スノウチニュース<№205> 令和3年11月


【鉄骨需要月別統計】
9月鉄骨需要量は35万1,650トン(前年同月比0.7%増)
21年度上期(4~9月)は226万1,150トン(前年同期比7.8%増)

国土交通省が10月29日発表した「建築物着工統計調査」の2021年9月着工総面積は9,948千平方メ―トル(前年同月比1.2%減)の微減となり、前年同月比では2ヵ月連続で10,000千平方メートル割れとなった。
▽建築主別は、▽公共建築物が433千平方メートル(同31.3%減)となり、同1ヵ月で減少になった。▽民間建築物は9,516千平方メートル(同0.8%増)の微増ながらも同7ヵ月連続増となった。
▽用途別は、▽居住建築物は6,248千平方メートル(同1.1%増)の微増となり、同7ヵ月連続増となった。▽非居住建築物は3,700千平方メートル(同4.9%減)となり、同2ヵ月連続減となった。
▽構造別は、▽鉄骨建築のS造が3,427千平方メートル(同1.7%増)となり、同9ヵ月連続増となった。▽SRC造が179千平方メートル(同29.0%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。
一方、▽RC造が1,624千平方メートル(同22.7%減)となり、同2ヵ月連続の大幅減となった。▽W造が4,655千平方メートル(同8.7%増)となり、同6ヵ月連続増となった。
▽鉄骨需要換算では、S造は34万2,700トン(前年同月比1.7%増)となり、同9ヵ月連続増となった。SRC造は8,950トン(同29.0%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。鉄骨造の合計では前月比7.8%増の35万1,650トン(前年同月比0.7%増)となった。
なお、21年(1~9月)では、S造322万6,200トン(前年同期比8.2%増)、SRC造5万5,850トン(同15.4%減)となり、鉄骨造の合計では328万2,050トン(同7.7%増)となった。
21年度上期(4~9月)では、S造222万2,900トン(前年同期比8.1%増)、SRC造3万8,250トン(同17.0%減)となり、鉄骨造の合計では226万1,150トン(同7.8%増)となった。

20年9月-21年9月 鉄骨需要量の推移

年/月 S造(TON) 前年比(%) SRC造(TON) 前年比(%) 鉄骨造計(TON) 前年比(%)
9 336,800 -3.3 12,550 64.8 349,350 -1.8
10 328,400 -10.7 5,350 -2.9 333,750 -1.8
11 300,000 -14.5 14,300 208.6 314,300 -11.6
12 338,000 -16.1 11,300 109.7 349,300 -14.4
2021/1 318,300 19.6 4,800 -10.0 323,100 19.0
2 308,300 2.8 9,900 -4.9 318,200 2.5
3 376,700 3.6 2,900 -41.4 379,600 2.9
4 387,600 8.3 6,000 -39.7 393,600 8.5
5 387,600 10.1 5,400 -62.6 393,000 7.4
6 412,400 13.0 8,750 106.2 421,150 14.1
7 370,100 4.5 5,450 158.8 375,550 5.4
8 322,500 10.7 3,700 37.0 326,200 11.9
9 342,700 1.7 8,950 -29.0 351,650 0.7
暦年計(21/1~9) 3,226,200 8.2 55,850 -15.4 3,282,050 7.7
年度計(21/4~9) 2,222,900 8.1 38,250 -17.0 2,261,150 7.8

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
日建連9月総受注額約1兆5,925億円(前年同月比23.4%増)
民間工事は1兆2,554億7,800万円(前年同月比41.3%増)
21年度上期の受注額6兆2,230億円(前年度同期比13.4%増)

