スノウチニュース<№200> 令和3年6月


【鉄骨需要月別統計】
4月鉄骨需要量は39万3,600トン(前年同月比8.5%増)
20年1~4月は141万4,500トン(前年同月比7.7%減)

国土交通省が5月31日発表した「建築物着工統計調査」の2021年4月着工総面積は10,536千平方メ―トル(前年同月比4.4%増)となり、前年同月対比ではヵ月で連続増となった。10,000千平方メートル超えでは2ヵ月連続となった。
▽建築主別は、▽公共建築物が628千平方メートル(同4.7%増)となり、同4ヵ月連続増となった。▽民間建築物は9,908千平方メートル(同4.4%増)となり、同2ヵ月連続増となった。
▽用途別は、▽居住建築物は6,329千平方メートル(同5.4%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽非居住建築物は4,207千平方メートル(同3.0%増)となり、同2ヵ月連続増となった。
▽構造別は、▽鉄骨建築のS造は3,876千平方メートル(同8.3%増)となり、同4ヵ月連続増となった。▽SRC造は120千平方メートル(同39.7%減)の大幅減となり、同4ヵ月連続減となった。
一方、▽RC造は2,049千平方メートル(同0.1%減)の微減となり、同1ヵ月で減少となった。▽W造は4,428千平方メートル(同6.1%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。
▽鉄骨需要換算では、S造は38万7,600トン(前年同月比8.3%増)の低水準ながら、同4ヵ月連続増となった。SRC造は6,000トン(同39.7%減)となり、同4ヵ月連続減となった。鉄骨造計では前月比3.7%増の39万3,600トン(前年同月比8.5%増)となった。
なお、20年(1~4月)では、S造が139万0,900トン(前年同期比8.4%増)、SRC造が2万3,600トン(同23.0%減)となり、鉄骨造合計では141万4,500トン(同7.7%増)となった。

20年4月-21年4月 鉄骨需要量の推移

(国土交通省調べ)

年/月 S造(TON) 前年比(%) SRC造(TON) 前年比(%) 鉄骨造計(TON) 前年比(%)
352,800 -10.0 9,950 0.0 362,750 -10.0
352,000 -6.4 13,800 88.2 365,800 -4.6
6 364,800 -14.8 4,250 12.9 369,050 -14.6
7 354,300 -25.5 2,100 -67.8 356,400 -26.1
8 291,400 -30.8 2,700 7.8 294,100 -30.6
336,800 -3.3 12,550 64.8 349,350 -1.8
10 328,400 -10.7 5,350 -2.9 333,750 -1.8
11 300,000 -14.5 14,300 208.6 314,300 -11.6
12 338,000 -16.1 11,300 109.7 349,300 -14.4
2021/1 318,300 19.6 4,800 -10.0 323,100 19.0
2 308,300 2.8 9,900 -4.9 318,200 2.5
3 376,700 3.6 2,900 -41.4 379,600 2.9
4 387,600 8.3 6,000 -39.7 393,600 8.5
暦年計(20/1~4) 1,390,900 8.4 23,600 -23 1,414,500 7.7
年度計(20/4) 387,600 8.3 6,000 -39.7 393,600 8.5

 

