スノウチニュース<№253> 2025年11月
【建築関連統計】
9月の鉄骨需要量は32万4,900トン(前年同月比1.4%減)
25年度(4月~9月)鉄骨需要量178万7,950トン(前年同期比7.2%減)
国土交通省が10月31日に発表した「建築物着工統計調査」による2025年9月着工総面積は8,539千平方メートル(前年同月比4.2%減)となり、前年同月比では6ヵ月連続減少となった。
建築主別は、▽公共建築物が445千平方メートル(同18.2%増)となり、同8ヵ月ぶりに増加。▽民間建築物は8,095千平方メートル(同5.1%減)となり、同6ヵ月連続減少となった。
用途別は、▽居住建築物は5,160千平方メートル(同4.8%減)となり、同6ヵ月連続減少。▽非居住建築物は3,379千平方メートル(同3.1%減)となり、同4ヵ月連続減少となった。
構造別では、▽鉄骨造(S造)が3,144千平方メートル(同4.2%減)となり、同4ヵ月連続減少。▽鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が210千平方メートル(同595.6%増)となり、同1ヵ月で増加。▽鉄筋コンクリート造(RC造)が1,276千平方メートル(同20.6%減)となり、同6ヵ月連続減少。▽木造(W造)が3,768千平方メートル(同3.3%減)となり、同6ヵ月連続減少となった。
鉄骨系の需要換算では、▽S造は31万4,400トン(前年同月比4.1%減)となり、同4ヵ月連続減少。▽SRC造は10,500トン(同600.0%増)となり、同1ヵ月で増加。鉄骨系合計では前月比22.4%増の32万4,900トン(同1.4%減)となった。
25暦年(1月~9月)の鉄骨需要量は、▽S造が258万3,400トン(前年同期比8.5%減)、▽SRC造が4万8,300トン(同11.0%増)となり、鉄骨系合計では263万1,700トン(同8.2%減)となった。
25年度(4月~9月)の鉄骨需要量は、▽S造が176万2,400トン(前年同期比6.9%減)、▽SRC造が25,550トン(同23.7%減)となり、鉄骨系合計では178万7,950トン(同7.2%減)となった。
24年9月-25年9月 鉄骨系需要量の推移
| 年/年度 | 月 | ソリッド ワイヤ |
前年比 | フラックス 入りワイヤ |
前年比 | 被覆 溶接棒 |
前年比 | 合 計 | 前年比 |
| 2024年 | 8 | 5,275 | -26.7% | 4,831 | -9.4% | 1,200 | -37.2% | 13,163 | -21.3% |
| 9 | 6,982 | -8.2% | 5,225 | -11.5% | 1,737 | -16.7% | 15,888 | -10.8% | |
| 10 | 5,818 | -21.8% | 5,349 | -5.1% | 1,396 | -19.0% | 14,827 | -13.2% | |
| 11 | 6,082 | -18.0% | 5,309 | -8.2% | 1,910 | 9.9% | 15,477 | -9.3% | |
| 12 | 5,567 | -24.7% | 5,396 | -5.4% | 1,580 | -7.7% | 15,527 | -7.1% | |
| 2025年 | 1 | 5,902 | -11.2% | 5,259 | -1.7% | 1,242 | -26.9% | 14,605 | -8.9% |
| 2 | 6,191 | -14.3% | 5,268 | -9.4% | 1,947 | 9.4% | 15,193 | -9.3% | |
| 3 | 6,541 | -16.7% | 5,479 | -13.0% | 1,798 | 4.0% | 16,075 | -10.1% | |
| 2025年度 | 4 | 5,929 | -7.5% | 5,268 | -3.6% | 1,440 | -4.2% | 14,757 | -4.1% |
| 5 | 5,748 | -13.0% | 5,008 | -7.2% | 1,358 | -23.4% | 14,101 | -10.6% | |
| 6 | 6,421 | -5.5% | 5,387 | 4.4% | 1,415 | 9.7% | 15,742 | 2.5% | |
