スノウチニュース<№185> 令和2年3月

【鉄骨需要月別統計】
20年1月鉄骨需要量27万1,450トン(前年同月比28.8%減)
19年度(4~1月)計は388万7,600トン(前年同期比10.7%減)

国土交通省が2月28日発表した「建築物着工統計調査」の2020年1月着工総面積は7,988千平方メ―トル(前年同月比17.8%減)の大幅減となり、前年同月対比で5ヵ月連続減となった。10,000千平方メートル割れは3月以来の10ヵ月ぶりで、この十年では10年2月の8,641千平方メートに次ぐ低水準となった。

▽建築主別は、▽公共建築物が412千平方メートル(同3.4%増)となり、同5ヵ月ぶりの増加となった。▽民間建築物は7,576千平方メートル(同18.7%減)となり、同5ヵ月連続減となった。

▽用途別は、▽居住建築物は5,015千平方メートル(同12.7%減)となり、同5ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は2,973千平方メートル(同25.1%減)となり、同6ヵ月連続減となった。

▽構造別は、▽鉄骨建築のS造は2,661千平方メートル(同29.6%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少となった。▽SRC造は107千平方メートル(同65.9%増)となり、同1ヵ月で増加となった。

一方、▽RC造は1,641千平方メートル(同12.6%減)となり、同3ヵ月連続減となった。▽W造は3,529千平方メートル(同10.3%減)となり、同6ヵ月連続減となった。

▽鉄骨需要換算では、S造は26万6,100トンとなり、09年5月の26万3,300トン以来の低水準となった。SRC造は5,350トンとなった。鉄骨造計は前月対比では33.5%減となり、前年同月対比では28.8%減の27万1,450トンとなり、直近の需要量では09年5月の28万0,950トン以来の低水準となった。

19年度4月~20年1月ではS造は382万9,000トン、SRC造は5万8,600トンとなった。鉄骨造計では前年対比10.7%減の388万7,600トンとなった。19暦年に次いで19年度も500万トン割れが確実となった。

19年1月-20年1月 鉄骨需要量の推移

年/月 S造(TON) 前年比(%) SRC造(TON) 前年比(%) 鉄骨造計(TON) 前年比(%)
2019/1 377,900 -4.6 3,200 -45.4 381,100 -5.2
2 376,200 1.8 6,650 -80.5 382,850 -5.1
3 338,500 -13.6 4,600 -56.5 343,100 -14.7
4 391,900 -9.3 10,000 49.9 401,900 -8.4
5 376,100 -12.0 7,350 -10.7 383,450 -12.0
6 428,300 -9.1 3,750 109.3 432,050 -8.7
7 475,600 0.7 6,550 -49.9 482,150 -0.7
8 421,100 -4.0 2,500 64.5 423,600 -3.7
9 348,300 -18.1 7,600 29.7 355,900 -17.5
10 367,900 -16.4 5,500 -44.5 373,400 -17.1
11 351,000 -14.8 4,650 12.4 355,650 -14.6
12 402,700 2.6 5,400 -29.7 408,100 2.0
2020/1 266,100 -296 5,350 65.9 271,450 -28.8
年度計(19/4~20/1) 3,829,000 -10.7 58,600 -5.5 3,887,600 -10.7

(国土交通省調べ)

【建築関連統計】
20年度公共工事設計労務単価は全職種平均2.5%増
鉄骨工2万3,090円、溶接工2万5,590円

国土交通省は2月14日、2020年3月1日から適用する「公共工事設計労務単価」を発表した。全国全職種平均値(47都道府県、51職種)が前年度比2.5%増の2万0,214円(伸び率単純平均)となった。単価公表後の最高値を更新するとともに、公表後初めて2万円台を超えた。