【建築関連統計】
21年度の建設投資見通しを上方修正
20年度は下方修正 =建設経済研、経済調査会=

建設経済研究所・経済調査会が最新の建設投資見通しを4月28日発表した。2020年、21年度の投資総額(名目値)は、1月の前回調査と比べ20年度分で2,000億円減の63兆1,500億円(前年度比3.4%減)、21年度分を3,000億円増の62兆1,000億円(同1.7%減)に修正した。新型コロナウイルスの長引く影響で減少が続き、民間建設投資に不透明感があるものの、21年度に下げ止まる傾向が出ていると予測している。
政府建設投資は、20年度が前回から2,300億円減の25兆6,500億円(同3.2%増)。総務省がまとめた21年版「地方財政の状況」を踏まえ地方単独事業費を下方修正し、地方を中心に建築補修投資が減少傾向にあることも影響した。21年度は前回から3,600億円減の24兆9,900億円(同2.6%減)と推計し、今後しばらくはこの水準で投資規模が維持されると予測している。
民間住宅投資額は、20年度が前回と同じ15兆1,200億円(同7.5%減)、21年度は前回から6,000億円増の15兆0,600億円(同0.4%減)。新型コロナの影響という不確定要素はあるものの、緩やかな回復を予測した。相続税制の改正で不動産投資が停滞しており実需の回復が鍵を握るとみている。
民間非住宅建設投資は、20年度が前回から300億円増の16兆8,300億円(同3.9%減)、21年度が600億円増の16兆4,600億円(同2.2%減)。堅調に推移する倉庫・流通施設をはじめ、建築関係は全体として回復傾向にあると予測する。ただし、発電用施設や鉄道関係施設で見合わせ感が出ており注視が必要とした。


日建連4月総受注額約7,429.9億円(前年同月比12.5%増)
民間工事は4,877億9,600万円(前年同月比14.3%増)

日本建設業連合会(日建連)が5月27日に発表した会員企業95社の2021年4月受注工事総額は7,429億8,900万円(前年同月比12.5%増)となり、前年同月比で4ヵ月連続増となった。うち民間工事は4,877億9,600万円(同14.3%増)となり、同4ヵ月連続増となった。官公庁工事は2,357億1,500万円(同9.7%増)となり、同8ヵ月連続増となった。
国内工事は7,250億9,600万円(同10.5%増)となり、同7ヵ月連続増となった。民間工事の4,877億9,600万円のうち、▽製造業が923億3,700万円(同19.0%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽非製造業は3,954億5,900万円(同13.3%増)となり、同4ヵ月連続増となった。
官公庁工事の2,357億1,500万円のうち、▽国の機関が1,613億0,500万円(同7.9%増)となり、同11ヵ月連続増となった。▽地方の機関は744億1,000万円(同14.0%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽その他が15億8,500万円(同89.1%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。▽海外工事は178億9,300万円(同328.9%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。
一方、4月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道が331億3,800万円(前年同月比40.9%減)となり、前年同期比では2ヵ月連続減となった。▽東北が812億1,100万円(同108.0%増)の大幅増となり、同4ヵ月連続増となった。▽関東が2,869億5,400万円(同4.9%増)となり、同4ヵ月連続増となった。▽北陸が169億6,500万円(同20.2%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。
▽中部が834億7,300万円(同31.8%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽近畿が1,434億4,700万円(同31.4%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽中国が339億6,000万円(同13.8%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽四国が65億5,000万円(同49.2%減)の大幅減となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。▽九州が394億0,600万円(同19.0%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。


4月粗鋼生産781.7万トン(前年同月比18.9%増)
3月普通鋼建築用50.9万トン(前年同月比1.4%増)
20年度普通鋼建築用599万トン(前年度比4.8%増)

日本鉄鋼連盟は5月21日に発表した2021年4月の銑鉄生産は567.7万トン(前年同月比15.8%増)となり、前年同月比では2ヵ月連続増。粗鋼生産は781.7万トン(同月比18.9%増)となり、同2ヵ月連続増となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が578.1万トン(同20.4%増)の同2ヵ月連続増。▽電炉鋼が203.6万トン(同月比14.8%増)となり、同2ヵ月連続増となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が598.1万トン(同15.0%増)の同2ヵ月連続増。▽特殊鋼が183.6万トン(同33.6%増)となり、同2ヵ月連続増となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は686.6万トン(同月比16.9%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は531.6万トン(同月比12.2%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は155.0万トン(同36.5%増)となり、同4ヵ月連続の増加となった。
一方、3月の普通鋼鋼材用途別受注量では、建築用は50万8,877トン(同1.4%増)となった。うち▽非住宅用が38万2,838トン(同5.2%増)となり、▽住宅用が12万6,039トン(同8.7%減)となった。
なお、20年度(4~3月)の建築用は599万0,693トン(同4.8%増)となった。うち▽非住宅が418万0,907トン(同4.6%増)となり、▽住宅が180万9,786トン(同5.1%増)となった。


