スノウチニュース<№198> 令和3年4月


【鉄骨需要月別統計】
2月鉄骨需要量は31万8,200トン(前年同月比2.5%増)
20年度(4~2月)は374万1,900トン(前年同月比10.9%減)

国土交通省が3月31日発表した「建築物着工統計調査」の2021年2月着工総面積は8,595千平方メ―トル(前年同月比4.8%減)となり、前年同月対比では1ヵ月で減少に戻った。10,000千平方メートル割れは昨年10月から5月連続となった。
▽建築主別は、▽公共建築物が321千平方メートル(同14.3%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽民間建築物は8,274千平方メートル(同5.4%減)となり、同1ヵ月で減少となった。
▽用途別は、▽居住建築物は5,250千平方メートル(同3.2%減)となり、同18ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は3,345千平方メートル(同7.2%減)となり、同1ヵ月で減少となった。
▽構造別は、▽鉄骨建築のS造は3,083千平方メートル(同2.8%増)の微増となり、同2ヵ月連続増となった。▽SRC造は198千平方メートル(同4.9%減)となり、同2ヵ月連続減となった。
一方、▽RC造は1,462千平方メートル(同27.9%減)となり、同5ヵ月連続減となった。▽W造は3,775千平方メートル(同1.1%増)の微増となり、同2ヵ月連続増となった。
▽鉄骨需要換算では、S造は30万8,300トン(前年同月比2.8%増)の低水準ながら、同2ヵ月連続増となった。SRC造は9,900トン(同4.9%減)となった。鉄骨造計では前月対比1.5%減の31万8,200トン(前年同月比2.5%増)となった。
20年度(4~2月)では、S造が365万0,200トン(前年度同期比11.2減)、SRC造が9万1,700トン(同32.9%増)となり、鉄骨造合計では374万1,900トン(同10.9%減)となった。

20年2月-21年2月 鉄骨需要量の推移

年/月 S造(TON) 前年比(%) SRC造(TON) 前年比(%) 鉄骨造計(TON) 前年比(%)
2020/2 300,000 -20.2 10,400 56.6 310,400 -18.9
3 363,800 7.5 4,950 7.7 368,750 7.5
4 352,800 -10.0 9,950 0.0 362,750 -10.0
5 352,000 -6.4 13,800 88.2 365,800 -4.6
6 364,800 -14.8 4,250 12.9 369,050 -14.6
7 354,300 -25.5 2,100 -67.8 356,400 -26.1
8 291,400 -30.8 2,700 7.8 294,100 -30.6
9 336,800 -3.3 12,550 64.8 349,350 -1.8
10 328,400 -10.7 5,350 -2.9 333,750 -1.8
11 300,000 -14.5 14,300 208.6 314,300 -11.6
12 338,000 -16.1 11,300 109.7 349,300 -14.4
2021/1 318,300 19.6 4,800 -10.0 323,100 19.0
2 308,300 2.8 9,900 -11.6 318,200 2.5
暦年計(21/1~2) 626,600 10.7 14,700 -6.7 641,300 10.2
年度計(20/4~21/2) 3,650,200 -11.6 91,700 32.9 3,741,900 -10.9

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
日建連の2月総受注額約1兆2,792億円(前年同月比5.9%増)
民間工事は8,387億8,100万円(前年同月比0.7%増)

日本建設業連合会(日建連)が3月26日に発表した会員企業95社の2021年2月受注工事総額は1兆2,792億1,200万円(前年同月比5.9%増)の3ヵ月連続1兆円台となり、前年同月比で2ヵ月連続増となった。うち民間工事は8,387億8,100万円(同0.7%増)となり、同2ヵ月連続増となった。官公庁工事は3,844億1,900万円(同9.3%増)となり、同6ヵ月連続増となった。
国内工事は1兆2,271億7,100万円(同3.3%増)となり、同5ヵ月連続増となった。民間工事の8,387億8,100万円のうち、▽製造業が1,173億9,900万円(同26.3%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。▽非製造業は7,213億8,200万円(同7.1%増)となり、同2ヵ月連続増となった。
官公庁工事の3,844億1,900万円のうち、▽国の機関が2,817億9,600万円(同11.3%増)となり、同9ヵ月連続増となった。▽地方の機関は1,026億2,300万円(同4.2%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽その他が39億7,100万円(同13.5%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽海外工事は520億4,100万円(同160.2%増)の大増加となり、同11ヵ月ぶりの増加となった。
20年度(4~2月)の総受注総額が11兆3,438億5,500万円(前年度同期比4.4%減)となった。民間工事が7兆6,134億3,800万円(同10.1%減)、官公庁工事が3兆4,594億7,500万円(同23.8%増)、海外工事が2,331億4,700万円(同59.3%減)となった。
一方、2月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道388億6,000万円(前年同月比1.8%増)の微増となり、前年同期比で4ヵ月ぶりの増加となった。▽東北1,073億1,600万円(同7.5%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽関東5,924億8,700万円(同4.0%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽北陸563億2,400万円(同5.6%増)となり、同4ヵ月ぶりの増加となった。
▽中部1,629億0,900万円(同82.6%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽近畿1,228億6,600万円(同46.8%減)となり、同5ヵ月ぶりの減少となった。▽中国354億9,600万円(同31.3%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。▽四国299億2,000万円(同111.9%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。▽九州810億0,100万円(同22.7%増)となり、同2ヵ月連続増となった。


