スノウチニュース<№188> 令和2年6月


【鉄骨需要月別統計】
4月鉄骨需要量36万2,750トン(前年同月比10.0%減)
S造35万2,800トン、SRC造9,950トン

国土交通省が5月29日発表した「建築物着工統計調査」の2020年4月着工総面積は9,992千平方メ―トル(前年同月比11.0%減)となり、前年同月対比で8ヵ月連続減となった。10,000千平方メートル割れは4ヵ月連続となった。
▽建築主別は、▽公共建築物が598千平方メートル(同2.2%増)の微増となり、同1ヵ月で増加となった。▽民間建築物は9,393千平方メートル(同11.7%減)となり、同8ヵ月連続減となった。
▽用途別は、▽居住建築物は5,957千平方メートル(同12.2%減)となり、同8ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は4,034千平方メートル(同9.1%減)となり、同1ヵ月で減少に戻った。
▽構造別は、▽鉄骨建築のS造は3,528千平方メートル(同10.0%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽SRC造は199千平方メートル(同0.0%)となった。
一方、▽RC造は1,999千平方メートル(同7.2%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽W造は4,172千平方メートル(同14.3%減)となり、同9ヵ月連続減となった。
▽鉄骨需要換算では、S造は35万2,800トンながら低水準値となった。SRC造は9,950トンとなった。鉄骨造計は前月対比では1.6%減となり、前年同月比では10.0%減の36万2,750トンとなり、30万トンの低水準となった。新型コロナウイルス感染拡大の影響でさらに需要減が危惧される。

19年4月-20年4月 鉄骨需要量の推移

年/月 S造(TON) 前年比(%) SRC造(TON) 前年比(%) 鉄骨造計(TON) 前年比(%)
2019/4 391,900 -9.3 10,000 49.9 401,900 -8.4
5 376,100 -12.0 7,350 -10.7 383,450 -12.0
6 428,300 -9.1 3,750 109.3 432,050 -8.7
7 475,600 0.7 6,550 -49.9 482,150 -0.7
8 421,100 -4.0 2,500 64.5 423,600 -3.7
9 348,300 -18.1 7,600 29.7 355,900 -17.5
10 367,900 -16.4 5,500 -44.5 373,400 -17.1
11 351,000 -14.8 4,650 12.4 355,650 -14.6
12 402,700 2.6 5,400 -29.7 408,100 2.0
2020/1 266,100 -296 5,350 65.9 271,450 -28.8
2 300,000 -20.2 10,400 56.6 310,400 -18.9
363,800 7.5 4,950 7.7 368,750 7.5
352,800 -10.0 9,950 0.0 362,750 -10.0
暦年計(20/1~4) 1,282,700 -13.6 30,650 25.4 1,313,350 -13.0
年度計(20/4~20/4) 352,800 -10.0 9,950 0.0 362,750 -10.0

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
20年度建設投資見通し1.7%減の60.7兆円に下方修正
消費増税と新型コロナで6年ぶりのマイナス

建設経済研究所と経済調査会は27日、5月推計の建設投資見通しを発表した。2019、20年度の投資総額(名目値)を1月の前回調査と比べ、19年度分で3,500億円減の61兆7,900億円(前年度比1.5%増)、20年度分が2兆5,200億円減の60兆7,500億円(同1.7%減)に下方修正した。19年10月の消費増税と新型コロナウイルスの影響で民間建設投資が落ち込みとしている。前年度比が減少に転じるのは14年度以来6年ぶりとなる。
今回調査は、災害復旧・復興や防災・減災、国土強靱化対策を柱とする19年度補正予算、20年度予算を踏まえて推計とした。この結果、政府建設投資は19年度が前回と比べ3,000億円増の21兆8,800億円(同5.7%増)とし、20年度が1,600億円増の22兆4,800億円(同2.8%増)と予測した。
民間非住宅建設投資は、19年度が1,300億円減の16兆9,700円(同0.6%減)とし、20年度が1兆3,500億円減の16兆2,700億円(同4.2%減)と予測した。住宅着工戸数は、19年度が88.4万戸(同7.3%減)とし、投資額は5,200億円減の16兆7,000億円(同1.3%減)。20年度が82.6万戸(同6.6%減)とし、投資額は1兆3,200億円減の15兆7,000億円(同6.0%減)と予測した。
消費増税による消費の反動減や東京五輪施設完了のほか、2月以降の新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、5月に下方修正した。今後、企業倒産の増加、外国人観光客減少での経済停滞や世界経済の減速に伴うサプライチェーンの分断による製造業の業績悪化が予想される。新型コロナ感染の収束如何によりさらに変化する。



