スノウチニュース<№177> 令和元年7月

【鉄骨需要月別統計】
5月鉄骨需要量38万3,450トン(前年同月比12.0%減)
S造は37万6,100トン、SRC造は7,350トン

国土交通省が6月28日発表した「建築物着工統計調査」の2019年5月着工総面積は10,552千平方メ―トル(前年同月比3.3%減)の前年同月比4ヵ月連続減となる。2ヵ月連続で10,000千平方メートルを超えた。

▽建築主別は、公共建築物が653千平方メートル(同50.1%増)となり、同5ヵ月目で増加に転じた。民間建築物は9,900千平方メートル(同5.5%減)の同2ヵ月連続減となり、同1ヵ月で10,000万平方メートルを割った。

▽用途別は、居住建築物は6,382千平方メートル(同5.0%減)となり、同2ヵ月連続減となった。非居住建築物は4,170千平方メートル(同0.5%減)となり、同4ヵ月連続減となった。

▽構造別は、鉄骨建築のS造は3,761千平方メートル(同12.0%減)となり、同3ヵ月連続減となった。SRC造は147千平方メートル(同10.7%減)となり、同1ヵ月で減少となった。RC造は1,943千平方メートル(同4.8%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。W造は4,635千平方メートル(同2.1%増)となり、同4ヵ月連続増となった。

▽鉄骨需要換算では、S造は37万6,100トンとなり、6ヵ月連続で40万トンを割った。SRC造は7,350トンとなった。鉄骨造計は前年同月比12.0%減の38万3,450トンとなり、前月比では4.6%減となり、同1ヵ月で40万トンを割った。昨年秋以来の高力ボルト不足が解消されず、鉄骨造に落ち込み傾向みられる。

18年5月-19年5月 鉄骨需要量の推移

S 造 前年比 SRC造 前年比 鉄骨造合計
18/5 427,500 -1.9 8,200 -6.8 435,700
6 471,200 -1.7 1,800 -80.9 473,000
7 472,400 8.8 13,000 20.3 485,400
8 438,500 -4.6 1,500 -84.5 440,000
9 425,300 -3.6 5,900 -33.2 431,200
10 440,200 7.3 9,950 -19.1 450,150
11 412,200 -8.9 4,100 -68.1 416,300
12 392,600 7.5 7,650 20.9 400,250
19/1 377,900 -4.6 3,200 -45.4 381,100
2 376,200 1.8 6,650 -80.5 382,850
3 338,500 -18.6 4,600 -56.5 343,100
4 391,900 -9.3 10,000 49.9 401,900
5 376,100 -12.0 7,350 -10.7 383,450

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
日建連の5月受注額約7,623億円(前年同月比19.8%減)
民間受注量5,181億円(同25.2%減)

日本建設業連合会(日建連)が6月26日に発表した会員企業97社の2019年5月受注工事総額は7,622億8,300万円(前年同月比19.8%減)となり、前年同月比で2ヵ月連続の大幅減となった。うち民間工事は5,180億8,600万円(同25.2%減)となり、同2ヵ月連続の大幅減となった。官公庁工事は2,033億1,800万円(同15.0%減)となり、同2ヵ月連続減となった。

国内工事は7,251億9,800万円(同22.4%減)となり、同2ヵ月連続の大幅減となった。民間工事の5,1809億8,600万円のうち、▽製造業が1,156億7,800万円(同43.8%減)となり、同3ヵ月目で大幅減となり、▽非製造業は4,024億0,800万円(同17.3%減)となり、同2ヵ月連続の大幅減となった。

官公庁工事の2,033億1,800万円のうち、▽国の機関が1,346億1,600万円(同13.1%減)に、同2ヵ月連続減となり、▽地方の機関は687億0,200万円(同18.4%減)となり、同5ヵ月目で減少に転じた。▽その他が37億9,400万円(同52.4%増)となり、同5ヵ月目で増加に転じた。▽海外工事は370億8,500万円(同137.1%増)となり、同1ヵ月で大幅増となった。