日建連会員の19年度D・B一括は52.8%
国内建築受注額は13.7%減少

日本建設業連合会の会員企業が2019年度に受注した国内建築工事のうち、設計・施工(D・B)一括方式での受注は金額ベースで52.8%だった。前年度の50.7%から2.1ポイント上昇した。D・B方式での受注が半数を超えるのは4年連続となる。
19年度の国内建築工事受注額は9兆1,726億9,200万円(前年度比13.7%減)となった。うちD・B方式による受注額は4兆8,414億7,600万円(同10.1%減)となった。D・B方式による受注額の内訳を見ると、単独設計は4兆3,317億7,600万円で、総受注額に占める割合は1.9ポイント上昇の47.2%だった。他社と共同設計は5,096億9,900万円で、0.2ポイント上昇の5.6%となった。
D・B一括受注が増加している背景には、建築工事費の削減・工期短縮などが挙げられ、そのため会員各社が設計関連の有資格者を増やしている。日建連が実施した「建築設計部門年次アンケート2020」で明らかになった。建築本部の委員会に参加する58社を対象とし20年7月に実施し、全社から回答を得た。
回答した58社の建築設計部門の所属人数は9,893人で、前年から304人増加した。資格の保有別では1級建築士が5,992人(前年から141人増)、構造設計1級建築士は1,093人(12人増)、設備設計1級建築士が537人(50人増)、建築設備士は992人(50人増)と軒並み増加した。
建築設計部門の所属人数に占める設計関連有資格者数(保有率)は、1級建築士が0.5ポイント低下の60.6%、構造設計1級建築士は0.2ポイント低下の11.0%、設備設計1級建築士は0.3ポイント上昇の5.4%、建築設備士は0.2%ポイント上昇の10.0%だった。


2月粗鋼生産747.2万トン(前年同月比5.6%減)
1月普通鋼建築用59.1万トン(前年同月比31.9%増)

日本鉄鋼連盟は3月22日に発表した2021年2月の銑鉄生産は547.9万トン(前年同月比7.9%減)の前年同月比では12ヵ月連続減となり、粗鋼生産は747.2万トン(同月比5.6%減)の同12ヵ月連続減となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が554.8万トン(同7.2%減)となり、同12ヵ月連続減。▽電炉鋼が192.4万トン(同0.9%減)となり、同2ヵ月ぶりの減少となった。
鋼種別生産では、▽普通鋼が575.9万トン(同5.4%減)となり、同12ヵ月連続減。▽特殊鋼が171.3万トン(同6.4%減)となり、同27ヵ月連続減となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は654.2万トン(同5.1%減)となり、同32ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は506.1万トン(同7.1%減)となり、同12ヵ月連続減となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は148.1万トン(同2.3%増)となり、同2ヵ月連続増となった。
一方、1月の普通鋼鋼材用途別受注量では、建築用は59万1,162トン(同31.9%増)となった。そのうち▽非住宅用が35万4,021トン(同10.4%増)となり、▽住宅用が23万7,141トン(同85.9%増)となった。
20年度(4~1月)の建築用は502万7,740トン(同4.5%増)となった。そのうち▽非住宅が346万3,733トン(同3.4%増)となり、▽住宅が156万4,007トン(同7.0%増)となった。


1月溶接材料の出荷量1万7,053トン(前年同月比9.1%減)
20年度(4~1月)出荷量16万6,027トン(前年同期比20.8%減)