日建連の4月総受注額約6,604億円(前年同月比13.7%減)
民間工事は4,267億6,700万円(同28.1%減)

日本建設業連合会(日建連)が5月27日に発表した会員企業96社の2020年4月受注工事総額は6,603億5,800万円(前年同月比14.8%減)となり、前年同月比では2ヵ月連続の大幅減となった。うち民間工事は4,267億6,700万円(同28.1%減)の大幅減となり、同4ヵ月連続減となった。官公庁工事は2,148億5,400万円(同29.3%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加に転じた。
国内工事は6,661億8,600万円(同13.7%減)となり、同2ヵ月連続の大幅減となった。民間工事の4,267億6,700万円のうち、▽製造業が776億2,300万円(同39.7%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。▽非製造業は3,491億4,400万円(同24.9%減)の大幅減となり、同4ヵ月連続減となった。
官公庁工事の2,148億5,400万円のうち、▽国の機関が1,495億5,400万円(同46.7%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。▽地方の機関は653億円(同1.7%増)の微増ながら、同5ヵ月連続増となった。▽その他が145億6,500万円(同3,784.0%増)の超大幅増となり、同3ヵ月連続増となった。▽海外工事は41億7,200万円(同71.9%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。
一方、4月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道560億3,000万円(前年同月比5.9%減)のとなり、前年同期比では1ヵ月で減少。▽東北390億4,600万円(同39.2%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減。▽関東2,735億6,000万円(同29.0%減)となり、同2ヵ月連続の大幅減。▽北陸141億円1,900万円(同29.2%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。
▽中部633億1,800万円(同1.2%増)の微増となり、同2ヵ月連続増。▽近畿1,091億8,400万円(同39.6%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加。▽中国394億1,600万円(同110.2%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増。▽四国128億8,600万円(同26.5%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少。▽九州486億2,400万円(同9.2%減)となり、同3ヵ月連続減となった。


3月粗鋼生産795万トン(前年同月比12.5%減)
19年度の粗鋼生産9,843万トン(前年度比4.3%減)

日本鉄鋼連盟が発表した2020年3月の銑鉄生産は600.5万トン(前年同月比10.0%減)となり、前年同月比では3ヵ月ぶりの減少となった。粗鋼生産は795万トン(同12.5%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が605.2万トン(同10.8%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少、▽電炉鋼が189.8万トン(同17.5%減)となり、同13ヵ月連続減となった。
鋼種別生産では、▽普通鋼が614.6万トン(同10.3%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少、▽特殊鋼が180.4万トン(同19.2%減)となり、同16ヵ月連続減となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は704.8万トン(同11.1%減)となり、同21ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は558.4万トン(同9.1%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は146.4万トン(同17.9%減)となり、同15ヵ月連続減となった。
2019年度の銑鉄生産は7,499.4万トン(前年度比1.2%減)となり、粗鋼生産は9,842,8万トン(同4.3%減)となった。炉別生産では、▽転炉鋼が7,490万トン(同2.5%減)となり、▽電炉鋼が2,352.7万トン(同9.6%減)となった。
鋼種別生産では、▽普通鋼が7,558.8万トン(同4.0%減)となり、▽特殊鋼が2,369.7万トン(同7.4%減)となった。▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は8,771.4万トン(同5.1%減)となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は6,852.6万トン(同4.4%減)となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は1,918.9万トン(同7.7%減)となった。


4月粗鋼生産661.7万トン(前年同月比23.5%増)
普通鋼鋼材の19年度571.7万トン(前年度比12.0%減)

