スノウチニュース<№187> 令和2年5月

【鉄骨需要月別統計】
3月鉄骨需要量36万8,750トン(前年同月比7.5%増)
19年度計は456万6,800トン(前年度比10.1%減)

国土交通省が4月30日発表した「建築物着工統計調査」の2020年3月着工総面積は9,837千平方メ―トル(前年同月比1.3%減)の微減となり、前年同月対比で7ヵ月連続減となった。10,000千平方メートル割れは3ヵ月連続となった。
▽建築主別は、▽公共建築物が398千平方メートル(同13.0%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽民間建築物は9,439千平方メートル(同0.7%減)の微減となり、同7ヵ月連続減となった。
▽用途別は、▽居住建築物は6,119千平方メートル(同7.7%減)となり、同7ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は3,718千平方メートル(同11.5%増)となり、同8ヵ月ぶりの増加となった。
▽構造別は、▽鉄骨建築のS造は3,638千平方メートル(同7.5%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽SRC造は99千平方メートル(同7.7%増)の低水準ながら、同3ヵ月連続増となった。
一方、▽RC造は1,795千平方メートル(同14.4%減)となり、同1ヵ月で減少に転じた。▽W造は4,246千平方メートル(同1.9%減)となり、同8ヵ月連続減となった。
▽鉄骨需要換算では、S造は36万3,800トンながら低水準値となった。SRC造は4,950トンとなった。鉄骨造計は前月対比では11.8%増となり、前年同月比では7.5%増の36万8,750トンとなり、30万トンの低水準となった。
19年度計では、S造は449万2,800トン(前年度比10.2%減)、SRC造は7万4,000トン(同1.0%増)となった。鉄骨造計では前年対比10.1%減の456万6,800トンとなった。11年度の476万トンに次ぐ低水準となった。

19年3月-20年3月 鉄骨需要量の推移

年/月 S造(TON) 前年比(%) SRC造(TON) 前年比(%) 鉄骨造計(TON) 前年比(%)
2019/3 338,500 -13.6 4,600 -56.5 343,100 -14.7
4 391,900 -9.3 10,000 49.9 401,900 -8.4
5 376,100 -12.0 7,350 -10.7 383,450 -12.0
6 428,300 -9.1 3,750 109.3 432,050 -8.7
7 475,600 0.7 6,550 -49.9 482,150 -0.7
8 421,100 -4.0 2,500 64.5 423,600 -3.7
9 348,300 -18.1 7,600 29.7 355,900 -17.5
10 367,900 -16.4 5,500 -44.5 373,400 -17.1
11 351,000 -14.8 4,650 12.4 355,650 -14.6
12 402,700 2.6 5,400 -29.7 408,100 2.0
2020/1 266,100 -296 5,350 65.9 271,450 -28.8
2 300,000 -20.2 10,400 56.6 310,400 -18.9
363,800 7.5 4,950 7.7 368,750 7.5
暦年計(20/1~3) 929,900 -14.9 20,700 43.3 950,600 -14.1
年度計(19/4~20/3) 4,492,800 -10.2 74,000 1.0 4,566,800 -10.1

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
日建連の3月総受注額3兆2,704億円(前年同月比20.3%減)
民間工事は2兆2,517億4,900万円(同28.0%減)