| 7 | 6,641 | -5.4% | 5,560 | -0.2% | 1,476 | 16.2% | 16,122 | 0.7% | |
| 8 | 5,696 | 8.0% | 5,018 | 3.9% | 1,444 | 20.3% | 14,305 | 8.7% | |
| 2025年度(4~8月) | 計 | 30,435 | -7.4% | 26,241 | -0.7% | 7,133 | 1.4% | 75,027 | -0.9% |
| 2025暦年(1~8月) | 計 | 49,069 | -10.1% | 42,247 | -3.7% | 12,120 | -1.0% | 120,900 | -4.3% |
(国土交通省調べ)
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日建連の9月総受注額 約2兆2,487億円(前年同月比33.5%増)
民間工事は1兆7,717億7,100万円(同49.6%増)
日本建設業連合会(日建連)が10月30日に発表した会員企業92社の2025年9月分の受注工事総額は2兆2,487億0,400万円(前年同月比33.5%増)となり、前年同月比では2ヵ月連続で増加となった。そのうち、▽国内工事が2兆2,272億7,000万円(同31.9%増)となり、同2ヵ月連続で増加、▽海外工事が214億3,400万円(同0.0%)となり、同月比では増減なしとなった。
▽民間工事が1兆7,717億7,100万円(同49.6%増)となり、同2ヵ月連続で増加、▽官公庁工事が4,527億9,100万円(同9.0%減)となり、同3ヵ月連続で減少となった。
民間工事の1兆7,717億7,100万円のうち、▽製造業が3,029億2,000万円(同16.8%増)となり、同2ヵ月連続で増加、▽非製造業が1兆4,688億5,100万円(同58.8%増)となり、同2ヵ月連続で増加となった。官公庁工事の4,527億9,100万円のうち、▽国の機関が3,150億8,200万円(同16.7%減)となり、同3ヵ月連続で減少、▽地方の機関が1,377億0,900万円(同15.6%増)となり、同1ヵ月で増加、▽その他が27億0,800万円(同58.5%減)となり、同2ヵ月連続で減少となった。
2025暦年(1月~9月)の受注総工事額が16兆2,692億6,300万円(前年同期比14.0%増)となった。▽民間工事が12兆2,039億3,700万円(同24.9%増)、▽官公庁工事が3兆4,913億8,200万円(同11.3%減)、▽海外工事が5,525億6,300万円(同8.6%増)となった。
2025年度(4月~9月)の受注総工事額が9兆7,834億3,900万円(前年同期比19.9%増)となった。▽民間工事が7兆7,237億3,000万円(同31.1%増)、▽官公庁工事が1兆6,783億3,700万円(同13.3%減)、▽海外工事が3,681億5,800万円(同29.5%増)となった。
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地域ブロック別受注実績
日建連・地域ブロック別による9月の受注工事額では、▽北海道が1,780億5,500万円(前年同月比83.7%増)となり、前年同月比では2ヵ月連続で増加、▽東北が1,882億5,400万円(同70.3%増)となり、同1ヵ月で増加、▽関東が8,129億8,600万円(同6.5%減)となり、同1ヵ月で減少、▽北陸が417億6,400万円(同44.6%減)となり、同4ヵ月ぶりに減少となった。
▽中部が2,421億8,300万円(同124.9%増)となり、同3ヵ月ぶりに増加、▽近畿が4,595億9,000万円(同132.6%増)となり、同2ヵ月連続で増加、▽中国が1,059億1,500万円(同23.4%増)となり、同3ヵ月連続で増加、▽四国が209億7,400万円(同21.8%減)となり、同1ヵ月で減少、▽九州が1,775億5,600万円(同50.8%増)となり、同2ヵ月連続で増加となった。
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9月の粗鋼生産量は637.5万トン(前年同月比3.7%減)
8月の普通鋼建築用受注量33.0万トン(前年同月比9.7%減)