日本建設業連合会(日建連)が10月27日に発表した会員企業95社の2021年9月受注工事総額は1兆5,925億1,500万円(前年同月比23.4%増)となり、前年同月比で3ヵ月ぶりの増加となった。うち民間工事が1兆2,554億7,800万円(同41.3%増)となり、同1ヵ月で大幅増となった。官公庁工事が3,145億7,300万円(同19.4%減)となり、同1ヵ月で減少となった。
国内工事が1兆5,720億7,000万円(同22.8%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。民間工事の1兆2,554億7,800万円のうち、▽製造業が1,447億5,900万円(同22.7%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。▽非製造業が1兆1,107億1,900万円(同58.4%増)の大幅増となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。
官公庁工事の3,145億7,300万円のうち、▽国の機関が2,147億0,200万円(同10.0%減)となり、同3ヵ月連続減となった。▽地方の機関が998億7,100万円(同34.1%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。▽その他が20億1,900万円(同7.3%減)となり、同3ヵ月連続減となった。▽海外工事が204億4,500万円(同116.9%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。
21年度上期(4~9月)の受注工事総額が6兆2,230億1,600万円(前年同期比13.4%増)となり、▽民間工事額が4兆3,770億2,700万円(同17.0%増)、▽官公庁工事が1兆7,008億0,900万円(同2.7%増)、▽海外工事が1,309億0,600万円(同98.8%増)となった。
一方、9月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道が760億4,200万円(前年同月比107.3%増)となり、前年同期比では2ヵ月連続増となった。▽東北が492億6,600万円(同50.4%減)の大幅減となり、同5ヵ月連続減となった。▽関東が8,206億9,500万円(同50.2%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。▽北陸が360億5,000万円(同19.3%減)となり、同5ヵ月連続減となった。
▽中部が1,333億7,300万円(同29.0%増)となり、同4ヵ月連続増となった。▽近畿が2,510億9,400万円(同7.2%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽中国が704億5,800万円(同21.3%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽四国が394億5,500万円(同15.3%増)となり、同5ヵ月連続増となった。▽九州が956億3,100万円(同3.8%増)となり、同5ヵ月連続増となった。
なお、21年度上期(4~9月)の▽北海道が2,869億1,900万円(前年同月比4.3%増)▽東北が3,891億1,500万円(同23.5%減)▽関東が27,787億9,700万円(同22.6%増)▽北陸が1,482億6,200万円(同23.7%減)▽中部が6,122億5,600万円(同21.5%増)▽近畿が9,768億0,200万円(同0.6%増)▽中国が3,136億1,100万円(同17.6%増)▽四国が1,140億0,300万円(同21.5%増)▽九州が4,723億7,500万円(同37.5%増)となった。


9月粗鋼生産814.4万トン(前年同月比25.6%増)
上期の粗鋼生産4,842.3万トン(前年同期比30.6%増)
8月普通鋼建築用45.4万トン(前年同月比1.8%減)

日本鉄鋼連盟は10月22日に発表した2021年9月の▽銑鉄生産は583.0万トン(前年同月比25.4%増)となり、前年同月比で7ヵ月連続増となった。21年度上期(4~9月)で3,527.5万トン(前年度同期比29.3%増)となった。▽粗鋼生産 は814.4万トン(同25.6%増)となり、同7ヵ月連続増となった。上期で4,842.3万トン(同30.6%増)となった。
炉別生産 では、▽転炉鋼が602.4万トン(同26.7%増)となり、同7ヵ月連続増。▽電炉鋼が212.0万トン(同22.5%増)となり、同7ヵ月連続増となった。鋼種別生産 では、▽普通鋼が621.7万トン(同20.8%増)となり、同7ヵ月連続増。▽特殊鋼が192.7万トン(同44.1%増)となり、同7ヵ月連続増となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計) の生産は707.9万トン(同21.1%増)となり、同7ヵ月連続増となった。上期で4,239.7万トン(同27.8%増)となった。
▽普通鋼熱間圧延鋼材 の生産は551.7万トン(同17.7%増)となり、同7ヵ月連続の増加となった。上期で3,298.2万トン(同21.1%増)となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材 の生産は156.2万トン(同34.9%増)となり、同月9ヵ月連続増となった。上期で941.6万トン(同58.4%増)であった。
一方、8月の普通鋼鋼材用途別受注量では、▽建築用は45万4,011トン(同1.8%減)となった。うち▽非住宅が36万2,034トン(同0.6%増)、▽住宅が12万7,977トン(同7.2%減)となった。
21年度4~8月の建築用は250万2,042トン(前年同期比6.5%増)となった。うち▽非住宅が185万5,150トン(同10.4%増)となり、▽住宅が64万6,892トン(同4.4%減)となった。


8月溶接材料の出荷量1万6,871トン(前年同月比12.3%増)
21年(1~8月)の出荷量14万0,932トン(前年同期比3.2%増)

