スノウチニュース<№254> 2025年12月


【建築関連統計】
10月の鉄骨需要量は29万5,500トン(前年同月比5.5%減)
25年度(4月~10月)鉄骨需要量208万3,500トン(前年同期比6.9%減)

国土交通省が11月28日に発表した「建築物着工統計調査」による2025年10月着工総面積は8,775千平方メートル(前年同月比3.5%減)となり、前年同月比では7ヵ月連続減少となった。
建築主別は、▽公共建築物が403千平方メートル(同5.7%減)となり、同1ヵ月で減少。▽民間建築物は8,372千平方メートル(同3.4%減)となり、同7ヵ月連続減少となった。
用途別は、▽居住建築物は5,681千平方メートル(同0.9%減)となり、同7ヵ月連続減少。▽非居住建築物は3,093千平方メートル(同8.0%減)となり、同5ヵ月連続減少となった。
構造別では、▽鉄骨造(S造)が2,937千平方メートル(同0.7%減)となり、同5ヵ月連続減少。▽鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が36千平方メートル(同89.3%減)となり、同1ヵ月で減少。▽鉄筋コンクリート造(RC造)が1,868千平方メートル(同8.6%増)となり、同7ヵ月ぶりに増加。▽木造(W造)が3,846千平方メートル(同3.5%減)となり、同7ヵ月連続減少となった。
鉄骨系の需要換算では、▽S造は29万3,700トン(前年同月比0.6%減)となり、同5ヵ月連続減少。▽SRC造は1,800トン(同89.4%減)となり、同1ヵ月で減少。鉄骨系合計では前月比9.0%減の29万5,500トン(同5.5%減)となった。
25暦年(1月~10月)の鉄骨需要量は、▽S造が287万7,100トン(前年同期比7.8%減)、▽SRC造が5万0,100トン(同17.3%減)となり、鉄骨系合計では292万7,200トン(同8.0%減)となった。
25年度(4月~10月)の鉄骨需要量は、▽S造が205万6,100トン(前年同期比6.1%減)、▽SRC造が2万7,400トン(同45.8%減)となり、鉄骨系合計では208万3,500トン(同6.9%減)となった。

24年10月-25年10月 鉄骨系需要量の推移

年/年度 S造 前年比 SRC造 前年比 鉄骨造計 前年比
2024年 10 295,600 -26.4% 17,050 111.7% 312,650 -23.7%
11 283,200 2.1% 10,050 154.2% 293,250 4.2%
12 276,500 -13.8% 3,350 -18.3% 279,850 -13.8%
2025年 1 249,600 -21.4% 8,100 153.2% 257,700 -19.6%
2 266,800 -10.2% 8,350 204.3% 275,150 -8.3%
3 304,700 -4.0% 6,300 55.8% 311,000 -3.2%
2025年度 4 375,100 -1.3% 3,650 -52.6% 378,750 -2.3%
5 288,500 4.6% 2,650 -60.7% 291,150 3.0%
6 266,700 -15.0% 3,150 -35.7% 269,850 -15.3%
7 253,900 -21.1% 3,950 61.2% 257,850 -20.4%
8 263,700 -3.5% 1,650 -83.8% 265,350 -6.4%
9 314,400 -4.1% 10,500 600.0% 324,900 -1.4%
10 293,700 -0.6% 1,800 -89.4% 295,500 -5.5%
2025年度(4月-10月) 2,056,100 -6.1% 27,400 -45.8% 2,083,500 -6.9%
2025暦年(1月-10月) 2,877,100 -7.8% 50,100 -17.3% 2,927,200 -8.0%

 

(国土交通省調べ)

 


日建連の10月総受注額約1兆4,865億円(前年同月比6.5%減)
民間工事は9,936億7,700万円(同17.7%減)