溶接材料の3月出荷量1万7,271トン(前年同月比8.0%減)
20年度の出荷量20万0,149トン(前年度比16.7%減)

日本溶接材料工業会が発表した2021年3月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)では、生産量は1万7,809トン(前年同月比9.2%減)の前年同期比15ヵ月連続減。出荷量は1万7,271トン(同8.0%減)の同15ヵ月連続減。在庫量は1万7,016トン(同18.4%減)となり、同5ヵ月連続減となった。
生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が7,372トン(同3.6%減)の同15ヵ月連続減。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,788トン(同20.2%減)の同15ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒が2,157トン(同7.0%減)の同1ヵ月で減少となった。その他を含む生産量計では1万7,809トン(同9.2%減)となった。
出荷量の主な品種は▽SWが7,266トン(同1.5%減)となり、同15ヵ月連続減。▽FCWが5,404トン(同21.8%減)の同15ヵ月連続減。▽溶接棒が1,907トン(同10.4%減)の同15ヵ月連続減となった。その他を含む出荷量計では1万7,271トン(同8.0%減)となった。
在庫量の主な品種は▽SWが5,789トン(同21.7%減)の同3ヵ月連続減。▽FCWが6,522トン(同10.6%減)の同4ヵ月連続減。▽溶接棒が2,588トン(同19.8%減)の同7ヵ月連続減となった。その他を含む在庫量計では1万7,016トン(同18.4%減)となった。
20年度の生産量は19万6,307トン(前年同期比21.2%減)となり、出荷量は20万0,149トン(同18.7%減)となった。
生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が6万9,423トン(前年度比31.2%減)▽フラックス入りワイヤ(FCW)が6万9,929トン(同20.0%減)▽被覆アーク溶接棒が2万2,785トン(同16.5%減)となった。その他を含む生産量計では19万6,307トン。
出荷量の主な品種は▽SWが7万6,474トン(同22.0%減)▽FCWが7万0,704トン(同19.1%減)▽溶接棒が2万3,422トン(同13.8%減)となった。その他を含む出荷量計では20万0,149トン。

20年3月-21年3月 溶接材料月別実績表

生産量
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比 フラックス入りワイヤ 前年比 被 覆  溶接棒 前年比 合 計 前年比
2020年 3 7,645 ▼18.6 7,251 ▼2.4 2,320 ▼1.1 19,613 ▼11.5
2020年度 4 7,398 ▼16.6 6,773 ▼7.7 2,146 ▼11.8 18,724 ▼11.8
5 5,519 ▼29.1 5,340 ▼28.0 1,726 ▼28.7 14,746 ▼28.7
6 5,008 ▼44.6 6,744 ▼3.8 2,121 ▼14.6 16,417 ▼21.8
7 5,091 ▼48.7 6,212 ▼26.0 2,227 ▼3.8 16,173 ▼31.5
8 5,064 ▼31.4 4,921 ▼17.6 1,615 ▼24.6 13,828 ▼24.6
9 57,17 ▼36.6 6180 ▼22.4 1775 ▼26.7 15,740 ▼29.6
10 6,997 ▼22.9 5,829 ▼27.9 1,728 ▼25.6 17,120 ▼23.5
11 7,528 ▼16.6 5,855 ▼20.3 1,845 ▼9.2 17,429 ▼17.8
12 6,637 ▼24.1 5,297 ▼27.1 1,660 ▼30.0 16,014 ▼25.3
2021年 1 6,028 ▼18.5 5,346 ▼20.2 1,803 ▼13.5 15,419 ▼17.9
2 6,781 ▼8.1 5,644 ▼16.9 1,982 2.2 16,888 ▼8.0
3 7,372 ▼3.6 5,788 ▼20.2 2,157 ▼7.0 17,809 ▼9.2
2020年度(4-3月) 69,423 ▼31.2 69,929 ▼20.0 22,785 ▼16.5 196,307 ▼21.2