日本鉄鋼連盟が10月22日発表した2025年9月の銑鉄生産は461.2万トン(前年同月比3.9%減)となり、前年同月比で6ヵ月連続減少。粗鋼生産は637.5万トン(同3.7%減)となり、同6ヵ月連続減少となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が473.5万トン(同1.2%減)となり、同6ヵ月連続減少。▽電炉鋼が164.0万トン(同10.3%減)となり、同14ヵ月連続減少となった。鋼種別生産では、 ▽普通鋼が490.3万トン(同3.8%減)となり、同6ヵ月連続減少。▽特殊鋼が147.2万トン(同3.5%減)となり、同2ヵ月ぶりの減少となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は576.8万トン(前年同月比4.8%減)となり、同9ヵ月連続減少。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は444.8万トン(同6.2%減)となり、同9ヵ月連続減少。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は132.0万トン(同0.2%減)となり、同2ヵ月ぶりの減少となった。
なお、8月の普通鋼鋼材用途別受注量は、▽建築用が32万9,885トン(前年同月比9.7%減)。うち▽非住宅が23万4,445トン(同8.8%減)、▽住宅が9万5,440トン(同11.8%減)となった。
用途別受注量の25暦年(1月~8月)では、▽建築用が311万1,425トン(前年同期比4.9%減)。うち▽非住宅が216万2,334トン(同4.6%減)、▽住宅が94万9,091トン(同5.5%減)となった。
25年度(4月~8月)では、▽建築用が192万7,853トン(前年同期比4.0%減)。うち▽非住宅が135万1,539トン(同3.3%減)▽住宅が57万6,314トン(同5.4%減)となった。
8月の溶接材料出荷量1万4,305トン(前年同月比8.7%増)
25年度(4~8月)の総出荷量7万5,027トン(前年同期比0.9%減)
日本溶接材料工業会が発表した2025年8月の溶接材料出荷量が1万4,305トン(前年同月比8.7%増)となり、前年同月比では3ヵ月連続で増加となった。
出荷量の主な品種は、▽ソリッドワイヤ(SW)が5,696トン(同8.0%増)となり、同15ヵ月ぶりで増加。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,018トン(同3.9%増)となり、同1ヵ月で増加。▽被覆溶接棒が1,444トン(同20.3%増)となり、同3ヵ月連続で増加。その他を含む出荷量計では1万4,305トンとなった。
25暦年(1月~8月)の出荷量は、▽SWが4万9,069トン(前年同期比10.1%減)、▽FCWが4万2,247トン(同3.7%減)、▽溶接棒が1万2,120トン(同1.0%減)、その他を含む出荷量計での総出荷量は12万0,900トン(同4.3%減)となった。
25年度(4月~8月)の出荷量は、▽SWが3万0,435トン(前年同期比7.4%減)、▽FCWが2万6,241トン(同0.7%減)、▽溶接棒が7,133トン(同1.4%増)、その他を含む出荷量計での総出荷量は7万5,027トン(同0.9%減)となった。
溶接材料8月の貿易統計
財務省の貿易統計による溶接材料8月の▽輸出量は2,392トン(同20.0%増)となり、同4ヵ月連続で増加。▽輸入量は3,924トン(同12.9%減)となり、同1ヵ月で減少となった。
25暦年(1~8月)の輸出量は2万1,807トン(前年同期比17.6%増)、輸入量は3万6,878トン(同2.1%減)となった。25年度(4月~8月)の▽輸出量は1万3,347トン(同23.6%増)▽輸入量は2万3,094トン(同1.4%減)となった。
24年8月-25年8月 溶接材料月別実績表
| 単位/トン | |||||||
| 年/年度 | 月 | S造 | 前年比 | SRC造 | 前年比 | 鉄骨造計 | 前年比 |
| 2024年 | 9 | 327,900 | 2.4% | 1,500 | -70.9% | 329,400 | 1.3% |
| 10 | 295,600 | -26.4% | 17,050 | 111.7% | 312,650 | -23.7% | |
| 11 | 283,200 | 2.1% | 10,050 | 154.2% | 293,250 | 4.2% | |
