スノウチニュース<№259> 2026年5月
【建築関連統計】
3月の鉄骨需要量は29万8,200トン(前年同月比4.1%減)
25年度(4月~3月)鉄骨需要量342万0,450トン(前年同期比6.4%減)
国土交通省が4月30日に発表した「建築物着工統計調査」による2026年3月着工総面積は、8,133千平方メートル(前年同月比23.7%減)となり、前年同月比では2ヵ月連続で減少となった。
建築主別は、▽公共建築物が359千平方メートル(同3.7%減)となり、同1ヵ月で減少。▽民間建築物は7,774千平方メートル(同24.4%減)となり、同2ヵ月連続で減少となった。
用途別は、▽居住建築物は5,076千平方メートル(同29.2%減)となり、同12ヵ月連続で減少。▽非居住建築物は3,057千平方メートル(同12.3%減)となり、同2ヵ月連続で減少となった。
構造別では、▽鉄骨造(S造)が2,969千平方メートル(同3.0%減)となり、同4ヵ月ぶりに減少。▽鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が26千平方メートル(同79.0%減)となり、同6ヵ月連続で減少。▽鉄筋コンクリート造(RC造)が1,485千平方メートル(同39.6%減)となり、同5ヵ月連続で減少。▽木造(W造)が3,588千平方メートル(同27.1%減)となり、同2ヵ月連続で減少となった。
鉄骨系の需要換算では、▽S造は29万6,900トン(前年同月比2.6%減)となり、同4ヵ月ぶりに減少。▽SRC造は1,300トン(同79.4%減)となり、同6ヵ月連続で減少。鉄骨系合計では前月比9.4%増の29万8,200トン(同4.1%減)となった。
26暦年(1月~3月)の鉄骨需要量は、▽S造が82万2,400トン(前年同期比0.2%増)、▽SRC造が6,200トン(同72.7%減)となり、鉄骨系合計では82万8,600トン(同1.8%減)となった。
25年度(4月~3月)の鉄骨需要量は、▽S造が338万3,200トン(前年同期比5.2%減)、▽SRC造が3万7,250トン(同57.0%減)となり、鉄骨系合計では342万0,450トン(同6.4%減)となった。
25年3月-26年3月 鉄骨系需要量の推移
| 年/年度 | 月 | S造 | 前年比 | SRC造 | 前年比 | 鉄骨造計 | 前年比 |
| 2025年 | 3 | 304,700 | -4.0% | 6,300 | 55.8% | 311,000 | -3.2% |
| 2025年度 | 4 | 375,100 | -1.3% | 3,650 | -52.6% | 378,750 | -2.3% |
| 5 | 288,500 | 4.6% | 2,650 | -60.7% | 291,150 | 3.0% | |
| 6 | 266,700 | -15.0% | 3,150 | -35.7% | 269,850 | -15.3% | |
| 7 | 253,900 | -21.1% | 3,950 | 61.2% | 257,850 | -20.4% | |
| 8 | 263,700 | -3.5% | 1,650 | -83.8% | 265,350 | -6.4% | |
| 9 | 314,400 | -4.1% | 10,500 | 600.0% | 324,900 | -1.4% | |
| 10 | 293,700 | -0.6% | 1,800 | -89.4% | 295,500 | -5.5% | |
| 11 | 223,400 | -21.1% | 1,450 | -85.6% | 224,850 | -23.3% | |
| 12 | 281,300 | 1.7% | 2,150 | -35.8% | 283,450 | 1.3% | |
| 2026年 | 1 | 256,000 | 2.6% | 1,750 | -78.3% | 257,750 | 0.0% |
| 2 | 269,500 | 1.0% | 3,150 | -62.3% | 272,650 | -0.9% | |
| 3 | 296,900 | -2.6% | 1,300 | -79.4% | 298,200 | -4.1% | |
| 2025年度(25年4月-26年3月) | 計 | 3,383,200 | -5.2% | 37,250 | -57.0% | 3,420,450 | -6.4% |
| 2026暦年(1月-3月) | 計 | 822,400 | 0.2% | 6,200 | -72.7% | 828,600 | -1.8% |
(国土交通省調べ)
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日建連の3月総受注額約3兆2,961億円(前年同月比17.1%減)