一方、19年5月分の地域ブロック別受注工事額は、▽北海道315億円(前年同月比40.7%減)となり、前年同期比で2ヵ月連続の大幅減となる。▽東北627億9,000万円(同45.7%減)となり、同2ヵ月連続の大幅減となる。▽関東3,210億4,000万円(同14.3%減)となり、同2ヵ月連続減となる。▽北陸163億9,500万円(同38.7%減)の大幅減となり、同4ヵ月連続減となった。

▽中部622億8,600万円(同17.9%減)となり、同2ヵ月連続減となる。▽近畿1,490億6,800万円(同12.3%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽中国260億9,400万円(同14.9%減)となり、同2ヵ月連続減となる。▽四国132億4,700万円(同32.2%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。▽九州427億8,300万円(同37.4%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。4月に続き、全地域で前年同月比減となった。

19年5月の粗鋼生産は867.6万トン(前年同月比4.6減)
4月の普通鋼鋼材建築用52.9万トン(前年同月比6.4%減)

日本鉄鋼連盟が6月21日に発表した2019年5月の鉄鋼生産は、銑鉄生産は654.0万トン(前年同月比3.9%減)となり、前年同月比で2ヵ月ぶりの減少となった。粗鋼生産は867.6万トン(同4.6%減)となり、同9ヵ月連続減となった。

炉別生産では、▽転炉鋼が658.7万トン(同4.4%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少、▽電炉鋼が208.8万トン(同5.3%減)となり、同3ヵ月連続減となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が661.0万トンと(同2.4%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少、▽特殊鋼が206.5万トン(同11.1%減)となり、同6ヵ月連続減となった。

▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は738.9万トン(同6.2%減)となり、同11ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は574.3万トン(同5.5%減)となり、同6ヵ月連続減となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は164.7万トン(同8.7%減)となり、同5ヵ月連続減となった。

4月の普通鋼鋼材用途別受注量による▽建築用が52万9,023トン(前年同月比6.4%減)となった。うち▽非住宅用が36万9,091トン(同9.6%減)、▽住宅用が15万9,932トン(同1.7%増)となった。

19年4月溶接材料の出荷量2万1,399トン(前年同月比4.1%増)
生産量2万1,234トン(前年同月比3.9%増)

日本溶接材料工業会が発表した2019年4月の溶接材料生産・出荷・在庫実績によると、生産量は2万1,234トン(前年同月比3.9%増)の7ヵ月連続増となった。出荷量は2万1,399トン(同4.1%増)となり、同7ヵ月連続増となった。在庫量は1万7,7616トン(同0.7%増)となり、同3ヵ月連続増となった。

生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)は8,551トン(前年同月比10.1%増)となり、前年同月比7ヵ月連続増となった。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は7,335トン(同3.1%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽被覆アーク溶接棒は2,432トン(同6.7%減)となり、同2ヵ月連続減となった。その他を含む生産量計は2万1,234トン(同3.9%増)となった。

出荷量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が8,468トン(同6.4%増)となり、同7ヵ月連続増となった。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は7,411トン(同2.9%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽被覆アーク溶接棒は2,508トン(同2.7%増)となり、同3ヵ月目で増加となった。その他を含む出荷量計は2万1,399トン(同4.1%増)となった。

在庫量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が4,680トン(同3.6%増)となり、同27ヵ月ぶりの増加となった。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は6,915トン(同2.5%増)となり、同3ヵ月連続増となった。▽被覆アーク溶接棒は2,926トン(同15.1%減)となり、同7ヵ月連続減となった。その他を含む出荷量計は1万7,616トン(同0.7%増)となった。

 

 

【建築プロジェクト】
長崎市新庁舎のS造・19階、延床5万超平米
清水建設・西海建設・長崎土建JV、8月着工

長崎市は新庁舎(長崎市魚の町4-1ほか)建築工事の施工者を清水建設・西海建設・長崎土建工業所JVに決め、近々着工する。新庁舎の建設地は現県庁舎別館の東南側に位置し、敷地の四方を市道に囲まれ、北東側は桜町通り、東南側は公会堂通りに面した立地。敷地面積約6,600平方メートルに、建築面積約4,100平方メートルとなっている。