日本建設業連合会(日建連)が4月27日に発表した会員企業96社の2020年3月受注工事総額は3兆2,704億1,700万円(前年同月比20.3%減)の大幅減となり、前年同月比では1ヵ月で減少に転じた。うち民間工事は2兆2,517億4,900万円(同28.0%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減となった。官公庁工事は7,688億0,300万円(同7.4%減)となり、同1ヵ月で減少に転じた。
国内工事は3兆0,211億8,400万円(同23.7%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少となった。民間工事の2兆2,517億4,900万円のうち、▽製造業が3,339億7,600万円(同1.0%増)の微増ながら、同2ヵ月連続増となった。▽非製造業は1兆9,177億7,300万円(同31.4%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減となった。
官公庁工事の7,688億0,300万円のうち、▽国の機関が5,036億3,300万円(同16.0%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽地方の機関は2,651億7,000万円(同14.9%増)となり、同4ヵ月連続増となった。▽その他が6億3,200万円(同22.0%増)の低水準ながら、同2ヵ月連続増となった。▽海外工事は2,492億3,300万円(同70.6%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。
一方、3月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道1,804億0,600万円(前年同月比11.4%増)のとなり、前年同期比で7ヵ月ぶりの増加。▽東北2,280億1,200万円(同6.3%減)となり、同1ヵ月で減少。▽関東1兆2,788億9,800万円(同43.6%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少。▽北陸1,246億円8,300万円(同26.8%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。
▽中部3,222億9,400万円(同25.7%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増。▽近畿5,118億5,200万円(同6.8%減)となり、同4ヵ月ぶりに減少。▽中国1,176億4,300万円(同5.8%増)となり、同6ヵ月ぶりの増加。▽四国483億4,200万円(同70.1%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増。▽九州2,090億4,000万円(同13.3%減)となり、同2ヵ月連続減となる。


日建連の19年度総工事受注額15兆1,410億円(前年度比9.1%減)
地域ブロック別受注額14兆3,189億円(前年度比10.5%減)

2019年度の総工事受注額は15兆1,409億9,900万円(前年度比9.1%減)、国内工事受注額は14兆3,188億6,100万円(同10.5%減)となった。民間工事は10兆7,158億3,100万円(同11.8%減)のうち、▽製造業は2兆1,454億9,600万円(同5.3%減)▽非製造業は8兆5,703億3,500万円(同13.3%減)となる。
官公庁は3兆5,641億8,200万円(同6.3%減)のうち、▽国の機関は2兆2,473億5,600万円(同11.2%減)▽地方の機関は1兆3,168億2,600万円(同3.5%増)▽その他は388億4,800万円(同14.8%増)となる。海外工事は8,221億3,600万円(同24.0%増)となった。
2019年度の地域ブロック別の総受注工事額は、▽北海道5,975億8,700万円(前年度比18.7%減)の大幅減。▽東北1兆0,380億4,000万円(同27.2%減)の大幅減。▽関東6兆4,922億7,500万円(同15.1%減)の大幅減。▽北陸5,654億円7,100万円(同8.4%増)の増加となる。
▽中部1兆3,439億7,400万円(同4.8%減)の減少。▽近畿2兆3,726億3,900万円(同4.1%増)の増加。▽中国6,033億4,400万円(同0.5%増)の微増。▽四国2,322億5,300万円(同4.2%増)の減少。▽九州1兆0,733億0,700万円(同4.7%減)の減少となる。


*日本鉄鋼連盟は4月22日公表の3月鉄鋼生産統計は、
「4月7日付の政府による緊急事態宣言および新型コロナウイルス感染拡大に鑑み、
統計資料公表は当面の間、延期」との発表のため一時休載し、統計公表しだい掲載いたします。


2月普通鋼鋼材の建築用40.3万トン(前年同月比16.0%減)
19年度4~2月では521万4,577トン(前年同期比11.8%減)

日本鉄鋼連盟が4月28日に一部発表した2月の用途別受注統計のうちの普通鋼鋼材では、▽建築用は40万2,819トン(同16.0%減)となった。うち▽非住宅用が28万1,627トン(同10.2%減)、▽住宅用が12万1,192トン(同27.0%減)となった。
19年度4~2月の合計では、▽建築用が521万4,577トン(前年同期比11.8%減)、▽非住宅用が363万1,401トン(同12.7%減)、▽住宅用が158万3,176トン(同9.8%減)となった。