民間工事は1兆9,539億4,100万円(同29.4%減)
日本建設業連合会(日建連)が4月28日に発表した会員企業92社の2026年3月分の受注工事総額は、3兆2,961億1,200万円(前年同月比17.1%減)となり、前年同月比では5ヵ月ぶりに減少となった。そのうち、▽国内工事が3兆2,003億4,600万円(同17.6%減)となり、同5ヵ月ぶりに減少、▽海外工事が957億6,600万円(同5.2%増)となり、同2ヶ月連続で増加となった。
▽民間工事が1兆9,539億4,100万円(同29.4%減)となり、同5ヵ月ぶりに減少、▽官公庁工事が1兆2,433億3,400万円(同11.5%増)となり、同2ヵ月連続で増加となった。
民間工事のうち、▽製造業が2,894億1,900万円(同39.6%減)となり、同4ヵ月ぶりに減少、▽非製造業が1兆6,645億2,200万円(同27.2%減)となり、同5ヵ月ぶりに減少となった。官公庁工事のうち、▽国の機関が7,537億4,300万円(同5.1%増)となり、同2ヵ月連続で増加、▽地方の機関が4,895億9,100万円(同23.1%増)となり、同4ヵ月連続で増加、▽その他が30億7,100万円(同20.5%増)となり、同5ヵ月連続で増加となった。
26暦年(1月~3月)の受注総工事額は、6兆4,111億7,100万円(前年同期比1.2%減)となった。▽民間工事が4兆2,358億9,000万円(同5.5%減)、▽官公庁工事が2兆0,172億9,900万円(同11.3%増)、▽海外工事が1,427億0,600万円(同22.6%減)となった。
25年度(4月~3月)の受注総工事額は、21兆2,112億4,300万円(前年同期比9.9%増)となった。▽民間工事が15兆4,076億9,300万円(同10.9%増)、▽官公庁工事が5兆0,030億5,900万円(同7.1%増)、▽海外工事が7,565億1,500万円(同14.0%増)となった。
日建連・地域ブロック別による3月の受注工事額では、▽北海道が1,629億7,700万円(前年同月比47.0%減)となり、前年同月比では1ヵ月で減少、▽東北が2,017億0,300万円(同11.1%増)となり、同2ヵ月連続で増加、▽関東が1兆5,298億5,700万円(同17.9%減)となり、同4ヵ月ぶりに減少、▽北陸が1,339億5,700万円(同7.8%増)となり、同4ヵ月連続で増加となった。
▽中部が2,596億0,700万円(同17.4%増)となり、同2ヵ月連続で増加、▽近畿が4,375億3,300万円(同38.1%減)となり、同5ヵ月ぶりに減少、▽中国が1,230億7,100万円(同21.8%増)となり、同1ヵ月で増加、▽四国が227億8,500万円(同56.6%減)となり、同2ヵ月連続で減少、▽九州が3,288億3,500万円(同1.4%増)となり、同2ヵ月連続で増加となった。
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3月の粗鋼生産量は691.5万トン(前年同月比4.1%減)
2月の普通鋼建築用受注量37.5万トン(前年同月比1.0%減)
日本鉄鋼連盟が4月22日発表した2026年3月の銑鉄生産は、490.9万トン(前年同月比4.6%減)となり、前年同月比では12ヵ月連続で減少。粗鋼生産は、691.5万トン(同4.1%減)となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が500.7万トン(同5.5%減)となり、同2ヵ月ぶりに減少。▽電炉鋼が190.8万トン(同0.2%減)となり、同2ヵ月連続で減少となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が524.5万トン(同6.9%減)となり、同5ヵ月連続で減少。▽特殊鋼が167.0万トン(同5.8%増)となり、同2ヵ月連続で増加となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は、617.2万トン(前年同月比3.3%減)となり、同4ヵ月連続で減少。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は484.2万トン(同5.1%減)となり、同4ヵ月連続で減少。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は132.9万トン(同4.0%増)となり、同2ヵ月連続で増加となった。
なお、2月の普通鋼鋼材用途別受注量は、▽建築用が37万4,868トン(前年同月比1.0%減)。うち▽住宅が10万8,082トン(同10.8%減)、▽非住宅が26万6,786トン(同3.5%増)、となった。
