スノウチニュース<№247> 令和7年5月
【建築関連統計】
3月の鉄骨系需要量は31万1,000トン(前年同月比3.2%減)
2024年度鉄骨需要量は365万6,250トン(前年度比6.5%減)
国土交通省が4月30日に発表した「建築物着工統計調査」による2025年3月着工総面積は10,620千平方メ―トル(前年同月比28.6%増)の大幅増となり、前年同月比では2ヵ月連続増となった。着工総面積が久々に増加したが相変わらず建設費・人件費の高騰もあり、建築着工面積による低需要が続くとみられる。
建築主別は、▽公共建築物が372千平方メートル(同11.3%減)となり、同2ヵ月連続減。▽民間建築物は10,248千平方メートル(同30.7%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増加となった。
用途別は、▽居住建築物は7,146千平方メートル(同42.4%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増。▽非居住建築物は3,474千平方メートル(同7.1%増)となり、同2ヵ月連続増となった。
構造別では、▽鉄骨造(S造)が3,047千平方メートル(同4.0%減)の微減となり、同4ヵ月連続減、▽鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が126千平方メートル(同55.8%増)の大幅増となり、同3ヵ月連続増。▽鉄筋コンクリート造(RC造)が2,457千平方メートル(同61.9%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増加、▽木造(W造)が4,900千平方メートル(同42.9%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。
鉄骨系の需要換算では、▽S造は30万4,700トン(前年同月比4.0%減)となり、同4ヵ月連続減、▽SRC造は6,300トン(同55.8%増)の大幅増となり、同3ヵ月連続増となった。鉄骨系合計では前月比13.0%増の31万1,000トン(同3.2%減)となった。24年度の鉄骨需要量は365万トン台の低水準となった。
25暦年(1~3月)の鉄骨需要量は、▽S造が82万1,100トン(前年同期比11.9%減)、▽SRC造が2万2,750トン(同227.5%増)となり、鉄骨系合計では84万3,850トン(同10.4%減)となった。
24年度(4~3月)の鉄骨需要量は、▽S造が356万9,500トン(前年度比6.9%減)、▽SRC造が8万6,750トン(同10.6%増)となり、鉄骨系合計では365万6,250トン(同6.5%減)となった。
24年3月-25年3月 鉄骨系需要量の推移
年/月 | S造 (TON) |
前年比 (%) |
SRC造 (TON) |
前年比 (%) |
鉄骨造計 (TON) |
前年比 (%) |
2024年3月 | 317,300 | 18.7 | 4,050 | -63.9 | 321,350 | 15.4 |
2024年度4月 | 379,900 | -2.9 | 7,700 | -2.5 | 387,600 | -2.9 |
5月 | 275,900 | -4.0 | 6,750 | -10.1 | 28,260 | -4.2 |
6月 | 313,800 | 4.9 | 4,900 | -56.0 | 318,700 | 2.7 |
7月 | 321,600 | 2.5 | 2,450 | -77.4 | 324,050 | -0.2 |
8月 | 273,400 | -5.9 | 10,200 | 27.6 | 283,600 | -5.0 |
9月 | 327,900 | 2.4 | 1,500 | -70.9 | 329,400 | 1.3 |
10月 | 295,600 | -26.4 | 17,050 | 111.7 | 312,650 | -23.7 |
11月 | 283,200 | 2.1 | 10,050 | 154.2 | 293,250 | 4.2 |
12月 | 276,500 | -13.8 | 3,350 | -18.3 | 279,850 | -13.8 |
2025年1月 | 249,600 | -21.4 | 8,100 | 153.2 | 257,700 | -19.6 |
2月 | 266,800 | -10.2 | 8,350 | 204.3 | 275,150 | -8.3 |