庁舎規模は、S造・一部RC造・SRC造、地下1階・地上19階(低層部5階)・塔屋1層建て、延べ床面積約5万1,747平方メートル。北東側(桜町通り)に高さ90メートルの高層棟(19階)となり、南西側(興善町桜町1号線)に高さ30メートルの低層棟(5階)の配置となっている。実施設計は山下設計・建友社設計・有馬建築設計事務所JVが担当し、2022年8月完成をめざす。

庁舎内部は、地下階は駐車場で、地上1階はエントランスと総合相談窓口など、2階は子育てワンストップ窓口に多目的スペースなど(1~3階にエスカレート設置)。3階~4階は専門的な相談窓口、レストランや売店・金融機関などを配置し、5階は講堂・委員会室。6階は機械室となり、7階~18階は執務室となる。19階は一部屋上庭園を配置し、展望室・機械室。塔屋部は野外機器場と屋上にヘリポートとなっている。

庁舎デザインは高層棟には透明ガラス(複層ガラスFIX窓)を採用し、より採光を活用する。また、免震効果を高めるため木質耐震パネルを用いた「外殻ワッフル構造」により、木質の良さ活かした外観としている。低層棟の外観や広場などには、長崎をイメージさせるレンガや石材など使い、市民に親しまれ、街のシンボルになるような環境づくりをめざすとしている。

 

【雑論・正論】
業界紙の記者冥利

業界紙記者の特権は、浅学な若年にもかかわらず団体や企業のトップに取材(面談)し、団体の事業計画・方針や業界論を聴きだし、企業では売上高・収益率の目標や製品開発、さらに同業との競合など生々しい話にもなる。また人物紹介の取材では、生い立ちや学歴・趣味などに言及することで、年代を超えて近親感を持つこともある。

競争相手(コンペティター)の話では、切磋琢磨するライバルであったり、仕事を分け合う共存共栄の仲だったり、苛烈な商売敵であったりとさまざまである。狭い業種・業界での苛烈な競争となれば共倒れになる恐れさえある。

大阪勤務の1984年春、大手商社の鋼材物流センター竣工式典で、東海地区と中国地区のビルトH形鋼(BH)会社の2人から「大阪の某社が極端な安値で、BH市況を乱している。同業同士では話が進まない」と相談を受けた。余談だが、鋼板を溶接でH形加工し、ロールHにないサイズやハンチの異形Hを製作するのがBH加工会社。

早速、近畿周辺の主要なBH加工会社を調べてみると7~8社が判明した。どの会社も初めて訪問のためか口が重たかったが、同業他社に話が及ぶと競争心や敵愾心が現れ、饒舌になった。そして、老舗と新興業者が熾烈な値引き合戦をしている実態が分かった。どこも赤字受注では一致し、市況低迷策が見いだせないままだった。

その年の夏、鋼材商社のH興業や前述2社のK鉄工(愛知)、N鉄工所(岡山)の協力により、近畿の主だったBH会社の社長・役員が集まり、「お互い胸襟を開き、受注単価のガイドラインぐらい話し合をしょう」と、初の会合を行った。<案ずるより産むがやすし>で、名刺交換から始まった話し合いは、加工費・利益率・納期問題など共通課題や受注での理不尽さなどの同じ悩みを知ると、敵愾心やライバル心が薄れ、互い率直な意見が交わされた。

その場で、BH市況の安定化には継続的な情報交換が必要とのことで<ビルトH懇談会>を設立。会合は隔月ごとの開催で、各社の受注価格のサイズ・異形別など高値・安値を無記名で事務局(小生宛て)報告し、その集計した平均値を公表。参加者のみの単価だが予想超える成果となる。暗中模索だった市況にも光明がさしてきた。

手の内を明かすことで得られるメリットを知る。同業者との人的交流が仕事を融通し合うこともでき、<呉越同舟>の成果が東日本地域のBH業界にも波及し、99年東西が一本化し<全国ビルトH工業会>設立につながる。

現在、国土交通大臣指定性能評価機関の<BH製作認定>を32工場が取得する。地方経営者2人による市況安定の声に押されて奔走し、懇談会設立から全国団体へと発展した。業界紙記者の役割のひとつでもある。

【加藤 文雄】