用途別受注量の26暦年(1月~2月)では、▽建築用が73万7,843トン(前年同期比2.7%減)。うち▽住宅が20万8,942トン(同12.0%減)、▽非住宅が52万8,901トン(同1.5%増)、となった。
25年度(4月~2月)では、▽建築用が433万4,432トン(前年同期比0.3%増)。うち▽住宅が131万2,953トン(同0.4%減)、▽非住宅が302万1,479トン(同0.6%増)となった。
2025年度の粗鋼生産量は8,033万トン(前年度比3.2%減)
2025年度の銑鉄生産は5,807.3万トン(前年比3.9%減)となり、4年連続で減少となった。粗鋼生産は8,033.1万トン(同3.2%減)となり、4年連続で減少となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が5,952.4万トン(同3.0%減)、▽電炉鋼が2,080.7万トン(同3.6%減)となり、前年比では転炉鋼、電炉鋼ともに4年連続で減少となった。粗鋼合計に占める電炉鋼比率は25.9%となり、前年から0.1ポイント低下した。鋼種別生産では、▽普通鋼が6,197.1万トン(同3.9%減)、▽特殊鋼が1,835.9万トン(同0.5%減)となり、前年比では普通鋼、特殊鋼ともに4年連続で減少となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は7,181.0万トン(前年比2.2%減)となり、4年連続で減少となった。鋼種別にみると、▽普通鋼が5,636.5万トン(前年比2.8%減)、▽特殊鋼は1,544.5万トン(同0.3%増)となり、前年比では普通鋼は4年連続で減少、特殊鋼は4年ぶりに増加となった。
2月の溶接材料出荷量1万4,526トン(前年同月比4.4%減)
25年度(4月~2月)の総出荷量16万9,489トン(前年同期比1.4%増)
日本溶接材料工業会が発表した2026年2月の溶接材料出荷量が1万4,526トン(前年同月比4.4%減)となり、前年同月比では9ヵ月ぶりに減少となった。
出荷量の主な品種は、▽ソリッドワイヤ(SW)が6,274トン(同1.3%増)となり、同1ヵ月で増加。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が4,821トン(同8.5%減)となり、同2ヵ月連続で減少。▽被覆溶接棒が1,197トン(同38.5%減)となり、同3ヵ月ぶりに減少となった。
26暦年(1月~2月)の出荷量は、▽SWが1万2,037トン(前年同期比0.5%減)、▽FCWが9,828トン(同6.6%減)、▽溶接棒が2,802トン(同12.1%減)、その他を含む出荷量計での総出荷量は2万9,191トン(同2.0%減)となった。
25年度(4月~2月)の出荷量は、▽SWが6万8,955トン(前年同期比0.6%減)、▽FCWが5万8,547トン(同0.6%増)、▽溶接棒が1万6,341トン(同3.0%減)、その他を含む出荷量計での総出荷量は16万9,489トン(同1.4%増)となった。
財務省の貿易統計による溶接材料2月の▽輸出量は1,913トン(同37.7%減)となり、同3ヵ月ぶりに減少。▽輸入量は4,596トン(同5.4%増)となり、同3ヵ月ぶりに増加となった。
26暦年(1月~2月)の輸出量は4,440トン(前年同期比20.0%減)、輸入量は9,055トン(同0.4%増)となった。25年度(4月~2月)の▽輸出量は3万0,147トン(同10.4%増)、▽輸入量は5万2,225トン(同1.5%減)となった。
25年2月-26年2月 溶接材料月別実績表
| 単位/トン | |||||||||
| 年/年度 | 月 | ソリッドワイヤ | 前年比 % |
フラックス入りワイヤ | 前年比 % |
被 覆 溶接棒 |
前年比 % |
合 計 | 前年比 % |
| 2025年 | 2 | 6,191 | -14.3% | 5,268 | -9.4% | 1,947 | 9.4% | 15,193 | -9.3% |
| 3 | 6,541 | -16.7% | 5,479 | -13.0% | 1,798 | 4.0% | 16,075 | -10.1% | |
| 2025年度 | 4 | 5,929 | -7.5% | 5,268 | -3.6% | 1,440 | -4.2% | 14,757 | -4.1% |
| 5 | 5,748 | -13.0% | 5,008 | -7.2% | 1,358 | -23.4% | 14,101 | -10.6% | |
| 6 | 6,421 | -5.5% | 5,387 | 4.4% | 1,415 | 9.7% | 15,742 | 2.5% | |