今回の単価改定では、労働基準法改正で年間5日間の有給休暇取得が義務付けられたことを踏まえれば、日数分が加算されたことになる。法定福利費など事業主が負担する人件費は8,288円(必要経費平均)上乗せして単価が大幅に上昇した13年度以降、8年連続の引き上げとなったが伸び率では過去8年間で最小となったものの、それでも12年度の全国全職種の平均単価と比べると51.7%上昇している。

労務単価を設定した51職種のうち、主な建築工事の全国平均は▽溶接工が2万5,590円(うち最高額3万1,000円~最低額2万0,900円)▽鉄骨工が2万3,090円(同2万6,400円~同2万0,300円)▽鉄筋工が2万4,270円(同3万1,300円~同2万1,300円)▽型枠工が2万4,520円(同3万3,800円~同2万0,400円)▽とび工が2万4,590円(同2万7,700円~同2万1,700円)。

▽電工が2万0,460円(同2万5,500円~同1万7,200円)▽塗装工が2万4,070円(同2万8,300円~同1万9,800円)▽左官が2万4,240円(同3万0,500円~同1万9,900円)▽大工が2万4,630円(同2万9,300円~同2万0,900円)となっている。

労務単価には、事業主が負担する法定福利費、労務管理費、現場作業にかかる経費、または超過勤務手当など(平均額8,288円)は含まれていない。見積もり下請代金に必要経費分を必ず計上する。または下請代金から値引くことは不当行為となる。

この新労務単価は3月1日以降に契約する国交省、農林水産省の直轄工事に適用される。旧単価で入札した工事に新単価を反映する特例措置が適用される。

日建連の1月総受注約9,348億円(前年同月比21.8%減)
民間工事5,894億円(前年同期比20.7%減)

日本建設業連合会(日建連)が2月28日に発表した会員企業96社の2020年1月受注工事総額は9,347億6,600万円(前年同月比21.8%減)となり、前年同月比では1ヵ月で大幅減となった。うち民間工事は5,893億6,600万円(同20.7%減)となり、同1ヵ月で大幅減に転じた。官公庁工事は2,822億4,200万円(同17.8%減)となり、同1ヵ月で大幅減に転じた。

国内工事は8,731億0,600万円(同19.9%減)となり、同1ヵ月で大幅減となった。民間工事の5,893億6,600万円のうち、▽製造業が704億8,300万円(同59.0%減)と大幅減なり、同3ヵ月連続減となった。▽非製造業は5,188億8,300万円(同9.1%減)となり、同1ヵ月で減少となった。

官公庁工事の2,822億4,200万円のうち、▽国の機関が1,748億9,200万円(同30.4%減)の大幅減となり、同5ヵ月ぶりの減少となった。▽地方の機関は1,073億5,000万円(同16.5%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽その他が14億9,800万円(同60.4%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。▽海外工事は616億6,000万円(同41.5%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。

19年4~1月までの合計では、▽総受注工事は10兆6,623億8,800万円(前年同期比6.2%減)。▽民間工事は7兆6,310億4,000万円(同6.6%減)。▽官公庁工事は2兆4,437億3,000万円(同8.2%減)となる。▽海外工事は5,529億0,200万円(同10.8%増)となった。

一方、1月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道223億1,000万円(前年同月比71.8%減)となり、前年同期比で5ヵ月連続の大幅減。▽東北498億5,000万円(同61.9%減)となり、同1ヵ月で減少。▽関東3,744億7,000万円(同19.4%減)となり、同1ヵ月で減少。▽北陸535億円(同21.0%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。

▽中部1,004億3,200万円(同4.0%増)となり、同2ヵ月連続増。▽近畿1,671億8,500万円(同21.1%増)となり、同2ヵ月で大幅増。▽中国365億4,300万円(同11.8%減)となり、同4ヵ月連続の大幅減。▽四国113億9,100万円(同56.7%減)となり、同1ヵ月で大幅減。▽九州574億3,100万円(同25.5%増)となり、同3ヵ月連続の大幅増となる。