日本建設業連合会(日建連)が11月27日に発表した会員企業92社の2025年10月分の受注工事総額は1兆4,865億9,000万円(前年同月比6.5%減)となり、前年同月比では3ヵ月ぶりに減少となった。そのうち、▽国内工事が1兆4,313億8,600万円(同5.0%減)となり、同3ヵ月ぶりに減少、▽海外工事が552億0,400万円(同34.0%減)となり、同月比では減少となった。
▽民間工事が9,936億7,700万円(同17.7%減)となり、同3ヵ月ぶりに減少、▽官公庁工事が4,374億7,500万円(同49.3%増)となり、同4ヵ月ぶりに増加となった。
民間工事の9,936億7,700万円のうち、▽製造業が2,198億0,300万円(同11.1%減)となり、同3ヵ月ぶりに減少、▽非製造業が7,738億7,400万円(同19.4%減)となり、同3ヵ月ぶりで減少となった。官公庁工事の4,374億7,500万円のうち、▽国の機関が2,097億2,600万円(同9.2%増)となり、同4ヵ月ぶりに増加、▽地方の機関が2,277億4,900万円(同125.6%増)となり、同2ヵ月連続で増加、▽その他が2億3,400万円(同96.0%減)となり、同3ヵ月連続で減少となった。
2025暦年(1月~10月)の受注総工事額が17兆7,558億5,300万円(前年同期比12.0%増)となった。▽民間工事が13兆1,976億1,400万円(同20.2%増)、▽官公庁工事が3兆9,288億5,700万円(同7.1%減)、▽海外工事が6,077億6,700万円(同2.6%増)となった。
2025年度(4月~10月)の受注総工事額が11兆2,700億2,900万円(前年同期比15.6%増)となった。▽民間工事が8兆7,174億0,700万円(同22.8%増)、▽官公庁工事が2兆1,158億1,200万円(同5.1%減)、▽海外工事が4,233億6,200万円(同15.1%増)となった。



地域ブロック別受注実績

日建連・地域ブロック別による10月の受注工事額では、▽北海道が567億1,500万円(前年同月比33.8%減)となり、前年同月比では3ヵ月ぶりに減少、▽東北が752億4,800万円(同111.2%増)となり、同2ヵ月連続で増加、▽関東が7,286億9,700万円(同10.6%減)となり、同2ヵ月連続で減少、▽北陸が461億7,400万円(同14.2%減)となり、同2ヵ月連続で減少となった。
▽中部が658億0,200万円(同46.0%減)となり、同1ヵ月で減少、▽近畿が1,888億6,500万円(同15.9%減)となり、同3ヵ月ぶりに減少、▽中国が997億0,200万円(同53.4%増)となり、同4ヵ月連続で増加、▽四国が287億5,900万円(同129.3%増)となり、同1ヵ月で増加、▽九州が1,413億5,800万円(同53.7%増)となり、同3ヵ月連続で増加となった。



10月の粗鋼生産量は685.3万トン(前年同月比1.0%減)
9月の普通鋼建築用受注量43.0万トン(前年同月比16.1%増)

日本鉄鋼連盟が11月21日発表した2025年10月の銑鉄生産は485.1万トン(前年同月比4.4%減)となり、前年同月比で7ヵ月連続減少。粗鋼生産は685.3万トン(同1.0%減)となり、同7ヵ月連続減少となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が506.2万トン(同0.8%減)となり、同7ヵ月連続減少。▽電炉鋼が179.2万トン(同1.8%減)となり、同15ヵ月連続減少となった。鋼種別生産では、 ▽普通鋼が537.3万トン(同0.8%増)となり、同7ヵ月ぶりの増加。▽特殊鋼が148.1万トン(同7.3%減)となり、同2ヵ月連続の減少となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は594.2万トン(前年同月比2.7%減)となり、同10ヵ月連続減少。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は471.7万トン(同1.9%減)となり、同10ヵ月連続減少。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は122.6万トン(同5.4%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。
なお、9月の普通鋼鋼材用途別受注量は、▽建築用が42万9,406トン(前年同月比16.1%増)。うち▽非住宅が28万2,253トン(同7.8%増)、▽住宅が14万7,153トン(同36.3%増)となった。
用途別受注量の25暦年(1月~9月)では、▽建築用が354万0,831トン(前年同期比2.7%減)。うち▽非住宅が244万4,587トン(同3.3%減)、▽住宅が109万6,244トン(同1.4%減)となった。
25年度(4月~9月)では、▽建築用が235万7,259トン(前年同期比0.8%減)。うち▽非住宅が163万3,792トン(同1.6%減)▽住宅が72万3,467トン(同0.9%増)となった。