| 7 | 6,641 | -5.4% | 5,560 | -0.2% | 1,476 | 16.2% | 16,122 | 0.7% | |
| 8 | 5,696 | 8.0% | 5,018 | 3.9% | 1,444 | 20.3% | 14,305 | 8.7% | |
| 9 | 6,944 | -0.5% | 5,942 | 13.7% | 1,375 | -20.8% | 16,968 | 6.8% | |
| 10 | 6,297 | 8.2% | 5,550 | 3.8% | 1,428 | 2.3% | 15,634 | 5.4% | |
| 11 | 6,316 | 3.8% | 5,324 | 0.3% | 1,868 | -2.2% | 15,704 | 1.5% | |
| 12 | 6,926 | 9.6% | 5,662 | 4.9% | 1,735 | 9.8% | 16,965 | 9.3% | |
| 2026年 | 1 | 5,763 | -2.4% | 5,007 | -4.8% | 1,605 | 29.2% | 14,665 | 0.4% |
| 2 | 6,274 | 1.3% | 4,821 | -8.5% | 1,197 | -38.5% | 14,526 | -4.4% | |
| 2025年度(25年4月~26年2月) | 計 | 68,955 | -0.6% | 58,547 | 0.6% | 16,341 | -3.0% | 169,489 | 1.4% |
| 2026暦年(1月~2月) | 計 | 12,037 | -0.5% | 9,828 | -6.6% | 2,802 | -12.1% | 29,191 | -2.0% |
注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。
(日本溶接材料工業会の発表に基づく)
【建築プロジェクト】
六本木5丁目西地区再開発──六本木の都市ブランドを進化させる大規模プロジェクト
東京・六本木エリアでは、国内でも有数の大型再開発プロジェクトとして注目されている六本木5丁目西地区再開発が進行しています。整備面積は約10.3ヘクタール、総延床面積は約108万㎡に及ぶこの計画は、単なる高層ビル建設にとどまらず、街区全体を複合的に再編し、都市の質そのものを高めることを目的としています。計画は2025年度の着工、2030年度の竣工・供用開始を目標としており、六本木ヒルズや東京ミッドタウンに並ぶ、都心有数の都市再編事業となります。
六本木は戦後、GHQによる占領期を背景に米軍関係者や外国人の居住・活動が広がり、国際的な文化や商業が根付いてきました。こうした歴史的経緯を土台として、六本木は次第に商業・業務・文化機能が集積する国際都市へと発展していきました。
一方で、既存建築物の老朽化や街区の細分化、歩行者動線の分断といった課題も抱えていました。こうした背景から本再開発では、単一の超高層ビルを象徴的に建てるのではなく、複数街区を一体的に更新する複合都市づくりが選択されています。
この構想は、2003年に開業した初代六本木ヒルズの都市開発思想を色濃く引き継ぐものでもあります。森ビル株式会社が中心となって実現した六本木ヒルズは、オフィス、住宅、商業、文化施設を一体化させ、六本木を国際都市として再定義しました。六本木5丁目西地区再開発にも森ビルが事業協力者として参画しており、都市ブランドを継承しながら、より大きなスケールへと進化させる位置づけにあります。
再開発区域はA〜Eの複数街区で構成されています。中核となるA-1街区には、地上66階・高さ約327メートルの超高層複合ビルが計画されています。地上部分は鉄骨造(S造)、地下は鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)および鉄筋コンクリート造(RC造)とし、超高層に求められる耐震性・耐久性を確保します。この高さは、東京駅前で計画されている高さ約390メートルのトーチタワーに次ぐ規模であり、完成すれば国内で2番目の高さを誇る建築物となる予定です。ただし、この超高層棟も単独で完結する存在ではなく、周囲の街区と連動する都市機能の一部として位置づけられています。
B街区には、地上70階・高さ約288メートルのタワーマンションが計画されており、構造は鉄筋コンクリート造(RC造)が採用されます。約800〜850戸規模の住宅に加え、商業や業務機能も組み込まれ、居住と都市活動が共存する街区が形成されます。これにより、六本木エリアは昼夜を通じて人の流れが生まれる都市へと変化していきます。