| 12 | 276,500 | -13.8% | 3,350 | -18.3% | 279,850 | -13.8% | |
| 2025年 | 1 | 249,600 | -21.4% | 8,100 | 153.2% | 257,700 | -19.6% |
| 2 | 266,800 | -10.2% | 8,350 | 204.3% | 275,150 | -8.3% | |
| 3 | 304,700 | -4.0% | 6,300 | 55.8% | 311,000 | -3.2% | |
| 2025年度 | 4 | 375,100 | -1.3% | 3,650 | -52.6% | 378,750 | -2.3% |
| 5 | 288,500 | 4.6% | 2,650 | -60.7% | 291,150 | 3.0% | |
| 6 | 266,700 | -15.0% | 3,150 | -35.7% | 269,850 | -15.3% | |
| 7 | 253,900 | -21.1% | 3,950 | 61.2% | 257,850 | -20.4% | |
| 8 | 263,700 | -3.5% | 1,650 | -83.8% | 265,350 | -6.4% | |
| 9 | 314,400 | -4.1% | 10,500 | 600.0% | 324,900 | -1.4% | |
| 2025暦年(1月-9月) | 計 | 2,583,400 | -8.5% | 48,300 | 11.0% | 2,631,700 | -8.2% |
| 2025年度(4月-9月) | 計 | 1,762,400 | -6.9% | 25,550 | -23.7% | 1,787,950 | -7.2% |
注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。
日本溶接材料工業会
【建築プロジェクト】
「名古屋アリーナ」は設計・施工大林組で8月に着工
S造、地上4階建て、延床約27,500㎡ 収容客数約10,000人
2025年7月13日に大相撲名古屋場所の初日に愛知国際アリーナが開業しました。
愛知国際アリーナとは別に、もうひとつ「(仮称)名古屋アリーナ」と呼ばれる新しい施設が着工しました。
三井不動産・豊田通商・KDDIは、収容客数約10,000人規模の多目的アリーナ「(仮称)名古屋アリーナ」を2025年8月27日に着工、2027年秋に竣工、2028年初頭に開業予定です。
プロバスケットチーム「ファイティングイーグルス名古屋」が2027-28シーズンよりホームアリーナとして利用するほか、音楽コンサートなどの多様なイベントを開催予定です。
構造はS造で鉄骨量は約2,000トン 敷地面積 約20,500m² 延床面積 約27,500m² 地上4階建て 収容人数 約10,000人という計画です。
アクセスは、名古屋市営地下鉄名港線「港区役所駅」から徒歩約8分と至便です。
建設主体は三井不動産、豊田通商、KDDI の3社共同。設計・施工は大林組のようです。
地域商業施設との連動を想定しています。特に、隣接する「三井ショッピングパーク ららぽーと名古屋みなとアクルス」と協力し、イベント前後の飲食・買い物等で滞在を伸ばせるような体験価値の創造を図る予定です。
IGアリーナは、「国内の新しいハイブリッド型アリーナ施設」として、広島グリーンアリーナやマリンメッセ福岡等の多くの既存アリーナの中で競争力を持つ施設になると見られます。特に、オーバルに加えて馬蹄型にすることにより視認性を強化するとともに、音響性能や大規模証明による音楽・スポーツ両用途への対応力、そして名古屋という地域のポテンシャルを背景に、大規模なコンサートや国際イベントの誘致に期待が持てます。
【時論・公論】
秀長が長生きしていれば豊臣家の天下は安泰だった
NHKの報道によりますと、2026年の大河ドラマは、「豊臣兄弟!」というタイトルで、『秀長が長生きしていれば、豊臣家の天下は安泰だった』と称せられる秀吉の弟の秀長の目線で展開するようです。
武士の世界では、兄弟はライバルになり、血縁よりも生き残ること、権力を得ることが優先されることがままありました。
織田信長は、尾張・清洲織田家の嫡男として生まれましたが、父の信秀の死後、家中では弟の信行を推す派閥が台頭してきました。