20年1月粗鋼生産778.4万トン(前年同月比8.0%減)
12月普通鋼鋼材の建築用45.7万トン(前年同月比11.9%減)

日本鉄鋼連盟が2月21日に発表した2020年1月の銑鉄生産は646.7万トン(前年同月比7.0%増)となり、前年同月比では6ヵ月ぶりの増加となった。粗鋼生産は824.4万トン(同1.3%増)となり、同7ヵ月ぶりの増加となった。

炉別生産では、▽転炉鋼が647.3万トン(同5.6%増)となり、同6ヵ月ぶりの増加、▽電炉鋼が177.1万トン(同12.0%減)となり、同11ヵ月連続減となった。

鋼種別生産では、▽普通鋼が636.2万トン(同3.5%増)となり、同7ヵ月ぶりの増加、▽特殊鋼が188.3万トン(同5.5%減)となり、同14ヵ月連続減となった。

▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は707.6万(同6.6%減)となり、同19ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は563.7万トン(同4.2%減)となり、同6ヵ月連続減となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は143.9万トン(同14.8%減)となり、同13ヵ月連続減となった。

12月の普通鋼鋼材用途別受注量による▽建築用が45万7,483トン(同11.9%減)となった。うち▽非住宅用が29万7,161トン(同19.3%減)、▽住宅用が16万0,322トン(同6.4%増)となった。

19暦年1~12月の合計では、▽建築用が591万2,873トン(前年同期比10.9%減)、▽非住宅用が408万0,596トン(同13.9%減)、▽住宅用が183万2,277トン(同3.6%減)となった。

12月溶接材料の出荷量2万1,619トン(前年同月比9.5%増)
19暦年の出荷量25万4,466トン(前年比3.8%増)

日本溶接材料工業会が発表した2019年12月の溶接材料実績によると、▽生産量が2万1,431トン(前年同月比8.7%増)となり、前年同期比では3ヵ月ぶりの増加となった。▽出荷量が2万1,619トン(同9.5%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽在庫量が1万7,709トン(同9.0%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。

生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤが8,743トン(前年同月比10.3%増)となり、前年同月比では3ヵ月ぶりの増加となった。▽フラックス入りワイヤが7,263トン(同2.1%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽被覆アーク溶接棒が2,370トン(同13.8%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加に転じた。その他を含む生産量計は2万1,431トン(同8.7%増)となった。

出荷量の主な品種は▽ソリッドワイヤが8,596トン(同8.9%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽フラックス入りワイヤが7,498トン(同4.1%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽被覆アーク溶接棒が2,519トン(同31.1%増)の大幅増となり、同5ヵ月ぶりの増加となった。その他を含む出荷量計は2万1,619トン(同9.5%増)となった。

在庫量の主な品種は▽ソリッドワイヤが4,728トン(同24.6%減)となり、同7ヵ月ぶりの減少となった。▽フラックス入りワイヤが7,265トン(同4.4%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽被覆アーク溶接棒が2,964トン(同0.9%減)となり、同2ヵ月連続減となった。その他を含む出荷量計は1万7,709トン(同9.0%減)となった。

19暦年(1~12月)の▽生産量が25万6,064トン(前年比3.8%増)となった。▽出荷量が25万4,466トン(同2.9%増)となり、うち▽ソリッドワイヤが10万2,737トン(同4.7%増)、▽フラックス入りワイヤが8万8,978トン(同4.4%増)、▽被覆アーク溶接棒が2万7,886トン(同1.1%減)となった。

 

【建築プロジェクト】
森トラスト・NTT都市開発の「赤坂2丁目プロジェクト」
S造・地上43階建・21万平米/大成建設のD・Bで3月着工

森トラストとNTT都市開発は東京・港区赤坂1丁目および2丁目で「赤坂2丁目プロジェクト」(敷地面積約1万5,750平方メートル)の超高層複合ビルを大成建設(設計・施工)で3月着工し、24年8月完成をめざしている。