日本溶接材料工業会が発表した2021年1月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)では、生産量は1万5,419トン(前年同月比17.9%減)の前年同期比13ヵ月連続減。出荷量は1万7,053トン(同9.1%減)の同13ヵ月連続減。在庫量は1万6,441トン(同15.6%減)となり、同3ヵ月連続減となった。
生産量の主品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が6,028トン(同18.5%減)の同13ヵ月連続減。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,346トン(同20.2%減)の同13ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒が1,803トン(同13.5%減)の同12ヵ月連続減となった。その他を含む生産量計では1万5,419トン(同17.9%減)となった。
出荷量の主品種は▽SWが6,932トン(同1.0%減)の微減となったが、同13ヵ月連続減。▽FCWが5,878トン(同15.3%減)の同13ヵ月連続減。▽溶接棒が1,838トン(同17.4%減)の同13ヵ月連続減となった。その他を含む出荷量計では1万7,053トン(同9.1%減)となった。
在庫量の主品種は▽SWが5,749トン(同13.8%減)の同13ヵ月ぶりの減少。▽FCWが6,213トン(同7.5%減)の同2ヵ月連続減。▽溶接棒が2,344トン(同25.0%減)の同5ヵ月連続減となった。その他を含む在庫量計では1万6,441トン(同15.6%減)となった。
20年度4~1月の生産量は16万1,610トン(前年同期比23.4%減)となり、出荷量は16万6,027トン(同20.8%減)となった。

20年1月-21年1月 溶接材料月別実績表

生産量
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比 フラックス入りワイヤ 前年比 被 覆  溶接棒 前年比 合 計 前年比
2020年 1 7,398 ▼6.7 6,637 ▼3.3 2,085 10.7 18,771 ▼7.2
2 7,379 ▼13.6 6,788 ▼8.0 1,940 ▼20.7 18,359 ▼14.2
3 7,645 ▼18.6 7,251 ▼2.4 2,320 ▼1.1 19,613 ▼11.5
2020年度 4 7,398 ▼16.6 6,773 ▼7.7 2,146 ▼11.8 18,724 ▼11.8
5 5,519 ▼29.1 5,340 ▼28.0 1,726 ▼28.7 14,746 ▼28.7
6 5,008 ▼44.6 6,744 ▼3.8 2,121 ▼14.6 16,417 ▼21.8
7 5,091 ▼48.7 6,212 ▼26.0 2,227 ▼3.8 16,173 ▼31.5
8 5,064 ▼31.4 4,921 ▼17.6 1,615 ▼24.6 13,828 ▼24.6
9 57,17 ▼36.6 6180 ▼22.4 1775 ▼26.7 15,740 ▼29.6
10 6,997 ▼22.9 5,829 ▼27.9 1,728 ▼25.6 17,120 ▼23.5
11 7,528 ▼16.6 5,855 ▼20.3 1,845 ▼9.2 17,429 ▼17.8
12 6,637 ▼24.1 5,297 ▼27.1 1,660 ▼30.0 16,014 ▼25.3
2021年 1 6,028 ▼18.5 5,346 ▼20.2 1,803 ▼13.5 15,419 ▼17.9
2020年度(4-1月) 55,270 ▼35.7 58,497 ▼20.3 18,646 ▼19.0 161,610 ▼23.4

単位/トン

出荷量
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比 フラックス入りワイヤ 前年比 被 覆 溶接棒 前年比 合 計 前年比
2020年 1 7,000 ▼8.4 6,941 ▼6.7 2,224 ▼8.4 18,758 ▼11.9
2 6,925 ▼18.4 6,517 ▼8.7 2,032 ▼8.6 17,821 ▼13.9
3 7,379 ▼17.3 6,910 ▼7.1 2,128 ▼12.7 18,771 ▼13.6
2020年度 4 6,627 ▼21.7 6,470 ▼24.8 1,885 ▼24.8 17,491 ▼18.3
5 5,569 ▼33.1 6,037 ▼17.5 2,024 ▼13.0 15,949 ▼23.5
6 5,581 ▼35.3 6,525 ▼12.3 2,162 ▼10.8 16,863 ▼20.2
7 4,948 ▼48.2 5,948 ▼26.9 2,044 ▼11.1 15,937 ▼31.0
8 5,306 ▼31.7 5,363 ▼17.6 1,914 ▼11.6 15,027 ▼22.7
9 6,374 ▼28.3 6,089 ▼19.5 2,028 ▼14.3 16,579 ▼23.2
10 6,710 ▼21.2 5,757 ▼26.1 1,900 ▼11.0 16,897 ▼23.2
11 7,171 ▼10.5 5,929 ▼18.9 1,814 ▼11.7 17,209 ▼15.0
12 7,143 ▼16.9 5,615 ▼25.1 1,918 ▼23.9 17,022 ▼21.3
2021年 1 6,932 ▼1.0 5,878 ▼15.3 1,838 ▼17.4 17,053 ▼9.1
2020年度(4-1月) 62,361 ▼25.5 59,611 ▼19.4 19,527 ▼15.2 166,027 ▼20.8