単位/トン

出荷量
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比 フラックス入りワイヤ 前年比 被 覆 溶接棒 前年比 合 計 前年比
3 7,379 ▼17.3 6,910 ▼7.1 2,128 ▼12.7 18,771 ▼13.6
2020年度 4 6,627 ▼21.7 6,470 ▼24.8 1,885 ▼24.8 17,491 ▼18.3
5 5,569 ▼33.1 6,037 ▼17.5 2,024 ▼13.0 15,949 ▼23.5
6 5,581 ▼35.3 6,525 ▼12.3 2,162 ▼10.8 16,863 ▼20.2
7 4,948 ▼48.2 5,948 ▼26.9 2,044 ▼11.1 15,937 ▼31.0
8 5,306 ▼31.7 5,363 ▼17.6 1,914 ▼11.6 15,027 ▼22.7
9 6,374 ▼28.3 6,089 ▼19.5 2,028 ▼14.3 16,579 ▼23.2
10 6,710 ▼21.2 5,757 ▼26.1 1,900 ▼11.0 16,897 ▼23.2
11 7,171 ▼10.5 5,929 ▼18.9 1,814 ▼11.7 17,209 ▼15.0
12 7,143 ▼16.9 5,615 ▼25.1 1,918 ▼23.9 17,022 ▼21.3
2021年 1 6,932 ▼1.0 5,878 ▼15.3 1,838 ▼17.4 17,053 ▼9.1
2 6,847 ▼1.1 5,689 ▼12.7 1,988 ▼2.2 16,851 ▼5.4
3 7,266 ▼1.5 5,404 ▼21.8 1,907 ▼10.4 17,271 ▼8.0
2020年度(4-3月) 76,474 ▼22.0 70,704 ▼19.1 23,422 ▼13.8 200,149 ▼18.7

単位/トン

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
長崎スタジアムシティPJは竹中・戸田・松尾のDB
S造系16階・13階・4階の3棟、総延床20万平米

家電製品など通販でお馴染みのジャパネットが地元長崎市民に還元するためにサッカースタジアム・アリーナのスポーツ施設とオフィス・ホテル・商業施設を備えた「長崎スタジアムシティプロジェクト」を建設する。建設地は、長崎市幸町地内(三菱重工業長崎造船所幸町工場跡地)で、敷地面積約 6万8,747平方メートル。
建設物はサッカースタジアム・アリーナ、商業施設・ホテル・オフィス、教育施設、エネルギーセンター・駐車場などで総延べ床面積約20万平方メートルとなっている。事業主はジャパネットホールディングス、企画運営はリージョナルクリエーション長崎。
建設規模は▽スタジアム棟、ホテル棟、商業棟(Ⅰ工区)S造・SRC造・PC造、地上16階・塔屋1層建て、延べ床面積約11万1,559平方メートルを竹中工務店(設計・施工)が担当。
▽アリーナー・サブアリーナー棟、エネルギーセンター棟(Ⅱ工区)SRC造・RC造・一部S造、地上4階・塔屋1層建て、同3万0,803平方メートルと▽オフィス棟(Ⅲ工区)S造、地上13階・塔屋1層建て、同3万5,127平方メートルを戸田建設(同)が担当。
▽立体駐車場棟(4工区)S造、地上6階・塔屋1層建て、同2万2,283平方メートルを松尾建設(同)が担当。6棟の総延べ床面積約19万9,772平方メートル。22年1月着工し、24年内完成を目標としている。
基本設計は環境デザイン研究所・安井建築設計事務所が担当。PM(プロジェクトマネジメント)はジョーンズラングラサール・ JLLモールマネジメント、CM(コンストラクションマネジメント)を三菱地所設計が担当した。
長崎スタジアムシティの具体的なコンテンツは、開放的なスタジアムのため商業施設とスタジアムなど施設間を回遊できる構造で、ピッチから客席までの距離が近いサッカースタジアム(20,000席)や、こだわりの音響・映像設備を備えるアリーナ(5,000席)など細部までこだわり日本一の施設づくりをめざす。
スタジアムを核とした新しい街にオフィス(延べ床面積約2万平方メートル)・商業施設(同2万平方メートル)・ホテル(約270室)などの周辺施設を民間主導で開発する。感動とビジネスが両立した民間主導の地域創生モデルを確立することで、長崎だけでなく、日本中にワクワクを届けることを目指すとしている。