3月 | 304,700 | -4.0 | 6,300 | 55.8 | 311,000 | -3.2 |
25年暦(25年1月-25年3月) | 821,100 | -11.9 | 22,750 | 227.5 | 843,850 | -10.4 |
24年度(24年4月-25年3月) | 3,569,500 | -6.9 | 86,750 | 13.0 | 3,656,250 | -6.5 |
(国土交通省調べ)
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日建連の3月総受注額約3兆9,739億円(前年同月比8.5%増)
民間工事は2兆7,662億5,000万円(同20.9%増)
2024年度総受注額約19兆2,966億円(前年度比5.7%増)
日本建設業連合会(日建連)が4月25日に発表した会員企業92社の2025年3月分の受注工事総額は3兆9,739億0,600万円(前年同月比8.5%増)となり、前年同月比では1ヵ月で増加となった。そのうち、▽国内工事が3兆8,828億8,600万円(同10.3%増)となり、同1ヵ月で増加。▽海外工事が910億2,000万円(同36.8%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。
▽民間工事が2兆7,662億5,000万円(同20.9%増)となり、同4ヵ月連続増。▽官公庁工事が1兆1,140億8,700万円(同9.5%減)となり、同5ヵ月連続減となった。
民間工事の2兆7,662億5,000万円のうち、▽製造業が4,792億4,000万円(同34.2%増)の大幅増となり、同3ヵ月連続増、▽非製造業2兆2,870億1,000万円(同18.5%増)となり、同4ヵ月連続増なった。官公庁工事の1兆1,140億8,700万円のうち、▽国の機関が7,162億7,200万円(同18.4%減)となり、同2ヵ月連続減、▽地方の機関が3,978億1,500万円(同12.8%増)となり、同2ヵ月連続増▽その他が25億4,900万円(同105.6%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。
2025暦年(1~3月)の受注総工事額が6兆4,849億6,500万円(前年同期比6.2%増)となった。▽民間工事が4兆4,799億8,000万円(同15.6%増)、▽官公庁工事が2兆2,192億3,600万円(同10.9%増)、▽海外工事が1,844億0,500万円(同17.8%減)となった。
2024年度(4~3月)の受注総工事額が19兆2,966億5,300万円(前年度比5.7%増)となった。▽民間工事が13兆8,977億9,000万円(同9.5%増)、▽官公庁工事が4兆6,709億2,400万円(同5.0%減)、▽海外工事が6,633億3,700万円(同10.6%増)となった。
地域ブロック別受注実績
日建連・地域ブロック別による3月の受注工事額では、▽北海道が3,077億5,800万円(前年同月比68.8%増)の大幅増となり、前年同月比では1ヵ月で増加▽東北が1,812億8,100万円(同42.3%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加、▽関東が1兆8,643億3,600万円(同8.7%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加▽北陸が1,242億4,600万円(同1.1%増)の微増となり、同1ヵ月で増加となった。
▽中部が2,211億5,900万円(同0.6%増)の微増となり、同3ヵ月連続増、▽近畿が7,061億2,500万円(同25.8%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増、▽中国が1,009億8,500万円(同37.9%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少、▽四国が525億5,200万円(同19.4%増)となり、同1ヵ月で増加、▽九州が3,244億3,300万円(同15.4%減)となり、同2ヵ月連続減となった。
2024年度(4~3月)の地域ブロック別受注工事額では、▽北海道が1兆0,229億3,800万円(前年度比0.4%増)、▽東北が1兆0,697億9,600万円(同19.1%増)、▽関東が8兆9,291億5,400万円(同8.1%増)、▽北陸が6,160億6,100万円(同19.1%増)となった。