日本溶接材料工業会が発表した2021年8月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)では、生産量は1万5,365トン(前年同月比11.1%増)の前年同月比で5ヵ月連続増加となり、出荷量は1万6,871トン(同12.3%増)の同5ヵ月連続増となった。在庫量は1万5,095トン(同22.5%減)となり、同10ヵ月連続減となった。
生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が6,372トン(同25.8%増)の同5ヵ月連続増。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が4,586トン(同6.8%減)の同20ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒が2,406トン(同49.0%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。その他を含む生産量計では1万5,365トン(同11.1%増)となり、同4ヵ月連続増となった。
出荷量の主な品種は▽SWが6,834トン(同28.8%増)の同5ヵ月連続増。▽FCWが5,535トン(同3.2%増)の同3ヵ月ぶりに増加。▽溶接棒が2,345トン(同22.5%増)の同5ヵ月連続増となった。その他を含む出荷量計では1万6,871トン(同12.3%増)の同5ヵ月連続増となった。
在庫量の主な品種は▽SWが5,450トン(同24.0%減)の同8ヵ月連続減。▽FCWが4,978トン(同28.6%減)の同9ヵ月連続減。▽溶接棒が2,477トン(同18.3%減)の同12ヵ月連続減となった。その他を含む在庫量計では1万5,095トン(同22.5%減)の同10ヵ月連続減となった。
21年(1~8月)の生産量は13万7,952トン(前年同期比1.0%増)となり、出荷量は14万0,932トン(同3.2%増)となった。なお、財務省貿易統計による8月の溶接材料輸出量は2,846トン(前年同月比26.4%減)、輸入量は5,518トン(同37.4%増)となった。

20年8月-21年8月 溶接材料月別実績表

生産量

単位/トン

年/年度 ソリッドワイヤ 前年比
フラックス入りワイヤ 前年比
被 覆  溶接棒 前年比
合 計 前年比
2020年 8 5,064 ▼31.4 4,921 ▼17.6 1,615 ▼24.6 13,828 ▼24.6
9 57,17 ▼36.6 6180 ▼22.4 1775 ▼26.7 15,740 ▼29.6
10 6,997 ▼22.9 5,829 ▼27.9 1,728 ▼25.6 17,120 ▼23.5
11 7,528 ▼16.6 5,855 ▼20.3 1,845 ▼9.2 17,429 ▼17.8
12 6,637 ▼24.1 5,297 ▼27.1 1,660 ▼30.0 16,014 ▼25.3
2021年 1 6,028 ▼18.5 5,346 ▼20.2 1,803 ▼13.5 15,419 ▼17.9
2 6,781 ▼8.1 5,644 ▼16.9 1,982 2.2 16,888 ▼8.0
3 7,372 ▼3.6 5,788 ▼20.2 2,157 ▼7.0 17,809 ▼9.2
2021年度 4 7,426 4.2 6,047 ▼10.7 2,145 0.0 18,294 ▼2.3
5 7,329 32.8 5,302 ▼0.7 1,994 15.5 16,917 14.7
6 7,947 58.7 6,488 ▼3.8 2,432 14.7 19,285 17.5
7 7,688 51.0 5,861 ▼5.7 2,217 ▼0.4 17,975 11.1
8 6,372 25.8 4,586 ▼6.8 2,406 49.0 15,365 11.1
2021年度(4~8月) 36,762 30.9 28,284 ▼5.7 11,194 13.8 87,836 9.9
2021年(1-8月) 56,943 12.8 45,062 ▼11.1 17,136 5.9 137,952 1.0

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

出荷量

単位/トン

年/年度 ソリッドワイヤ 前年比
フラックス入りワイヤ 前年比
被 覆  溶接棒 前年比
合 計 前年比
2020年 8 5,306 ▼31.7 5,363 ▼17.6 1,914 ▼11.6 15,027 ▼22.7
9 6,374 ▼28.3 6,089 ▼19.5 2,028 ▼14.3 16,579 ▼23.2
10 6,710 ▼21.2 5,757 ▼26.1 1,900 ▼11.0 16,897 ▼23.2
11 7,171 ▼10.5 5,929 ▼18.9 1,814 ▼11.7 17,209 ▼15.0
12 7,143 ▼16.9 5,615 ▼25.1 1,918 ▼23.9 17,022 ▼21.3
2021年 1 6,932 ▼1.0 5,878 ▼15.3 1,838 ▼17.4 17,053 ▼9.1
2 6,847 ▼1.1 5,689 ▼12.7 1,988 ▼2.2 16,851 ▼5.4
3 7,266 ▼1.5 5,404 ▼21.8 1,907 ▼10.4 17,271 ▼8.0
2021年度 4 7,996 20.7 6,561 1.4 2,497 32.5 19,700 12.6
5 6,937 24.6 5,865 2.8 2,146 6.0 17,016 6.7
6 7,981 43.0 6,340 ▼2.8 2,216 2.5 18,997 12.7
7 7,353 48.6 5,557 ▼6.6 2,101 2.8 17,173 7.8
8 6,834 28.8 5,535 3.2 2,345 22.5 16,871 12.3
2021年度(4~8月) 37,101 32.4 29,858 ▼1.6 11,305 12.7 89,757 10.4
2021年(1-8月) 58,146 17.9 46,829 ▼7.7 17,038 3.8 140,932 3.2