9月の溶接材料出荷量1万6,968トン(前年同月比6.8%増)
25年度(4~9月)の総出荷量9万1,995トン(前年同期比0.4%増)

日本溶接材料工業会が発表した2025年9月の溶接材料出荷量が1万6,968トン(前年同月比6.8%増)となり、前年同月比では4ヵ月連続で増加となった。
出荷量の主な品種は、▽ソリッドワイヤ(SW)が6,944トン(同0.5%減)となり、同1ヵ月で減少。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,942トン(同13.7%増)となり、同2ヵ月連続で増加。▽被覆溶接棒が1,375トン(同20.8%減)となり、同4ヵ月ぶりに減少。その他を含む出荷量計では1万6,968トンとなった。
25暦年(1月~9月)の出荷量は、▽SWが5万6,013トン(前年同期比9.0%減)、▽FCWが4万8,189トン(同1.9%減)、▽溶接棒が1万3,495トン(同3.5%減)、その他を含む出荷量計での総出荷量は13万7,868トン(同3.1%減)となった。
25年度(4月~9月)の出荷量は、▽SWが3万7,379トン(前年同期比6.2%減)、▽FCWが3万2,183トン(同1.7%増)、▽溶接棒が8,508トン(同3.0%減)、その他を含む出荷量計での総出荷量は9万1,995トン(同0.4%増)となった。


溶接材料9月の貿易統計

財務省の貿易統計による溶接材料9月の▽輸出量は3,087トン(同30.9%増)となり、同5ヵ月連続で増加。▽輸入量は4,907トン(同0.1%減)となり、同2ヵ月連続で減少となった。
25暦年(1~9月)の輸出量は2万4,894トン(前年同期比19.1%増)、輸入量は4万1,785トン(同1.9%減)となった。25年度(4月~9月)の▽輸出量は1万6,434トン(同24.9%増)▽輸入量は2万8,001トン(同1.2%減)となった。

24年9月-25年9月 溶接材料月別実績表

単位/トン
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比
フラックス入りワイヤ 前年比
被 覆
溶接棒
前年比
合 計 前年比
2024年 9 6,982 -8.2% 5,225 -11.5% 1,737 -16.7% 15,888 -10.8%
10 5,818 -21.8% 5,349 -5.1% 1,396 -19.0% 14,827 -13.2%
11 6,082 -18.0% 5,309 -8.2% 1,910 9.9% 15,477 -9.3%
12 5,567 -24.7% 5,396 -5.4% 1,580 -7.7% 15,527 -7.1%
2025年 1 5,902 -11.2% 5,259 -1.7% 1,242 -26.9% 14,605 -8.9%
2 6,191 -14.3% 5,268 -9.4% 1,947 9.4% 15,193 -9.3%
3 6,541 -16.7% 5,479 -13.0% 1,798 4.0% 16,075 -10.1%
2025年度 4 5,929 -7.5% 5,268 -3.6% 1,440 -4.2% 14,757 -4.1%
5 5,748 -13.0% 5,008 -7.2% 1,358 -23.4% 14,101 -10.6%
6 6,421 -5.5% 5,387 4.4% 1,415 9.7% 15,742 2.5%
7 6,641 -5.4% 5,560 -0.2% 1,476 16.2% 16,122 0.7%
8 5,696 8.0% 5,018 3.9% 1,444 20.3% 14,305 8.7%
9 6,944 -0.5% 5,942 13.7% 1,375 -20.8% 16,968 6.8%
2025年度(4~9月) 37,379 -6.2% 32,183 1.7% 8,508 -3.0% 91,995 0.4%
2025暦年(1~9月) 56,013 -9.0% 48,189 -1.9% 13,495 -3.5% 137,868 -3.1%