▽中部が1兆4,616億1,200万円(同5.3%増)、▽近畿が3兆0,984億6,300万円(同5.6%増)、▽中国が6,731億1,100万円(同2.7%減)、▽四国が2,484億1,200万円(同4.0%減)、▽九州が1兆5,136億0,300万円(同10.8%減)となった。
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3月の粗鋼生産量は720.7万トン(前年同月比0.2%増)
2月の普通鋼建築用受注量37.9万トン(前年同月比10.5%減)
日本鉄鋼連盟が4月22日に発表した2025年3月の銑鉄生産は514.5万トン(前年同月比2.1%増)となり、前年同月比で3ヵ月ぶりの増加。粗鋼生産は720.7万トン(同0.2%増)となり、同13ヵ月ぶりの増加となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が529.8万トン(同3.0%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加▽電炉鋼が190.9万トン(同6.9%減)となり、同8ヵ月連続減となった。鋼種別生産では、 ▽普通鋼が562.7万トン(同横ばい)となった。▽特殊鋼が158.0万トン(同0.6%増)となり、同13ヵ月ぶりの増加となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は626.9万トン(同3.9%減)となり、同3ヵ月連続減▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は502.0万トン(同4.1%減)となり、同3ヵ月連続減▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は124.8万トン(同2.9%減)となり、同3ヵ月連続減となった。
なお、2月の普通鋼鋼材用途別受注量は、▽建築用が37万8,830トン(前年同月比10.5%減)。うち▽非住宅が25万7,710トン(同11.2%減)、▽住宅が12万1,120トン(同9.0%減)となった。
用途別受注量の25暦年(1~2月)では、▽建築用が75万8,374トン(前年同期比8.2%減)。うち▽非住宅が52万0,929トン(同8.4%減)、▽住宅が23万7,445トン((同7.6%減)となった。
24年度(4~2月)では、▽建築用が432万1,356トン(前年同期比8.6%減)。うち▽非住宅が300万3,339トン(同9.6%減)、▽住宅が131万8,017トン(同6.1%減)となった。
2024年度粗鋼生産8,295万トン(前年度比4.5%減)
2024年度の銑鉄生産は6,045.2万トン(前年比3.7%減)となり、3年連続減となった。粗鋼生産は8,295.0万トン(同4.5%減)となり、3年連続減となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が6,136.8万トン(同3.9%減)▽電炉鋼が2,158.2万トン(同6.1%減)となり、前年比では転炉鋼、電炉鋼とも3年連続減となった。粗鋼に占める電炉鋼比率は26.0%となり、前年から0.5ポイント低下した。鋼種別生産では、▽普通鋼が6,449.5万トン(同4.2%減)、▽特殊鋼が1,845.5万トン(同5.5%減)となり、前年比では普通鋼、特殊鋼とも3年連続減となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は7,316.6万トンと前年比4.9%減、3年連続減となった。鋼種別にみると、▽普通鋼が5,793.0万トン(前年比5.1%減)、▽特殊鋼は1,523.7万トン(同3.9%減)となり、前年比では普通鋼、特殊鋼ともに3年連続減となった。
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2月の溶接材料出荷量1万5,193トン(前年同月比9.3%減)
24年度(4~2月)の総出荷量16万7,219トン(前年比9.9%減)
日本溶接材料工業会が発表した2025年2月の溶接材料出荷量が1万5,193トン(前年同月比9.3%減)となり、前年同月比で11ヵ月連続減となった。建築、造船、橋梁など重工業の低迷が続いていることが要因である。