*日本溶接材料工業会の2月、3月溶接材料実績統計は、緊急事態宣言により、
収集活動ができないため一時休載し、解除後に掲載いたします。

【建築プロジェクト】
品川開発プロジェクト第1期(1街区~4街区)
S造・SRC造・RC造、地上31階建など5棟構成

 JR山手線・京浜東北線の新駅「⾼輪ゲートウェイ駅」が3月14日に開業を機に、JR東日本は駅周辺のまちづくりに始動した。「グローバルゲートウェイ品川」のコンセプトのもと、鉄路跡地含む港区芝浦4丁目・三田3丁目・港南2丁目、高輪2丁目3地区の「品川開発プロジェクト第1期」が、来年5月に着工される。同プロジェクトは、品川駅北周辺地区の都市計画を国家戦略特別区域会議および諮問会議を経て「都市計画決定」認定を受けている。
開発する各街区の建設概要(着工順)は、▽4街区(オフィス・ホテル・集会場・物販・新食店舗・駐車場/港南・高輪地区)は、S造・一部SRC造・RC造、地下3階・地上30階建てのツインタワー、延べ床面積約46万平方メートル。▽1街区(マンション・学校・飲食店舗・駐車場/三田地区)は、RC造・一部S造、地下3階・地上45階建て、同14万9,000平方メートル。
▽3街区(オフィス・物販・飲食店舗・駐車場・地域冷暖房施設/港南地区)は、S造・一部SRC造・RC造、地下5階・地上31階建て、同21万1,000平方メートル。▽2街区(劇場・展示場・駐車場/芝浦地区)は、SRC造・S造・一部RC造、地下4階・地上6階建て、同3万1,000平方メートルの構成となる。4街区全体の総延べ床面積約85万1,000平方メートル。
設計者はJR東日本建築設計事務所・JR東日本コンサルタンツ・日本設計・日建設計JV。施工者は未定。第1期の全体工期は21年5月着工~25年3月完成(各街区着工は4街区21年5月、1街区21年6月、3街区21年10月、2街区21年10月)。
各街区の建物を「日本列島の島々」に見立て、「アーキペラーゴ(列島)」を創出。品川周辺は、かつて海岸線であった場所の記憶を想起させる滑らかなフローのような歩行者ネットワークを整備し、低層部は各建物の豊かな緑を連ね、都市に緑の丘を構築する。
また、高層部は頂部に統一した動きをつくり、分節で強調した建物コーナーを新駅前広場や結節空間に向けることで建物間のつながりを持たせ、各建物が個性を持ちながらも一体感を表現する。
高輪ゲートウェイ駅前は、「エキマチ一体まちづくり」の象徴として、和を感じられるデザインの新駅と、 緑豊かで滑らかな曲線を持つ4街区建物によってつくり出される「360度の広場空間」を形成する。

連載/あの人、この人

【はじめに】 新型コロナウイルス禍は国境を閉ざし、サプライチェーンを寸断し、経済・産業を未曽有の危機に直面されている。コロナ禍を防ぐには、一人ひとりが自粛し、密閉・密集・密接を避けなければならない。だが、社会生活は人と人との交わりであり、本能でもあるため、極めて困難ではあるが感染防止のため3密厳守である。近いうちに特効薬・予防ワクチン開発により「収束」するが、コロナ禍は社会構造に変革をもたらすことになるだろう。
今回から連載する「あの人、この人」は、私(ペンネーム・中井 勇)が業界紙記者・専門誌編集38年にわたって、さまざまな企業人との出会いや交流、個人的な付き合いがあった。その中でも、「強烈な個性の人や印象深い人」「記憶に残る人」「良き思い出の人」などによって人生の糧にしてきた。その邂逅とエピソードを交えた人物像を回顧する。