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阪大・I教授との邂逅

業界紙記者や専門誌編集に従事していると学術・専門分野の取材や執筆、座談会依頼などもあって、国公立・私立大学の先生方の協力を得る機会が多くなる。大阪勤務では阪大や京大、神戸大、近畿大、名古屋大、広島大の建築、冶金、溶接系の教授や助教授らのお世話になった。
中でも阪大のI教授とは1981年ごろにお会いしてから阪神淡路大震災の95年まで15年に亘って、格別なるご尽力を賜った。I先生は建築鉄骨系構造学の権威者だけに全構連(全国鉄構工業連合会)工場認定委員長をはじめ、鉄建協(鉄骨建築業協会)や鉄問協(鉄骨問題協議会)委員など鉄骨団体などに多大な尽力をそそいだ先生です。
84年の春、大阪・四ツ橋筋のビル7階の技術者講習会フロアーで、I先生と梅田方面を二人で眺めていると、「大阪も超高層ビルが増えたね。外国のどこかの都市で観たデザインが多いな~」と、独り言のように漏らし、「ねぇ君!これから超高層時代に相応しい構造技術者が必要だね」と同意を求めるように語りかけた。その時のI先生とのやり取りで、誠実で温厚篤実な人柄に近親感を覚えた。
88年に東京勤務となり、鉄構専門誌「T技術」を担当し、東工大や東大、千葉大、千葉工大、東京理科大、横浜国大、信州大、宇都宮大などの先生方には協力して頂いた。それでも阪大のI先生は別格で、座談会の司会やエッセー執筆やシンポジウム講師など無理強いし、「この私で良けりゃ」と快諾して頂けた。I先生の気持ちは分からないものの、私にとっては特別な存在でした。
I先生の経歴は、1927年8月生まれの京都府出身。52年京大建築科卒、55年同大講師・助教授を経て、59年九州大助教授、68年阪大建築工学部門教授、91年阪大名誉教授、同年大阪産業大学教授。98年日本建築総合試験所理事長、00年日本建築学会賞大賞受賞、08年瑞宝中綬章受賞。
「T技術」編集長の6年間、I先生には最も多く座談会の司会役をお願いした。初めての司会は89年7月号座談会「大規模化、複合機能化における構造設計家の課題」で、出席者には宇都宮大のT教授、千葉大のM教授、N設計のA構造部長、T建築事務所のH東京事務所所長、O組のH設計部長、T工務店の設計副部長の錚々たるメンバーとなった。このタイムリーな企画と具体的な内容や建築の将来予測が好評となり、増刷りすることになった。
2回目の司会は、93年11月号の「建築センター評定にみる構造設計の認識と技術者の姿勢」をお願いし、この時は東京理科大のH教授、日大のA教授、建設省建築研究所のY研究部長、建設省住宅局のK建築指導課長補佐、K構造設計事務所のK所長のメンバー。I先生の絶妙な進行と核心指摘もあり、この時も高い評価となった。
さらに3回目の司会は、95年6月号の「阪神大震災から鉄骨造建築は何を学ぶか」もお願いした。出席者は関西大学のY教授、阪大のⅠ助教授、N設計のU技師長、K建材工業のI技術研究所長でおこなわれた。鉄骨建築倒壊の実態からディテールの見直し、新耐震設計の有効性、被害調査の公表や対策などかなり踏み込んだ意見が交わされ、震災後の鉄骨施工、品質基準にも影響を与えるものになっていた。
座談会の司会者は、自身の意見・自説を前面に出さず、出席者の知見・知識などをいかに引き出せるかにある。特に学術者同士となれば進行に気苦労もある。権威ぶらないI先生だけに出席者は意見や見解を思う存分に述べることができる。I先生に学んだ日本エンドタブ協会のM理事長は「九州大で先生に教わった。講義は丁寧で分かりやすく、学生に人気があった」と聴き、さもありなんと思った。