同プロジェクトは、東京圏国家戦略特別区域における「国家戦略都市計画建築物等整備事業」として、内閣総理大臣の認定を受けている。

同ビルの規模は、S造・一部SRC造、地下3階・地上43階・塔屋2層建て(高さ210メートル)、延べ床面積約20万9,700平方メートル。用途はオフィス、ホテル、サービスアパート、店舗、展示施設、診療所、駐車場など。展示施設では、伝統や歴史文化と全国各地の魅力を伝える新たな文化発信拠点にしていく方針。

港区内には大使館などが点在しており国際性が高く、また赤坂氷川神社や大名屋敷跡など江戸文化を今に伝える名所が点在しており、赤坂文化資源の「江戸型山車」(えどがただし)の修復・展示をし、国際水準の滞在機能や訪日外国人のニーズを満たす歴史・文化や観光の発信施設などを整備する。

同エリアの国際競争力強化を推進でき、さらに歩行者ネットワークの強化や地形を活かした緑豊かなオープンスペースの創出にも取り組むとしている。

 

【雑論・正論】
意識改革の「全構協」

昨夏以来の<五輪競技施設>特需の反動と、想定外だった<高力ボルト不足>や<プレスコラム遅延>の影響から2019暦年の鉄骨需要量が前年比9.0%減の472万トンとなり、7年前の459万トンに次ぐ低水準となった。資材不足が解消されつつも後遺症もあり、大方の需要予測は「この端境期は今秋まで続く」とみられている。

鉄骨需要量推移は90年代の700万トンから1,100万トン台をピークに、以降は700~500万トン台へと縮小してきた。急激な需要増減の余波から企業規模の大小にかかわらず、古い経営体質の鉄骨ファブが淘汰され、鉄骨業界に<意識改革>が芽生えた。ここ数年、負債1億円超の倒産は数件と激減し、昨年は1件のみであった。

その意識改革の出頭は、<鍛冶屋気質>と言われたKKD(勘・経験・度胸)のどんぶり勘定経営からの脱却にあった。かつて老舗・名門ファブと言われた企業が退場し、新・旧ファブを問わず<大臣認定工場グレード>に見合った受注量と要求品質に応えてきた成果でもある。この数年で鉄骨業界は成熟した<受注産業>に変貌した。

意識改革を主導してきたのが全国鉄構工業協会(全構協)である。2020年度の主な活動方針をみると、▽品質管理体制の強化▽人材の育成と教育▽需要増への的確な対応▽中期課題への取り組みである。中でも、関連団体と連携する「鉄骨技術者教育センター」による技術・技能資格取得をはじめ、▽女性活躍の促進▽研修会や人材育成マニュアル▽外国人労働者や働き方改革への対応など、<人材教育優先>の事業を打ち出している。

かつて全構協会員の多くは、中・高層建築物件を受注する団体だった。昨今では超高層建築物件を大手ファブと共同受注する会員も増えてきており、超高層建築向けの鋼材の手当を容易するための「高規格材鉄骨製作支援制度」の創設や、受注産業の弱点でもある受注量(山積み)確保となる「中期課題への取り組みと市場環境の変化への対応」、さらには大臣認定工場に相応しい「倫理意識の徹底」などキメ細かい対策・対応策を講じている。

このように変貌し全構協は、創立47年(1973年設立)の歴史と、さまざまな遍歴があってのことだが、特筆されるのは米森昭夫会長らによる5期10年にわたる執行部の一貫した<人材教育方針>に負うところが大きい。

20年度通常総会の改選期で米森会長の続投が確約されている。とかく長期体制が批判されがちだが、こと鉄骨業界での米森体制6期目は需要増減に左右されない<市況価格制>の確立が、<働きやすいファブ業界>への集大成にある。このことが人手不足を解消につながり、若年層が競い合う就職先になれることに期待したい。

【加藤 文雄】