日本鉄鋼連盟が5月22日に発表した2020年4月の銑鉄生産は490.2万トンと前月比18.4%減、前年同月比24.0%減となり、前年同月比では2ヵ月連続減となった。粗鋼生産は661.7万トンと前月比16.8%減、前年同月比23.5%減となり、前年同月比では2ヵ月連続減となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が484.4万トン(同25.4%減)となり、同2ヵ月連続減。▽電炉鋼が177.2万トン(同17.9%減)となり、同14ヵ月連続減となった。
鋼種別生産では、▽普通鋼が520.0万トン(同21.1%減)となり、同2ヵ月連続減、▽特殊鋼が141.6万トン(同31.0%減)となり、同17カ月連続減となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は586.0万トン(同22.1%減)となり、同22ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は472.7万トン(同19.9%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は113.3万トン(同30.1%減)となり、同16ヵ月連続減となった。
3月の普通鋼鋼材用途別受注量では、▽建築用は50万1,986トン(同13.3%減)となった。うち▽非住宅用が36万3,951トン(同7.8%減)、▽住宅用が13万8,035トン(同25.1%減)となった。
19年度計では、▽建築用が571万6,563トン(前年同期比12.0%減)、▽非住宅用が399万5,3521トン(同12.2%減)、▽住宅用が172万1,211トン(同11.3%減)となった。


【建築プロジェクト】
宇都宮駅東口地区整備計画の「コンベンション施設」は
S造・4階建・1万平米は前田・渡辺・中村・増渕JVで10月着工

宇都宮市と民間グループが進める宇都宮駅東口地区整備事業の「うつのみやシンフォニー」は、公共3施設と民間4施設の総延べ床面積約12万平方メートルを整備する。次世代型路面電車(LRT)の起点となる宇都宮駅東口(2.6ヘクタール)に概算建設総額455億円をかけ、19年1月に市と同グループが事業契約を結んだ。
公共施設「コンベンション施設」は、S造・一部RC造、地上4階建て、延べ床面積約1万0,717平方メートル。収容人数2,000人の平土間の大ホールを備えた会議中心型のコンベンション施設となる。設計をAIS総合設計、アール・アイ・エー、隈研吾建築都市設計事務所が担当し、施工を前田建設工業・渡辺建設・中村土建・増渕組JVで10月に着工し、2022年8月の完成。グループ代表の野村不動産が建設し、宇都宮市が買い取る。
この他の公共施設は、ともに市が整備する。コンベンション施設と一体的な利用ができる「交流広場」の規模は3層の延べ床面積約6,000平方メートルで、施工を前田建設工業・中村土建・増渕組JVが担当する。また、「自転車駐車場棟」は、S造、地上3階建て、延べ床面積約3,900平方メートルは、渡辺建設・中村土建・増渕組JVの施工で4月完成した。公共施設の設計は、いずれもAIS総合設計、アール・アイ・エー、隈研吾建築都市設計事務所が担当している。
民間施設では、住友商事による「複合施設棟(1)」は、S造、地上14階建て、延べ床面積約3万7,795平方メートルを大成建設の設計・施工で4月に着工し、22年7月の完成予定。1-5階は住友商事が所有する20店舗程度のショッピングセンター。5-14階は同社とJA三井リース建物の「カンデオホテルズ」(客室280室)となる。
脳神経脊髄脊椎外科サービスによる「宇都宮脳脊髄センターシンフォニー病院」は、S造、地下1階・地上7階建て、延べ床面積約9,295平方メートル(ベッド数は100床)は、設計は小野里信建築アトリエが担当し、施工は関東建設工業が施工で3月に着工し、21年6月の完成予定。
民間施設のRC造建築物では、北関東綜合警備保障とカラーズ・インターナショナルの特別目的会社(SPC)による「複合施設棟(2)」は、地上27階建て、延べ床面積約3万8,000平方メートル。1-5階の店舗・駐車場は北関東綜合警備保障が、6-27階の「デュシタニホテル」(客室280室程度)はSPCが所有する。また、野村不動産による「宇都宮駅東口新築工事」(共同住宅110戸)は、地上15階建て、延べ床面積約1万1,247平方メートル。長谷工コーポレーションの設計・施工で3月に着工し、22年6月に完成予定。