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
ヤマト銀座ビル・運輸別館の建替えは鹿島
S造、11階建て2棟、総延べ床面積1.8万平米

 ヤマトホールディングスは、東京・銀座の昭和通りに面するヤマト運輸本社別館とヤマト銀座ビルを建て替える「(仮称)銀座プロジェクト」を進めている。別館をA敷地、銀座ビルをB敷地とし、複合ビル2棟の総延べ床面積約1万8,000平方メートルを建設する。2棟とも設計は日建設計、施工は鹿島で2022年4月に着工し、24年6月の完成を目指す。
A敷地(中央区銀座2-12-15ほか)の複合ビルは、S造・一部RC造・SRC造地下1階地上11階建て延べ床面積約9,640平方メートル。用途は事務所、飲食店、駐車場が入る。敷地面積は997平方メートル、建築面積は796平方メートル。B敷地(銀座2-12-18)の複合ビルは、 S造・一部RC造・SRC造地下1階地上11階建て、同8,684平方メートルのビルを建設する。用途は事務所、駐車場、倉庫。 敷地面積は970平方メートル、建築面積は772平方メートル。
現在、既存ビルの解体工事を鹿島の施工で進めており、22年7月末までにすべての撤去を終える見通し。解体施設の規模は、別館がSRC造、地下2階・地上10階建て、延べ床面積約1,994平方メートル、銀座ビルがSRC造、地下1階・地上10階建て、同8,097平方メートル。
ヤマトホールディングスとヤマト運輸は建て替えなどに当たり、8月から本社各部署を港区の西新橋1丁目ビルに一時移転中。銀座エリアでは、首都高速道路都心環状線側に立つヤマト運輸本社ビル(中央区銀座2-16-10)の改修工事も実施する計画となっている。


御堂筋ダイビル建替え計画は大林組
S造一部SRC造、20階建て、延床2万平米

御堂筋ダイビル建て替え計画(建築主はダイビル、大阪市中央区南久宝寺町4-5-1)の旧御堂筋ダイビルは、敷地面積1,492平方メートルに1964年完成のオフィスビルの建て替え工事を12月に着工する。
新御堂筋ダイビルの建築面積は1,102平方メートル。建築規模はS造・一部SRC造、地下1階・地上20階・塔屋1層建て、延べ床面積約2万0,297平方メートル。低層階に商業施設を設けたオフィスビル。設計は日建設計、施工は大林組、21年12月に着工し、24年1月末の完成予定となっている。
旧御堂筋ダイビルは、SRC造、地下3階・地上8階建て、延べ床面積約1万3,399平方メートル。商都・大阪の中心街・本町のビジネスエリアと商業エリアの心斎橋の中間に位置する。御堂筋大通筋は、低層階に商業施設を入居させると容積率の緩和を受けることができ、ダイビルは新御堂筋ダイビルの低層階に店舗を入居させ容積率1,360%受けたことになる。