単位/トン

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
世田谷区新本庁舎は大成建設で7月着工
S造・一部RC・SRC造2棟構成、延床約7万超平米

東京都世田谷区本庁舎は大成建設で7月の着工、27年10月15日の完成を目指す。工事では現庁舎(世田谷4-21-27ほか)の敷地内で、庁舎機能を維持しながら解体、建設を繰り返し、最終的には各工期で建設した免震建物を1つの建物として完成させる。
既存の区民会館ホールは外観を保全しながら耐震補強とホール機能向上を施して保存・再生する。設計は佐藤総合計画、CM(コンストラクションマネジメント)は明豊ファシリティワークスが担当する。
建築規模は、東棟S・RC・SRC造、地下2階・地上10階・塔屋2層建て、延べ床面積約3万6,472平方メートル、高さ約41メートル。東棟は執務室や議会、区民会館などの機能を入れる。西棟はS・RC・SRC造、地下2階・地上5階塔屋1層建て、同3万6,519平方メートル、高さ約22メートル。西棟は区民窓口や執務室を設ける。
全体工事を3期に分け、既存庁舎の解体と新庁舎の建設、完成後の移転を繰り返す。近隣住民や施設利用者、職員への影響を最小限に抑える狙いがある。


連載/あの人、この人(12)
「栄光精神」を貫いた髙須賀氏

スノウチの馬場誠一郎社長から1月22日の午前10前に訃報メールが届いた。「突然のことで驚きとは思いますが、髙須賀洋三相談役がかねてより入院加療中でありましたところ、令和3年1月21日 80歳にて逝去致しましたことをお知らせ致します」の知らせを、俄かには信じられなかった。
昨年12月1日の午後7時過ぎスマホが鳴り、髙須賀さんからの電話だった。コロナ禍で1年近く逢っていなく、「ひょっとしたら忘年会の誘いか」と思った。変わらぬ口調で「暫く逢っていないけど、どお、元気!」と始まり、たわいない話になった。この時、体調が悪いとも入院中とも言わず、来春の再会を約束して切った。「あれが最後の会話だった」と思うと、簡単に切ったことが悔やまれた。その夜、40年にわたる出来事や旅行などのさまざまな想い出が走馬灯のように巡り、寝つけなかった。
髙須賀さんとの出会いは、私が大阪のW新聞時代。全構連・近畿支部会の席上で名刺交換をした。その時の社名は須之内商店だった。鉄骨溶接の始端部に使用する鋼製エンドタブ(鋼製タブ)の啓もう・拡販のために全構連傘下の鉄構組合などを精力的に出向いていた時期でもあった。
鋼材特約店の須之内商店が「鋼製タブ」を加工・販売に着手したのは1978年頃で、大手ミルS製鉄子会社のN鉄構(相模原市)の技術指導を基に製品化・市販することになる。建築鉄骨はリベット工法からH形鋼を使った溶接工法へと切り替わり、厚板レ型開先の多層盛り、しかも溶接長が短いために技量を要した。当時のファブリケーターはエンドタブや裏当て材を無規材やスクラップを使い、中には「回し溶接」も罷り通っていた。平鋼の規格材をエンドタブに使う発想は少なかった。
日本鋼構造協会の「エンドタブ工法」を推奨し、日本建築学会が「エンドタブ施工規準(JASS6/鉄骨工事)」されたが、鋼製タブの普及が進まず、須之内商店が直接、啓もうするしかなかった。不良鉄骨問題から品質検査がクローズアップされ非破壊検査が厳格化されたことより普及が加速する。
髙須賀さんは私より一つ上の1940年5月神奈川県鎌倉市生まれ、4男・1女の末っ子。当時は珍しい中高一貫校の名門・私立栄光学園で学び中央大学へ。中大では60年創部のゴルフ部キャプテン(63年)として活躍し、車を乗り回す湘南のダンディボーイだったと思う。卒業後、築地の永楽信用金庫(後に分割譲渡)で務めを経て、須之内商店入社する。鋼材販売に飽き足らず、大手ミルの協力を得ながら土木・建築分野でさまざまなトライを経て建築鉄骨溶接の副資材加工に辿り着くことになる。
