スノウチニュース<№183> 令和2年1月

【鉄骨需要月別統計】
11月鉄骨需要量35万5,650トン(前年同月比14.6%減)
S造は35万1,000トン(前年同月比14.8%減)

国土交通省が12月26日発表した「建築物着工統計調査」の2019年11月着工総面積は10,067千平方メ―トル(前年同月比10.1%減)の前年同月比で3ヵ月連続減となった。10,000千平方メートル超えでは8ヵ月連続のとなった。

▽建築主別は、▽公共建築物が461千平方メートル(同10.0%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減となった。▽民間建築物は9,605千平方メートル(同10.1%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減となった。

▽用途別は、▽居住建築物は6,317千平方メートル(同10.3%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は3,750千平方メートル(同9.7%減)となり、同4ヵ月連続減となった。

▽構造別は、▽鉄骨建築のS造は3,510千平方メートル(同14.8%減)の大幅減となり、同4ヵ月連続減となった。▽SRC造は93千平方メートル(同12.4%増)となり、少面積ながら前年比では増加となった。

一方、▽RC造は1,657千平方メートル(同14.9%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽W造は4,728千平方メートル(同4.7%減)となり、同4ヵ月連続減となった。

▽鉄骨需要換算では、S造は35万1,000トンとなり、SRC造は4,650トンとなった。鉄骨造計は前月比で4.8%減、前年同月比では14.6%減の35万5,650トンとなり、同3ヵ月連続で30万トン台となった。

18年11月-19年11月 鉄骨需要量の推移

S 造 前年比 SRC造 前年比 鉄骨造合計
18/ 11 412,200 -8.9 4,100 -68.1 416,300
 12 392,600 7.5 7,650 20.9 400,250
19/1 377,900 -4.6 3,200 -45.4 381,100
 2 376,200 1.8 6,650 -80.5 382,850
 3 338,500 -18.6 4,600 -56.5 343,100
 4 391,900 -9.3 10,000 49.9 401,900
 5 376,100 -12.0 7,350 -10.7 383,450
 6 428,300 -9.1 3,750 109.3 432,050
 7 475,600 0.7 6,550 -49.9 482,150
 8 421,100 -4.0 2,500 64.5 423,600
 9 348,300 -18.1 7,600 29.7 355,900
 10 367,900 -16.4 5,500 -44.5   373,400
 11 351,000 -14.8 4,650  12.4   355,650

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
日建連の11月総受注約1兆0,328億円(前年同月比1.2%減)
民間工事6,651億円(前年同期比15.7%減)

日本建設業連合会(日建連)が12月26日に発表した会員企業96社の2019年11月受注工事総額は1兆0,327億7,300万円(前年同月比1.2%減)となり、1兆円台水準に戻ったものの、前年同月比では1ヵ月で減少となった。うち民間工事は6,650億7,100万円(同15.7%減)となり、同1ヵ月で減少となった。官公庁工事は2,050億3,400万円(同5.8%減)となり、同2ヵ月連続減となった。

国内工事は8,718億9,800万円(同13.4%減)となり、同1ヵ月で減少となった。民間工事の6,650億7,100万円のうち、▽製造業が1,402億4,900万円(同2.8%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽非製造業は5,248億2,200万円(同18.5%減)となり、同1ヵ月で減少となった。

官公庁工事の2,050億3,400万円のうち、▽国の機関が1,530億6,400万円(同8.2%増)となり、同3ヵ月連続増となった。▽地方の機関は519億7,000万円(同31.9%減)の大幅減となり、同4ヵ月連続減となった。▽その他が17億9,300万円(同302.9%増)と低額割りながら3倍増となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽海外工事は1,608億7,500万円(同321.7%増)となり、8ヵ月ぶりの1千億円台水準となった。

19年4~11月までの合計では、▽総受注工事は8兆1,315億4,400万円(前年同期比7.2%減)▽民間工事は5兆8,405億8,700万円(同7.8%減)▽官公庁工事は1兆8,386億7,000万円(同10.3%減)▽海外工事は4,191億8,800万円(同19.1%増)となった。

一方、11月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道273億7,800万円(前年同月比10.3%減)の大幅減となり、前年同期比で3ヵ月連続減となる。▽東北382億8,500万円(同47.2%減)の大幅減となり、同4ヵ月連続減となる。▽関東4,072億3,100万円(同15.2%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽北陸511億0,700万円(同129.1%増)と低金額ながら大幅増となり同1ヵ月で増加となった。

