担当し、12月着工、28年度完成予定。
福岡天神複合ビルは、地上3階~20階までは賃貸オフィス、地下2階~地上2階は商業施設やラウンジなど、地下3階は駐車場・駐輪場、地上21階は屋上テラスなど。天神地区を代表するビルとして、「Fukuoka Art Next」の取り組みを実施し、福岡市美術館や福岡アジア美術館の取組みをさらに発展させ、彩りにあふれた街を目指す。さらに災害時の帰宅困難者の受入も可能なビルとする。
福岡市によるビル建て替え誘導プロジェクト「天神ビッグバン」の容積率緩和措置(天神ビッグバンボーナス)の適用を目指している。天神2丁目北ブロックは、南北を明治通りと昭和通り、東西を渡辺通りと都市計画道路舞鶴薬院線に挟まれた12、13、14番街区の計約2.9ヘクタール画対象区域。
福岡天神複合ビルなどがある14番街区の最大容積率は700%。福岡市の地区計画によると、容積率の最高限度は900%に変更し、まちづくりの取り組みに応じて最大1,300%まで緩和するとしている。


【時論・公論】
統計データで比較する鉄骨状況

鉄骨需要が2年連続400万トン割れ。6月25日付『日刊鉄鋼新聞』1面トップに「鉄骨製作単価 24年度、微増のトン27万2,800円」の大見出しと、「上昇一服感も高水準続く」の見出し記事をベースに鉄骨状況を考察する。
記事の前文は、<高騰を続けてきた建築鉄骨の製作単価に一服感が出ているようだ。生産重量・金額を基に算出した2024年度の鉄骨製作単価(図面費・輸送費など諸経費除く)のトン当たり平均は、前年度比0.4%増の27万2,800円と5年連続でプラスになったが、上昇率は5.7ポイント減と鈍化した(一部抜粋)>と記述している。
そこで、10年前の2015年度と、24年度の鉄骨単価を比較してみると、15年度の鉄骨需要は496万6,850トンであったが、24年度は365万6,250トン(15年度比26.4%減)と大幅減少。過去の鉄骨需要では1990年代は1,000万トン前後、以来800~700万トン台と減少し、08年度の急激な減少となり600~500万トン台となり、09年度で初の400万トン割れとなる。建築費の高騰からさらに下降線は止まらず360万トン台に突入した。 
国土交通省(国交省)建築着工統計の総延床面積によると、15年度は1億2,942万平方メートルが、24年度は1億0,448万平方メートル(同19.3%減)である。また、同統計による15年度の鉄骨需要は497万5,850トンで、鉄骨単価20万2,000円台となっている。24年度は365万6,250トン(同26.4%減)と3割弱の減少になるものの、鉄骨単価は27万2,800円(同35.0%増)と大幅増となっているが、鋼材価格高の影響でもある。
 一方、日本建築業連合会による15年度の国内建設受注総計は、14兆4,481億円であったが、24年度は18兆6,333億円(15年度比29.0%増)と、ここでも約3割増となっている。建築着工面積で約2割減少するも、建設受注額では3割増加している。建築費が大幅に増加することにより、施主にとっても厳しい状況が続いている。
鉄骨需要も大幅に減少し、かつ鉄骨単価が5割以上高くなっている。その要因には国際情勢の変革や円安傾向などにある。更に、鋼材価格高や残業時間の制限による人件費や電力費・消耗品などの価格も影響している。
鉄骨鋼材価格ではサイズにより異なるが、15年度の大径角形鋼管が約10万台円、H形鋼や厚板が約8万円台であったが、24年度は大径角形鋼管が約13万円台(12年度比3割高)、H形鋼が12万円台(同5割高)、厚板は14万円台(同7割高)と高値になっている。鋼材・副資材・輸送費など影響で鉄骨単価は当然高値となる。従って、鉄骨業界は施主・施工会社に対しては、<鉄骨建築の特性を評価され、鉄骨造の選択>への配慮が必要だ。

【加藤 敏雄】