出荷量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が6,191トン(同14.3%減)となり、同9ヵ月連続減▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,268トン(同9.4%減)となり、同7ヵ月連続減、▽被覆溶接棒が1,947トン(同9.4%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加。その他を含む出荷量計では1万5,193トンとなった。
25暦年(1月~2月)の出荷量は、▽SWが1万2,093トン(前年同期比12.8%減)、▽FCWが1万0,270トン(同5.7%減)、▽溶接棒が3,189トン(同8.3%減)となり、その他を含む出荷量計での総出荷量は2万9,798トン(同9.1%減)となった。
24年度(4月~2月)の出荷量は、▽SWが6万9,395トン(前年同期比12.2%減)、▽FCWが5万8,224トン(同6.2%減)、▽溶接棒が1万6,848トン(同18.4%減)となり、その他を含む出荷量計での総出荷量は16万7,219トン(同9.9%減)となった。
一方、財務省の貿易統計による溶接材料2月の▽輸出量は3,072トン(同22.6%増)となり、同1ヵ月で増加、▽輸入量は4,360トン(同6.9%減)となり、同2ヵ月連続減となった。
25暦年(1月~2月)の▽輸出量は5,551トン(前年同期比9.6%増)▽輸入量は9,023トン(同9.4%減)となった。24年度(4月~2月)の▽輸出量は2万7,316トン(前年同期比5.0%減)、▽輸入量は5万3,023トン(同5.6%減)となった。
24年2月-25年2月 溶接材料月別実績表
単位/トン | |||||||||
年/年度 | 月 | ソリッドワイヤ | 前年比 % |
フラックス入りワイヤ | 前年比 % |
被 覆 溶接棒 |
前年比 % |
合 計 | 前年比 % |
2024年 | 2 | 7,228 | 1.0 | 5,816 | 9.1 | 1,779 | ▼24.0 | 16,746 | ▼1.3 |
3 | 7,856 | 10.8 | 6,300 | 3.3 | 1,729 | ▼24.2 | 17,876 | 1.7 | |
2024年度 | 4 | 6,410 | ▼4.7 | 5,464 | ▼3.5 | 1,503 | ▼17.0 | 15,384 | ▼6.0 |
5 | 6,605 | 2.1 | 5,397 | ▼3.7 | 1,773 | ▼10.1 | 15,780 | ▼2.1 | |
6 | 7,546 | ▼0.1 | 5,156 | ▼12.2 | 1,290 | ▼38.5 | 15,363 | ▼13.4 | |
7 | 7,017 | ▼4.2 | 5,570 | 3.1 | 1,270 | ▼40.4 | 16,012 | ▼6.6 | |
8 | 5,275 | ▼26.7 | 4,831 | ▼9.4 | 1,200 | ▼37.2 | 13,163 | ▼21.3 | |
9 | 6,982 | ▼8.2 | 5,225 | ▼11.5 | 1,737 | ▼16.7 | 15,888 | ▼10.8 | |
10 | 5,818 | ▼21.8 | 5,349 | ▼5.1 | 1,396 | ▼19.0 | 14,827 | ▼13.2 | |
11 | 6,082 | ▼18.0 | 5,309 | ▼8.2 | 1,910 | 9.9 | 15,477 | ▼9.3 | |
12 | 5,567 | ▼24.7 | 5,396 | ▼5.4 | 1,580 | ▼7.7 | 15,527 | ▼7.1 | |
2025年 | 1 | 5,902 | ▼11.2 | 5,259 | ▼1.7 | 1,242 | ▼26.9 | 14,605 | ▼8.9 |
2 | 6,191 | ▼14.3 | 5,268 | ▼9.4 | 1947 | 9.4 | 15193 | ▼9.3 | |
2025暦年(1~2月) | 計 | 12,093 | ▼12.8 | 10,527 | ▼5.7 | 3,189 | ▼8.3 | 29,798 | ▼9.1 |
2024年度(4~2月) | 計 | 69,395 | ▼12.2 | 58,224 | ▼6.2 | 16,848 | ▼18.4 | 167,219 | ▼9.9 |