C〜E街区では、教育・文化・交流・生活機能の導入が予定されています。学校や文化施設、住宅、商業施設をバランスよく配置することで、働く場・住まう場・学ぶ場が近接する複合的な都市空間が生まれます。街区内には象徴的な彫像やモニュメントの設置も構想されており、六本木の歴史性と現代性を視覚的に結びつける役割を果たします。
また、本再開発では都市基盤整備も重視されています。駅前広場や地下通路、ペデストリアンデッキの整備によって、六本木駅周辺から初代六本木ヒルズ、東京ミッドタウンへと連なる歩行者ネットワークが強化されます。これにより、六本木全体が回遊性の高い都市空間として再編されることになります。
六本木5丁目西地区再開発は、超高層ビルの高さを競う計画ではありません。トーチタワーに次ぐ高さを持つ建築が誕生する一方で、その本質は、都市機能の集積、公共空間の創出、国際競争力の強化を同時に実現する点にあります。初代六本木ヒルズで確立された都市モデルを進化させ、六本木という街全体を次の時代へ導くプロジェクトとして、日本の都市再開発史において重要な位置を占めることになるでしょう。
【時論・公論】
初夏を彩る端午の節句と五節句に込められた願い
青空に光が満ち、風が新緑を揺らす初夏。庭先には鯉のぼりが元気よく泳ぎ、菖蒲の香りがほのかに漂います。陽射しが長くなり、夏の気配を感じるこの季節には、古来より家族の健康や幸せを願う行事が各地で行われてきました。日本には、季節の節目に無病息災や繁栄を祈る「五節句」という伝統があり、端午の節句はその中でも特に初夏を象徴する行事として親しまれています。
五節句とは、1月7日の七草の節句、3月3日の桃の節句、5月5日の端午の節句、7月7日の七夕の節句、9月9日の重陽の節句を指します。共通しているのは、家族の健康や無病息災、幸福を願い、季節の変化に心を向けることです。日々の生活の中で、自然や暦に意識を向けるきっかけを与えてくれます。
その中でも、5月5日の端午の節句は、特に子どもたちの健やかな成長を願う日です。「端」は「はじめ」を、「午」は暦の上で五を意味し、季節の節目として定められました。軒先に揚げられる鯉のぼりや鎧・兜の光景は、初夏の風物詩そのもの。風に揺れる鯉の姿は力強く、子どもたちの未来への希望を象徴します。滝を登る鯉が龍になるという故事にちなみ、成長や立身出世の願いも込められています。
菖蒲には薬草としての効用と強い香りがあり、「勝負」や「厄除け」の意味があります。菖蒲湯に入ることで邪気を払い、健康を祈る習慣は古くから続いてきました。私の知人の家では、子どもたちが手を伸ばして菖蒲の香りを楽しみながら、「今年も元気に過ごせますように」と願う姿があります。こうした日常の体験こそ、節句の意味を肌で感じる瞬間です。
地域によっては、疫病や悪霊から家族を守るとされる鐘馗様を飾る風習もあります。小さな人形や掛け軸に込められた祈りを通して、子どもたちは古くからの知恵や願いに触れ、家族の健康や幸福の大切さを学びます。また、庭先で家族と一緒に鯉のぼりを揚げたり、軒先で揺れる鯉を眺めたりするだけでも、初夏の訪れを実感し、五節句に共通する「季節を意識する心」を日常に取り入れることができます。
端午の節句の行事食としては、柏餅やちまきが楽しめます。柏の葉は新芽が出るまで古い葉が落ちないことから「家系が途切れない」という縁起を持ち、健康や長寿を願う意味があります。ちまきも、もともとは中国から伝わった厄除けや魔除けの食べ物で、京都の祇園祭では神事にちまきを供える風習があります。笹の葉で作られた御守りで、厄病や災難除けとして玄関に飾ります。端午の節句のちまきも、子どもたちの健やかな成長や無病息災を願う象徴として楽しまれてきました。子どもと一緒に柏餅を包んだり、香りや味を楽しんだりする時間は、家族の絆を深め、五節句に共通する「家族の健康や幸せを願う心」を体験できるひとときです。
端午の節句は男の子だけの行事ではありません。家族全体で季節の訪れを楽しみ、健康や幸せを願うことが大切です。青空の下で鯉のぼりを眺め、菖蒲湯の香りに包まれ、柏餅やちまきを味わう。こうした小さな日常の積み重ねが、古来から五節句に込められた願いの現代版として受け継がれています。
現代では、端午の節句は子どもの成長を祝うだけでなく、季節を感じ、家族で過ごす時間を大切にする行事として楽しまれています。青空に泳ぐ鯉のぼり、爽やかな菖蒲の香り、柏餅やちまきのやさしい香りと味。五節句に共通する「家族の健康と幸福を願い、季節を意識する心」が、日常の中で自然に体験できるのが端午の節句の魅力です。
初夏の風に揺れる鯉のぼり、菖蒲湯の香り、柏餅やちまきのやさしい味わい。端午の節句には、家族の健康や幸福を祈り、季節を五感で楽しむ時間があります。こうした伝統を受け継ぎ、日常の中に季節の節目を取り入れることは、現代に生きる私たちにとっても、大切なひとときとなるでしょう。
【SEI】