信行は母や家臣たちからの支持が厚く、家中での信長と信行の対立が激化しました。信長は、信行が自分に対して挙兵したことを一回は許しましたが、「再度謀反の疑いあり」として粛清しました。結果的に信長政権の安定と中央集権体制の構築につながり、歴史的には「大きなプラス」になったと考えられます。
また、頼朝と義経の兄弟の関係も典型的な例として挙げられます。義経は、平家追討の主力として数々の戦功を挙げましたが、最終的に頼朝から全国に追捕の命が下され、逃亡の末、悲劇的な死を遂げました。
結果的に義経の死で鎌倉幕府はむしろ安定し、頼朝の独裁体制が完成したことは歴史的には同様に「大きなプラス」になったと考えられます。
一方、秀吉と秀長は、戦国の混乱期を生き抜き、協力して天下統一を成し遂げた理想的な兄弟関係として知られています。秀吉が織田信長の家臣として頭角を現す一方、秀長は一歩引いた立場で兄を支え続けました。秀長は決して権力を欲しがることなく、秀吉に忠実であったため、兄弟の間に亀裂は生まれなかったと考えられます。秀長は、秀吉にリクルートされる二十歳迄は農民として父母と暮らしていました。そのため、農民の助け合いの文化が身についていたと思われます。
軍事・行政の両面において秀長は高い能力を発揮し、秀吉からの厚い信頼を得ていました。秀長の存在があったからこそ、秀吉は安心して戦や政務に集中することができ、天下統一という大業を果たすことができたと考えられます。
秀吉は、豊臣政権の安定と正統性を担保し、家康や他大名への牽制と均衡を図るために秀長に大和・紀伊・和泉三国にわたる所領約八十五万石を与え、公家社会で最高位に近い「大和大納言」の官位に就かせて政務・軍務を補佐させて戦略的に天下統一を進めました。
秀長は単に「よき補佐役」だけではなく、秀吉の激情や野望を抑制し、政権を中庸に保つ最後の防波堤でもありました。
また、秀長は大和郡山で寺社勢力を統制するために座を廃止し、検地や刀狩を実施しました。
秀吉の中央集権政策は、秀長の郡山での実践的経験を下敷きにしていたと思われます。
小田原征伐に対して、北条氏政・氏直は秀吉の再三の降伏勧告を拒否し、籠城の末降伏しましたが、この「遅すぎた決断」が秀吉の怒りを買い、関東全域没収及び氏政切腹と氏直配流という厳罰となりました。北条親子がもし、早期に降伏していれば、秀長を通じた融和策の余地は十分にあったと考えられます。
類似のケースで、秀吉は、四国征伐では長宗我部元親に所領安堵(高知県)、九州征伐では島津義久に所領安堵(鹿児島県と宮崎県南部)しています。
これらは、秀長が「完全な滅亡」ではなく「臣従による再編」を導いた結果とも言えます。九州征伐の後に秀吉に臣従した島津義弘は朝鮮出兵に参加しましたし、関ヶ原の戦いでは西軍として奮戦し、「島津の退き口」という壮絶な撤退戦で知られる伝説を残しました。
秀長の死後、秀吉の判断がエスカレートし、政権の求心力も急激に低下していきました。
秀吉は、「明の征服」を夢見て、朝鮮出兵(文禄・慶長の役)を行いましたが、朝鮮での泥沼の戦争となり、人的・経済的負担が甚大で、日本全国の大名・民衆にも不満が蓄積し、結果的に何の実も得られず、秀吉の威信を大きく失墜させることになりました。
秀長が生きていれば、こうした無謀な遠征にブレーキをかけた可能性が高いと指摘されています。
秀長の死後に本格的に整備された「五奉行・五大老体制」への移行も、秀長の死後における豊臣政権の変質・不安定化の一環として捉えることができます。「五奉行・五大老体制」は、秀長亡き後の代替システムであるとともに政権崩壊の前兆でもありました。
五奉行と五大老の間に対立軸が生まれ、石田三成(奉行)対 徳川家康(大老)の構図が深刻化しました。
他にも秀頼の誕生によって、豊臣秀吉はそれまで自らが「後継者」として立てていた甥である秀次を突如として排除し、しかも極端で残虐な手段をとりました。これは秀吉の晩年の猜疑心と狂気の象徴的事件であり、秀吉の評判はこの事件で急激に悪化しました。
また、秀長が亡くなった直後に、利休は切腹を命じられています。利休の立場や功績を考えれば、秀長が「やりすぎだ」と説得できた可能性はあったかもしれません。
秀長は52歳で亡くなりましたが、あと数年生きていれば、豊臣政権は家康に滅ぼされなかった可能性があります。 少なくとも関ヶ原の戦いを回避できた可能性は非常に高いと思われます。
徳川幕府は誕生していなかったかもしれません。
以上は、諸説ある中の一つとされています。
【SEI】