【1】
社運を賭けた製品開発

1986年の夏。建築用ブレースなど建築資材メーカーのY専務の取材後、「当社のユーザーである浜松の鉄骨ファブリーター・S鐵工所が鍛造製のダイアフラムを開発したが、どうも浜松市建築指導課が認めてくれなくて困っているらしい。S社長に連絡しとくから、相談に乗ってあげてくれないか」と言われた。早速、紹介された浜松市のS鐵工所に出向いた。
浜松市はヤマハやホンダなど産業基盤がしっかりしていることもあり鉄骨ファブが群雄割拠する。S鐵工所は月産能力300トン規模の工場とみた。応接室の壁には発明を誇示するかのように幾つもの特許証明書が掲げている。気さくに向かい入れてくれたS社長は50代の温厚そうな人物に見えた。
業界話が一段落し本題に入ると、鍛造製の「ST型ダイアフラム」(コラム200ミリ角用)をテーブルに置き、S社長の熱弁がはじまった。一見温厚に見えたが、一途な性格が徐々に出てくる。「浜松市の建築指導課主事はこのような製品は『単なるダイアフラムではないので、大臣認定を取らなければ認められない』と言うが、厚鋼板と同じSM50A材で、かつ裏板金が不要な製品がなぜ認められないか不思議だと思いませんか」と畳み掛けてくる。S社長は見かけによらず熱血漢だった。
後日、浜松市の指導課に取材を申し込んだところ「個別案件での取材はお断りします」と丁寧な取材拒否であった。S社長の話から推測する浜松市の見解は、鍛造品であっても鋼種、板厚などに問題なければダイアフラムとして認めるが、裏当て金との一体製品は単なるダイアフラムでなくなる。そこで大臣認定が必要になる、との解釈とみた。
これに対して、S社長はST型ダイアフラム(特許申請中)の特徴は、ダイアフラムと裏当て金機能を一体化することで、平鋼の裏当て金が不要、柱のコラム開先加工が不要、さらに梁のスカラップも不要になる。施工性アップ、コストダウン、品質向上となり、鉄骨建築の安全性につながるとしている。厚鋼板と同様に認めても良いのでは、一歩も譲らない。
どうして大臣認定を取得しないのかには、「認定申請(日本建築センター)となれば膨大な実験データが必要になり、さらに認可に2~3年もかかる。中小企業では資金的に人的余裕もない。小型物件や小規模ファブは開先も取らず、裏当て金も付けない鉄骨を建てている。むしろ、そうした問題解決になる製品なのに、行政は一般構法として認めないのか」と、歯ぎしりする。
S社長の熱意を何とか具現化させたいと、かねてからいろいろ尽力して頂いていた京都大学・建築学科K教授に相談する。K教授は大いに興味を示した。後日、K助教授と研究室のR助手と伴い、S社長と会談が実現し、京大K研究室による実大実験することで合意する(後にR助手の実験成果は日本建築学会大会の梗概集で発表している)。気を良くしたS社長は市建築指導課に「京大が性能を認めた」と報告に行くも、市方針は大臣認定品にすべきとの見解では変わらなかった。
S社長の市販への熱意は高まり、京大をはじめ関係者を参集し、「ST型ダイアフラム研究会」を立ち上げる。こうした一連の動に私も介在してきた間柄もあり、87年7月大手鋼材商社のH興業・大阪建材部を仲介し、販売代理店としての契約に至る。S社長の考案した画期的なダイアフラムは、京都大学のお墨付きと大手鋼材商社が販売窓口となり、幸先の良い滑り出しとなった。
ところが、S鐵工所・研究会、H興業の予想に反し売れ行きは思わしくなかった。コラム柱の需要拡大に伴い、既存構法でのロボット溶接化が促進する。さらに鉄骨二次加工による外販加工「サイコロ」(「タイコ」との呼称も)などの影響もあり、鍛造製ST型ダイアフラムの認知・普及には至らなかった。
後にパネルゾーン部位のさまざまな新構法や新製品が開発されたが、その時の需給事情や法令・規準改正などの問題から日の目をみる製品よりも、アイデアが良くても消え去った製品は多い。S社長の社運を賭けた「男のロマン」も消えたが、鉄骨構法に一石を投じた功績は大きい。

【中井 勇】