84年、叔父・渡部俊二郎社長より3代目を引き継ぐと共に溶接副資材に特化した「スノウチ」を設立し、須之内商店の商権を引き継ぐことなる。新会社の宣伝と鋼製タブ販売に情熱を注ぐことになる。祖父・伊佐次氏の在所で同姓の三郎相談役と全国行脚しながら新生・スノウチの業容拡大に務める。その一方、学生時代に磨いたゴルフは趣味域を超え、栄光学園の同級会や中大ゴルフOB、建築・鉄構界との親睦ゴルフは必ずと言っていい程に参加していた。
私が88年3月に東京勤務になってから髙須賀さんとの交友密度が高くなる。人から頼まれると嫌とは言えない性分は、栄光学園・教育理念の≪自分の力を喜んで人々のために生かすことができる人間≫(栄光精神)の教えだろう。88年1月に日本エンドタブ協会設立や運営に尽力されたのもそうした精神が根底にあってのこと。エンドタブは阪神大震災後、鋼製タブからセラミックス製タブへと替わり、その技量講習の「エンドタブ施工講習会」や各種会合など会社を挙げて協力を惜しまなかった。
94年6月、Mビル・設計部のI調査役、新潟県ファブ・F鉄工のK営業部長、愛知県ファブ・S鉄工所のT専務ら7人による中国・大連、上海市の都市開発事情や国営・日系ファブの視察を一緒に参加。帰国後、髙須賀さん提唱で視察メンバーの情報交換会を年2回行われた。後に名称を「多聞会」とし、会員数も増え設計・ゼネコン・ファブ・検査・副資材などの異業種交流として今も継続している。
スノウチは、90年にセラミックス製タブに着手するも国内生産ではコスト高になるため海外生産に切り替えながら、大連市内から07年山東省乳山市にエンドタブ、裏当て材などのセラミックス製品製造の「須之晟特殊陶瓷公司」を設立。私も96年に設計・ゼネコンの構造技術者らと新鋭工場を訪問し、最新のセラミックス製品生産ラインを見学することができた。
髙須賀さんは「20年毎に大きな変革なくして企業の存続できない。変革なきは淘汰される」と企業20年周期説をよく唱えていたが、≪真理を求め、たえず学び続ける人間≫(同)の教えが根底にある。また、「企業活性化に雇用の多様性と外部人材の活用」を信条とし、女性社員の管理職登用をはじめコロンビア・ラオス・ベトナムなど帰化籍者や障害者、定年技術者らを積極的に雇用してきた。
常に開発企業をめざし「ユーザーニーズへの収集と実現」を標榜する。共同開発や特許権譲渡にも取り組み、その事例のひとつがN建材工業の開発したコラム裏当て金「カドピタ」の製造・販売権を取得し、コラム柱ダイアフラム溶接の効率・品質向上となった。また、仕口と梁接合「LL蝶長」や「蝶番長」、ノンスカラップ工法裏当て金「CR-F・CR」などはユーザーの要望に応えて開発した製品である。ここにも≪他者のために、他者とともに生きる≫(同)が、まさに生かされている。
製品開発の一方、生産効率を求め自動加工機器やロボットの導入を図り、生産ラインを進めるも、「(機械導入には)何度も失敗した。授業料を払わないで成功は有り得ない」と意に介さない。そこには≪確信したことを、勇気をもって実行する人間≫(同)の実践でもある。05年に従弟の渡部康二氏に託し、会長を経て19年に相談役となる。
髙須賀さんとは肝胆相照の仲だったので話は尽きない。私は44歳でタバコを止めたが、髙須賀さんは全く喫煙経験がなく、嫌煙の人だった。また、ゴルフ指導では「スイング練習はアイアンの7番が一番いい」と言って愛用の7番アイアンを頂いた。サービス精神旺盛で私利私欲を感じない。周囲を気遣い和ませる。曲がったことや姑息なことを嫌う。≪素直な心をもち、人々に開かれた人間≫(同)が極自然に実行されているのである。スノウチにとっても、業界や友人知人に欠かせない人であった。
馬場社長の訃報に「なお葬儀につきましては故人の遺志に基づき、26日親族のみで家族葬を執り行う事に致します。後日「偲ぶ会」を行う予定でおります。その節はお知らせいたしますので、ご参列は恐れ入りますが、ご辞退いただけますようお願い申し上げます」とあり、残念ながらお別れができなかった。
温厚で気遣いの人・髙須賀さんは≪多くを与えられた者として、その使命を果たすことができる人間≫(同)の理念を貫いた人生であった。髙須賀さん。ありがとうございます。合掌
【中井 勇】
*文中の(栄光精神)は、栄光学園の教育理念「目指す理想の人間」、教育方針「6つのキーワード」からの原文引用。