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
「浜松町二丁目4地区A街区」の再開発プロジェクト

東京都港区、浜松町駅西口に位置する「浜松町二丁目4地区A街区」の再開発プロジェクトは、駅周辺のにぎわいや国際拠点としての役割を一新する大規模な都市再生計画です。
このプロジェクトは、敷地約2.1万㎡、延べ床面積約31.4万㎡(A街区)という規模で、S造・RC造・SRC造、高さ約200M、地上46階・地下3階建ての超高層棟を中心に、徒歩・乗換え利便性・防災・環境を強化するもので、鹿島建設施行で2021年8月に着工されています。
駅・バスターミナル・モノレールとの結節機能を高め、歩行者ネットワークや景観緑化、訪日外国人対応施設、MICE(企業会議・展示会)機能も整備。例えば、低層部の緑化見直しで、隣接するとの緑の連続性も意識されています。
現在建設中の新・世界貿易センタービルディング本館(WTCビル新本館)は、1970年に完成した初代・世界貿易センタービル(旧WTCビル)後継プロジェクトです。
旧WTCビルは、浜松町駅前のランドマークとして約50年間にわたり日本貿易センター株式会社(現:世界貿易センタービルディング株式会社)が運営してきました。
旧WTCビルは、1970年竣工以降、高さ約152M、商業・オフィス機能を中心としたランドマークとして長年浜松町の象徴でした。
技術的にも先進的で、当時としては珍しいSRC造を採用し、耐震性と経済性を両立させていました。
旧WTCビルは、単なるオフィスビルではなく、日本の都市・経済・建築技術の近代化を象徴する存在だったのです。
その精神を引き継ぐ形で、現在の再開発プロジェクトが進められています。
新本館は、旧WTCビルが果たしてきた「国際ビジネス拠点」としての役割を引き継ぎながら、次世代の都市機能を備えた進化版のWTCビルとして位置づけられています。
また、建物名称も旧来と同じ「世界貿易センタービルディング」を継承し、ブランドと歴史の連続性を保つ計画です。
繰り返しになりますが、新本館は単なる建て替えではなく、旧WTCの理念と機能を未来へ継承する再生プロジェクトといえます。
浜松町二丁目4地区A街区プロジェクトは、旧WTCビル跡地を舞台に、交通結節性・国際交流拠点・複合機能性・防災・環境対応といった都市条件を組み込んだハイブリッドな再開発計画です。完成すれば、浜松町駅前に新たなランドマーク性と多様な都市機能性をもつ拠点が形成されることが期待されます。
完成予定は2029年度で、都心にふさわしい「国際性・回遊性・安全性」を兼ね備えた街づくりが目指されています。駅前エリアが持つ潜在力を活かしつつ、老朽化した施設や土地利用の再配置を通じて、将来的にはより魅力ある都市空間へと変貌を遂げることでしょう。


【時論・公論】
40年周期の最終年の2025年と2026年を迎えるに当たって

2025年も余すところあと僅かになりました。2025年は昭和100年に当たります。また、40年周期の最終年という区切りの年にも当たります。
日本の近現代史は、「おおむね40年周期で上昇機運と下降機運が繰り返している」という見方があり、歴史家や評論家の間で時々語られます。
科学的根拠はなく偶然ですが、歴史を振り返った時に一定のリズムが見えるということのようです。
幕末から遡ってみたいと思います。

1. 1865年~1905年  幕末から列強へ
1865年は徳川幕府の終焉が迫る中、日本は欧米列強に囲まれ、国家存亡の危機にありました。1868年に明治維新が始まり、新政府は旧体制を否定し、「富国強兵・殖産興業・文明開化」のスローガンのもと、国家の近代化を急ぎました。日本は急速に軍事・産業を整備しました。徴兵制度により国民皆兵体制を築き、官営工場が各地に作られ、やがて財閥が台頭していきます。1895年に日清戦争に勝利し、日本は近代的な国家体制を整え、アジアにおける影響力を拡大する第一歩となりました。
1904年に日露戦争が始まり、1905年にポーツマス条約で講和。アジアで初めて西洋列強に勝利した国として、世界中に衝撃を与えました。
僅か40年で、日本は江戸時代の封建国家から、近代国家・帝国主義列強の一員へと変貌を遂げました。