▽中部719億8,400万円(同29.5%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。▽近畿1,481億2,000万円(同8.7%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となる。▽中国561億2,900万円(同15.1%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となる。▽四国78億5,100万円(同63.6%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少となる。▽九州638億3,100万円(同30.7%増)の大幅増となり、同4ヵ月ぶりの増加となる。

11月粗鋼生産は774.3万トン(前年同月比10.6減)
10月普通鋼鋼材の建築用50.4万トン(前年同月比9.7%減)

銑日本鉄鋼連盟が12月20日に発表した2019年11月の鉄鋼生産は、鉄生産は580.7万トン(前年同月比8.1%減)となり、前年同月比では4ヵ月連続減となった。粗鋼生産は774.3万トン(同10.6%減)となり、同5ヵ月連続減となった。粗鋼生産の1~11月までの合計は9,152.7万トン(前年同期比4.5%減)となった。

炉別生産では、▽転炉鋼が571.9万トン(同10.9%減)となり、同4ヵ月連続減、▽電炉鋼が202.4万トン(同9.7%減)となり、同9ヵ月連続減となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が591.7万トン(同9.2%減)となり、同5ヵ月連続減、▽特殊鋼が182.6万トン(同14.8%減)となり、同12カ月連続減となった。

▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は694.8万トン(同9.0%減)となり、同17ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は539.9万トン(同8.8%減)となり、同4ヵ月連続減となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は154.9万トン(同9.7%減)となり、同11ヵ月連続減となった。

一方、10月の普通鋼鋼材用途別受注量による▽建築用が50万3,832トン(同6.2%増)となった。うち▽非住宅用が36万2,052トン(同9.9%増)となり、▽住宅用が14万1,780トン(同2.3%減)となった。19年度4~10月の合計では、▽建築用が341万9,572トン(前年同期比12.1%減)、▽非住宅用が238万4,304トン(同13.7%減)、▽住宅用が103万5,268トン(同8.2%減)となった。

10月溶接材料の出荷量2万1,348トン(前年同月比6.5%減)
19年度(4~10月)出荷量14万8,878トン(前年同月比4.3%増)

日本溶接材料工業会が発表した2019年10月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)によると、生産量は2万2,375トン(前年同月比2.5%減)となり、前年同期比では1ヵ月で減少となった。出荷量は2万1,348トン(同6.5%減)となり、同1ヵ月で減少となった。在庫量は1万8,529トン(同6.1%増)となり、同2ヵ月連続増となった。なお、19年度(4~10月)の出荷量では14万8,878トン(前年同期比4.3%増)となった。

生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤが9,078トン(前年同月比4.6%減)となり、前年同月比では13ヵ月ぶりの減少となった。▽フラックス入りワイヤが8,090トン(同1.1%減)となり、微減ながら同1ヵ月で減少となった。▽被覆アーク溶接棒が2,322トン(同9.8%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。その他を含む生産量計は2万2,375トン(同2.5%減)となった。

出荷量の主な品種は▽ソリッドワイヤが8,512トン(同11.1%減)となり、同13ヵ月ぶりの減少となった。▽フラックス入りワイヤが7,792トン(同3.7%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽被覆アーク溶接棒が2,136トン(同11.1%減)となり、同3ヵ月連続減となった。その他を含む出荷量計は2万1,348トン(同6.5%減)となった。出荷量の減少は、五輪施設後の端境期による需要減が大きく響いているとみられ、年明け以降回復するとみられる。

在庫量の主な品種は▽ソリッドワイヤが5,220トン(同16.4%増)となり、同5ヵ月連続増となった。▽フラックス入りワイヤが7,016トン(同2.9%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽被覆アーク溶接棒が3,135トン(同5.2%増)となり、同13ヵ月ぶりの増加となった。その他を含む出荷量計は1万8,529トン(同6.1%増)となった。

財務省の貿易統計による10月の溶接材料の輸入量が6,472トン(前年同月比10.4%減)となり、また輸出量が2,904トン(同1.7%減)となった。

 