95年の4月号で「阪神大震災に思う」と題した寄稿文をI先生にお願いした。関西では「大きな地震が起きない」と盲信されていた。だが大地震に襲われ、未曽有の被害を出した。芦屋浜の超高層住宅のUB(ユニバーサルボックス)柱の亀裂や神戸高速鉄道高架の鋳鋼管柱破断など被害状況と構造設計基準との整合性に言及し、「今まで踏襲してきた工法と全く違う発想の余地がないだろうか。じっくり考えてみたいと思っている」と自戒を込め、新たな耐震性に思いを馳せている。
その一方、文学者のような素晴らしい文章をお書きになる。90年7月号で寄稿して頂いたエッセー「白夜の町で」では叙情詩のようなタッチで北欧での体験をまとめている。I先生が89年8月末にフィンランド・ラッペンランタ市(人口5万人)で開催された「鋼管構造の国際会議」に出席した時の印象を綴っている。ラッペンランタ市の佇まいと自然の光景、国際会議の臨場感やハプニングの情景を巧みに織りなし、さらにフィンランドの国情や市民社会のあり様を簡素・的確に記述されている。
その一文を抜粋する。<澄み切った秋空でさえ心もとなげですが、驟雨の曇り空は一層私たちの心を暗く閉じ込める~(後略)><夜、時計の針が進んでも、いつまでも白々と暮れなずむ中、無人の街が夢幻のように浮遊し、実在の手ごたえがまるで感じられない>と叙情豊かに描写。締めくくりを<資本の論理と企業の社会に組み込まれ、ゆとりと潤いを失っている喧騒の社会に戻って、白夜の国のつかの間の旅が、今、限りなく懐かしい>と結んでいる。ロマンチストな一面も感じられる。
I先生との最も強い印象は、92年9月名古屋市内ホテルで静岡・愛知・三重・岐阜県鉄構工業協同組合の東海4組合による「中部鉄構工業協同組合連合会」(後に発展解散)設立記念のシンポジウムを愛知組合のK専務理事から頼まれ、本誌編集部が企画・人選。この時もI先生に相談し、基調講演をお願いした。来賓者や行政・設計・ゼネコン・鋼材流通らの招待者450名が参集し盛大に行われた。
シンポジウムは『どうあるべきか鉄骨ファブ業界』をテーマにしており、I先生の基調講演は▽鉄骨業界の特異性では、受注産業・多品種少量生産・重層構造の中で隷属性を指摘し、▽建築の社会変化では、建築の多様化高級化・周辺技術のハイテク化・建築界の棲み分け・労働環境の変化について具体例を示し、▽鉄骨業界と企業の課題では、技術力と技能力の確保・生産性の合理化・企業努力と協調体制・人材育成などの問題点を挙げ、▽鉄骨建築の将来展望では、社会資本の充実と生活基盤の整備・情報社会の設備投資・建築と住宅産業の明るい将来性を予測するなど忌憚のない指摘と大胆な改革の必要性を説いた。どの指摘も今の時代にも通じる内容であった。
このパネルディスカッションは、名工大のO教授、JSCA中部のW支部長、愛知県建築課のG主査、NDIのF副会長、新日鉄のT専門部長、中部支部連合会のS会長がそれぞれ専門の立場で意見を述べ、素晴らしいディスカションを展開した。本誌で全文掲載されたためその反響は大きかった。
最後に、I先生が危惧していたことは「今の学生は電子や情報関係などに関心が向き、建築学科に志望者が少ない。建築意匠の志望は少なからずいるが、建築構造には関心がないのが心配だ」と憂い。その一方「中国や韓国などアジアの留学生は建築構造を志望し、彼らは優秀な学生だ。彼らが帰国して10年、20年後の活躍がたのしみだ」と言っていたことを、今でも鮮明に覚えている。
【中井 勇】