2. 1905年~1945年  軍国主義の暴走と敗戦
1905年、日露戦争に勝利した日本は1910年には韓国を併合し、帝国としての領土拡大が本格化しました。一方で、国際社会での地位向上を目指す外交も進み、第一次世界大戦(1914年)では連合国側として参戦し、中国・山東半島の権益を獲得。戦後のヴェルサイユ条約では戦勝国として国際連盟の常任理事国入りも果たしました。第一次世界大戦中から1919年頃までは、明確な好景気でしたが、1920年にバブルが崩壊し、1929年の世界恐慌は日本経済にも大打撃を与え、1931年の満州事変、そして1932年の満州国建国によって、日本は国際社会から孤立。国際連盟を脱退し、「一国主義」へと傾いていきました。
1937年、日中戦争が全面化。泥沼化する戦局の中で、1941年にアメリカ・イギリスに宣戦布告。真珠湾攻撃から始まった太平洋戦争は、日本の国力を超えた戦いでした。
やがて都市は空襲にさらされ、沖縄戦、原爆投下と、破滅へのカウントダウンは加速し、1945年8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し、無条件降伏しました。40年前に世界を驚かせた日本は、焦土と化して敗戦を迎えました。

3. 1945〜1985 復興と繁栄
1945年の敗戦により、日本は国家としてゼロからの再出発を余儀なくされました。しかし、制度改革・経済再建・国民の努力により、日本はわずか40年で自動車や半導体等の輸出による貿易黒字は世界最大となり、技術・輸出・為替競争力の面で、アメリカを脅かすほどの経済大国に成長しました。「世界第2位の経済大国」として国際社会に復活しました。
1985年のプラザ合意はその頂点であり、同時にその後の構造的停滞を招く転換点になりました。プラザ合意は、国際社会(特にアメリカ)による、経済的に成功しすぎた日本に対する圧力であり、「平和的包囲網」とも言える形での修正要求でした。
敗戦からの40年は、日本にとって「軍事的帝国から経済国家への劇的転換」を示す時代でした。しかし、バブル経済・不動産投機・国際摩擦など、「成功の代償」も現れ始めていたと考えらえます。その後の下降期(バブル崩壊・失われた30年)への扉を開いた転換点でもあります。

4. 1985年~2025年成熟と停滞
1985年から2025年にかけての40年間は、日本が戦後の高度経済成長を経て社会的にも成熟した時代でした。しかし、その成熟は成長モデルの限界を露呈し、バブル崩壊後の長期停滞や少子高齢化といった深刻な課題を浮き彫りにしました。この期間は、過去の拡張期と対比すると、「完成」と「閉塞」の狭間に位置する歴史的なターニングポイントでした。社会の疲弊は、単なる衰退ではなく、次の時代に向けた変革の前兆とも解釈できます。
まさに、成熟と停滞が交錯するこの40年は、日本が新たな社会モデルを模索し、再創造の礎を築くための「準備期間」として位置づけられます。

5. 変動の世紀後半へ 〜2025年から2065年を見つめて〜
2025年下降のボトムにいると思われます。出生数は過去最低、GDPは世界4位へと転落しました。政治も経済も高齢化し、都市と地方の格差は拡大し、若者は夢を描けない時代が続いています。しかし、次の40年、テクノロジーと人間の関係はさらに進化し、AIやロボティクス、バイオテクノロジーが社会に溶け込み、私たちの暮らしを豊かに、そして優しく支える存在になるでしょう。国際社会でも、アジアでは中国・インドの影響力が一層強まり、アメリカ・EUとの新たなバランスが模索される中で、外交・安全保障の柔軟性も問われることになると思います。日本の丁寧さや協調性が再評価され、技術・文化の発信国として新たな存在感を放つことになるでしょう。人口は減っても、幸福度はむしろ高まっていくそんな未来が見えてきます。
2065年、国立社会保障・人口問題研究所によれば、日本の人口は8,800万人程度にまで減少すると予測されています。しかし、それは衰退ではなく、新たな成熟社会のかたちかもしれません。テクノロジーと共生しながら、より少ない資源で豊かに暮らす知恵が試される40年となるのでしょうか。

【SEI】