【建築プロジェクト】
梅田3丁目計画(旧大阪中央郵便局跡地)
地上39階・22万平米、竹中・西松・錢高JV

日本郵便、JR西日本、大阪ターミナルビル、JTBが建設計画する「梅田3丁目計画」の建設工事を竹中工務店・西松建設・錢高組JVが967億7,800万円で受注した。建設地は大阪市北区梅田3-2-4ほか。この計画は大阪中央郵便局、大弘ビル、アクティ西ビルを現在地で高さ約188メートルの超高層複合ビルに建て替える。

規模はS造・一部SRC造・RC造、地下3階・地上39階・塔屋2層建て、延べ床面積約22万7,000平方メートル。オフィスや劇場(約1200席)、商業施設、ホテル(約400室)などが入り、MICEニーズにも対応する。設計は日建設計が担当し、同計画のプロジェクトマネジメントは日本郵政不動産が行う。既存施設の解体は2020年7月着手し、本体工事は同年9月に着工し、全体完成は24年3月を目指す。

西日本最大級となるオフィスは基準階貸し室面積を約4,000平方メートル、総面積6万8,000平方メートルとし、商業施設は4層吹き抜けのアトリウムの周囲に配置して旧郵便局舎の一部保存に伴い曳家などし、保存・移設する。また、劇場の運営はMBSメディアホールディングスが担う。

JR高架下を貫通する通路で大阪駅に今後整備される新たな改札口と直結させる。この他、西梅田と大阪駅を結ぶガーデンアヴェニュー(地下通路)、2階レベルに整備する歩行者デッキで大阪駅のサウスゲートビルディングと直結するなど、周辺施設との回遊性を高める。

 

【雑論・正論】
国運の分岐点は?

「大きいことはいいことだ~」(作・出演、山本直純)のテレビCMが流れた1960年代は<いざなぎ景気>で沸いた時代。63年に<中小企業基本法>が制定し、翌年は東京五輪開催、為替管理撤廃、OECD加盟などから国際社会で認められ年である。その反動から<五輪特需終焉>や<証券不況>での大手企業の倒産劇もあった。

小西美術工芸社社長のデービッド・アトキンソン著『国運の分岐点』(講談社+α新書)は、「中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか」と題し、中小企業改革が日本再生の最終結論とするショッキングな定義をする。

アトキンソン氏は「先進国の中で日本は唯一成長率が一番悪いのは、64年に施行した中小企業基本法が起因している」と指摘する。過去にない勢いの<人口減少>を前提に考えれば、「デフレからいつまでたっても脱却できない」「この20年、先進国の給料は約1.8倍となっているが、日本は9%の減少」「中小企業は生産性を低くしている」。その根本原因は、99.7%を占める中小企業社員と4割を占める非正規社員の低賃金にあると断言する。

同氏は「64東京五輪時の産業構造を、20東京オリ・パラリンピックを契機に産業構造の転換ができるかどうかで、日本の未来は大きく変わってくる」と断言し、本書冒頭で提唱する<グランドデザイン>が急務と説いている。

その突破口は、中小企業改革である。「中小企業は<日本の宝>としてさまざまな恩恵を与えているが、そのぬるま湯に甘んじ、企業拡大の意欲を無くしているため、大企業に比べ低賃金で、しかも非効率、低生産のためGDP(国民総生産)を下げる要因になっている」。協業体・集約化を図るなど中小企業の減少しかないと啓発する。

<アトキンソン論>は、中小企業温存策が人口減・人手不足に対応できずに安易な<外国人労働者>に頼る。さらにGDP減と膨大な政府負債が国力低下を招き、そこに首都直下地震や大型台風などの大災害に見舞われれば「支援国はアメリカよりも、隣国の中国による支援になりかねない。そして属国化へ進むことになる」と指摘する。

これからは経済成長が鈍化し、確実に自然被害は増えてくる。領土・安保問題は大事だが、巨大災害や少子高齢化は待ったなしにくる。既に生産性は90年の世界9位から28位に低下している。10年先をみたら中小企業改革だけでなく、内部保留513兆円の課税や間接税制の改正、低賃金改革などの抜本的な法制化が急がれる。

アトキンソン論は、日本でのさまざまな体験から欧米人らしい大胆な分析と予測だが、GDPの低成長・人口減・低賃金などを考えれば納得する点も数多い。日本再生は<国運を決するグランドデザイン>が求められている。

【加藤 文雄】