注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。
日本溶接材料工業会
【建築プロジェクト】
「内幸町1丁目街区南地区再開発(サウスタワー)」は清水建設で着工
S造(CFT柱)・一部SRC造、地下3階・地上46階、延床約29万平米
第一生命保険、中央日本土地建物、東京センチュリー、東京電力パワーグリッド、TF内幸町特定目的会社の5社は、東京都千代田区内幸町1丁目において共同で推進している「内幸町一丁目街区南地区再開発」(サウスタワー)を4月1日に着工した。
千代田区内幸町は、事業構想として今年3月に発表した「TOKYO CROS S PARK構想」の「北地区(帝国ホテル東京・新本館、ノースタワー)、「中地区(セントラルタワー)」、「南地区(サウスタワー)」との再開発事業であり、テナントにはオフィス、商業、ホテル、ウェルネス促進施設などの入居が予定されている。
サウスタワーの規模は、S造(CFT柱)・一部SRC造、地下3階・地上46階建て、延べ床面積約29万0,970平方メートル(高さ約228メートル、最高約233メートル)の大規模複合ビルである。基本設計は日建設計が担当し、実施設計・施工は清水建設が担当している。2029年3月に完成予定。
サウスタワーの1階~8階の低層階にはウェルネス促進施設やホテル、商業施設を配置し、11階~41階に総貸床面積約15万平方メートル、基準階面積約4,620平方メートルの無柱オフィス空間を整備します。 7階にはオフィスロビー、29階にスカイロビーも計画している。同地区は、日比谷通り(都道409号)と国会通りに面し、日比谷公園や丸の内、銀座に近くオフィス・ホテルには最適な場所となっている。
【時論・公論】
天災は「忘れない内に」やってくる
ミャンマー中部で起きた大地震の被害では軍事政権の発表では死者3,763人以上、負傷者5,100人以上、行方不明者110人以上となり、日本人も1人が死亡している(4月28日現在)。多くの国が救援・医療隊を派遣するも、生活困窮と気温40度前後の酷暑。この悲惨な人道状況に加え内戦と重なり、最悪の被害となっている。
ミャンマー大地震が隣国、タイの首都バンコクでも建設中の「会計検査院庁舎」となるRC造・地上34建て高層ビルが崩壊した。同ビル施工は、中国の国有企業「中鉄十局」とタイの大手建設会社JVが建設にあたっていた。
倒壊した高層ビルをテレビや新聞で見る限り、鉄筋径の細さや本数が少なく、粉々に砕けたコンクリート片を見ても強度が低いことが素人目でも分かる。タイ政府発表では、作業員のうち死者40人、行方不明者40人超えである。タイ法務省特別捜査局は4月20日、違法に事業を行ったとして中国企業幹部を逮捕している。
ミャンマー大地震の報道に続き、わが国でも3月31日、国の有識者会議の「南海トラス巨大地震」による地震被害想定を公表。その想定では、死者29万8,000人以上、建物の全壊・焼失235万棟の被害となり、間接影響を含めた経済損失は292兆円と予測している。被害規模は全国の約3割が強い揺れと津波に襲われ、四国地域では最大34メートルにもなる。「(国民は)そろそろ本気になって欲しい」(同会議対策検討WG主査)が述べている。
なお、同会議による21年での想定は死者32万3,000人、倒壊建物238万6,000棟の被害を、25年の目標値では死者8割減、建物全壊・焼失5割減に予測したものの、想定に反し、いずれも1割に満たない減少となった。
わが国の超高層ビルは100メートル超えが約1,200棟あり、建設中が97棟。更に32年に完成予定で建設中約120棟である。そのいずれのビル棟も建築基準法20条1項-号に規定され、高さ60メルート(概ね20階建て)以上は国土交通省の「大臣認定」によって、耐震性が確保されている(一部「日本の超高層ビル」からの引用)。
超高層ビルが続々と完成されるが、中でも<タワーマン>と言われる超高層マンションはRC造構造。震度7強超えの巨大地震にどれほど耐えられるか。1981年制定の「新耐震基準」では<震度5強でも損傷を受けない>から2000年改正で<震度6強から7程度でも倒壊を生じない>となったが、更なる抜本的な改正が求められる。
タイの倒壊した高層ビルの耐震基準は定かでないが、もし完成していたらと思うと背筋が凍る。「天災は忘れた頃にやってくる」(科学者・随筆家の寺田寅彦)の格言だが、昨今では大天災は「忘れないうち」にやってきている。
【加藤 敏雄】