連載/あの人、この人(2)
尾張名古屋の四人衆

私が密かに「尾張名古屋の四人衆」と呼んでいた人たちは、お互いに「モリちゃん・ナベちゃん・ナカちゃん・ミネちゃん」と呼び合っていた4人。れっきとした愛知県の有力な鉄骨ファブリケーター(Hグレード)の壮年経営役員である。この四人衆を紹介する前に、愛知の県民性と当時の愛知県鉄構協同組合(愛鉄組)を簡略に紹介する。
愛知県は尾張地区と西三河地区、東三河地区の3地区で構成され、尾張と三河とは県民性が異なるものの、総じて県民所得は高く、プライドも高く、見栄っ張り、負けず嫌い。尾張地区は排他・閉鎖、土着・血縁的とも言われるが、移住者や転勤族者、頻繁に来たりして地域にドップリ浸かってしまえば、こんなに居心地の良いところはない。
私が頻繁に訪れた1990年前後の愛鉄組は、K事務局長は「組合員が集まり、議論を交わし、メシを食う。相互理解ができれば無駄な競争が無くなる」の主旨で、本部会議や支部会合では人的交流の場づくりに励んだ。さすが愛鉄組の結束力、行動力は抜きん出ていた。
事業活動も「鉄骨単価ガイドライン設定」や「適正価格受注ポスター制作」をはじめ、共同購入活動・保険加入促進など独自色を出し、「愛知の結束力が中部圏ファブ業界を牽引している」との定評さえあった。その活動の求心力の背景には、若手経営者らの結束力が見逃せない。「物件見積もり報告」などの画期的施策をはじめ鋼材商社との情報交換会やグレード別会合などを通じての人的交流がさまざまな問題の解決となった。こうした活動によって、商社介入物件や鋼材一次加工・鉄骨部材加工などの分業化による棲み分けができ、迅速な受注情報や工期短縮などにもつながった。
当時の愛鉄組は中核をなしていたのが尾張地域(名古屋西部)で、この地域は有力なHグレードファブを出頭にファブが多く点在する。中でものM鉄構建設のM常務(モリちゃん)、T鉄骨工業のW専務(ナベちゃん)、I工業のN部長(ナカちゃん)、T鉄工建設のM専務(ミネちゃん)らは血気盛んの40代前後で、お互いに「ちゃん」呼ばり合いするのは信頼と友情の証でもあった。
モリちゃんは、大手鋼材特約店を経て総合建設の鉄骨部門の責任者となった。商社・特約店など流通に人脈もあり、義理・人情を重んじるリーダー的存在。ナベちゃんは、地元大手材木商の娘婿で系列企業の鉄骨ファブを仕切っている。建築構造学に精通し、バランス感覚があり、人の心理を掴むも慎重な性格なためメンバーの理論家的な存在だ。
ナカちゃんは、建築鉄骨とサッシをする企業の鉄骨部門の営業責任者で、堂々たる風貌のわりに緻密で温和な人柄で頼りがいある。技術セールスを持ち前にし、フットワークがよく物件事情などの情報通の存在。ミネちゃんは、メンバーでは一番若手(30代半ば)のやんちゃが残る人懐っこい性格。実兄が二代目社長で製作部門を担当し、自身は営業や組合など外向きの仕事を仕切る。4人の共通点は「一家言」を持っているものの、似て非なる者同士の異色カルテットであった。
愛鉄組は、常に情報交換や仕事のやり取りをするなどすることにより、市況安定に努力してきた。この頃、全国各地の鉄構協組で青年部会が設立されたが、当時、愛鉄組ではその気運が一向に高まらなかったのは、壮年経営者が組合活動に参画し、積極果敢に活動していたことにあると思われる。
四人衆と喫茶店で歓談時に、首都圏の大型物件の話を向けると、モリちゃんは「なんで東京まで出張って行って、赤字覚悟で受けなきゃならないの。なあ皆、そうだろう」と即座に一蹴。ナベちゃんは「(関東物件で)山積みの確保で動くと、単価・納期・横持ちなどで痛めに逢う。地元物件を採算維持し、品質の確保を図りながら生産効率のための自動化率が先だわね」と言い。ナカちゃんは「東海4県の需給で十分対応できる。諸経費を使って効率の悪い仕事はしない」とにべもない。ミネちゃんは「今は余裕がないが将来は進出したい」と含みを持たした。それぞれが尾張人気質で異なる考えをしていた。この背景には、名古屋駅周辺の超高層ビル化や市内地の高層ビル、三河地区の工場物件など県内需要で賄えた時代でもあった。
四人衆は、名門・老舗ファブと一目置かれた長老らが、ゼネコン「名義人」の金看板を盾に安易な受注をする。新興ファブの中には市況を乱すような見積もりが横行する。こうした古い風習や独善的な営業志向を諫め、説得し、協調を促す努力もしていた。常に「進取の気象」に富んだ四人衆との出会いは三十数年経っても強烈な印象が残る。男の友情と信頼は、傍から見てもいいものだ。

【中井 勇】