連載/あの人、この人(19)
鉄構界一筋の汲川氏

溶接業界紙W新聞・大阪本社の勤務とり、両親と暮らす実家を離れ、中1と小5娘の家族4人で西宮市能登町での生活となった。大阪転勤が決まった時に、全国鉄構工業連合会(全構連)の木舟常務理事が「大阪に行っても、これまでと同じに鉄構業界をよろしく!」との要請もあり、赴任早々に地下鉄・谷町九丁目駅前(天王寺区生玉前町1丁目)の大阪府鉄建設業協同組合(大阪鉄構組)に出向いた。
組合事務局は小さなビルの2階にあり、Y事務局長(元教諭)とW女史職員(後に事務局長となる)が出迎え、応接室で会った汲川圭司理事長は小柄な白髪の学者然としていた。汲川氏は「M理事長の推挙で二代目の理事長になった。事務局長のYさんと同じ雇われの員外理事長。若い時から建築に携わってきたので、この仕事が最後のご奉公と思っている」と語った。明治生まれの元建築技術者が理事長で、しかも全構連副会長でもあった。
汲川氏の略歴を紹介。1903年(明治36年)11月17日生まれ、三重県出身。26年に名古屋高等工業学校(現・名古屋工業大学)建築学科卒と同時に保岡勝也建築事務所入所。昭和恐慌ため1年で依願退職。27年に海軍機関学校新営工事の嘱託技術者に拝命され建築構造に携わる。
30年に藤永田造船所(現・三井造船)に入社し、橋梁など鋼構造を担当。35年に長谷部竹腰建築事務所入所し、ビル・工場建屋の構造設計に従事。後に同事務所は、住友ビルディング、大阪北港との3社合弁で住友土地工務(現・日建設計)となる。51年に同工務退社し、泉工業を興す。76年大阪府鉄構建設業協同組合(大阪鉄構組合)理事長に就任。77~81年まで全構連副会長を務める。
全構連は80年4月、我が国初の『‘80鋼構造展』(東京・晴海)で開催し、私も大阪から取材に出向いた。鉄骨建築の需要増と大型化・高層化に対応する鉄骨ファブの自動化・省力化の最新加工機械や溶接機器、治工具、鋼材料、検査機器などを一堂に会した展示会を催し、鉄骨品質向上と生産効率を確保する狙いから企画された。
東京・晴海は前のS総合出版社で『国際ウェルディングショー』開催に従事した経験あり、懐かしく、また鋼構造展(建築鉄骨加工展)とあって物珍しくもあった。東海以西の鉄骨ファブや鉄構組団体をはじめ多くの経営者や技術・技能者らが馳せ参じた。最新のNC制御加工機、溶接機器、新鋼材などの実演を観る、さらに鉄骨ファブ同士の顔見知りとの交流の場にもなった。
会場で汲川氏と会い、長話となる。今でも記憶に残るのは「どお、溶接業界でも溶接展をしているが、ファブ業界にもこれだけの規模の展示会を催すだけの業界基盤ができた。未組織だった業種が構成会員三千社にのぼる組織団体となった。70年代の鋼材不足で<鉄よこせ運動>をし、品質向上策で78年に自主認定工場制度を設けた。数は力。政庁やゼネコン、ミル・鉄鋼商社にものが言える」と組織力は圧力になり得る条件と語り、諸事業策や鉄骨業界の地位向上になると強調することしきりだった。
私は、82年2月に鉄構専門紙のK出版・大阪支社を立ち上げた。鉄骨ファブ業界に的を絞って取材するようになり、汲川氏とはより親密になる。元鉄工所の経営者と思っていたが、建築・鉄骨・橋梁などの豊富な知識や戦前・戦中の鉄骨建築の体験話を聞くたびに、その業績・功績と人脈・人柄に敬服するようになった。長老の汲川氏からは、全構連運営への尽力を含めファブ業界に注ぐ熱意は、兵庫の足立金志氏、愛知の川原登志雄氏とは異なるものの、多大な貢献者と言えた。
汲川氏の持論では「(鉄骨ファブは)鋼構造物工事業者でなく、大臣認定工場の鉄骨製作工事業のれっきとした鉄骨業界である。そのため技能・技術者資格を取得し、品質規格に沿った製品でなくてはならない。そうすれば設計事務所やゼネコンと対等な話し合いができる」と鉄骨業界論を述べ。一方、「鉄骨業界を盤石にするには淘汰(倒産・廃業)も避けられない。受注産業だけに需要増減が厳しく、経営は難しい。受注単価維持のためにも結束力が求められる」と適者生存論も出る。
汲川氏の趣味は南画(中国の南宗画に由来する画法)を描くことで、二度ほど展覧会に招かれた。「わし、子どもの頃から絵が好きだった。南画は特に専門の先生に習うことなく、構造設計同様に独学だから」と自嘲するもなかなかの腕前だった。
汲川氏は84年に4期・8年で勇退され、後任に三代目理事長はHグレード・M工業T社長が就任。大阪鉄構組総会での退任挨拶では「老いたる私を皆さんの支えがあって、お手伝いが出来た。更なる組合の発展を期待する」と簡素な勇退挨拶となった。また、全構連近畿支部会でも「<近畿はひとつ>の合言葉で、結束・協調してきた。近畿支部が業界発展の原動力であってほしい」と託す謝辞となった。
私は87年に東京本社勤務となり、7月に「T技術誌」創刊。新雑誌を軌道に乗せるためもあり、汲川氏とも3年ほど音信不通だった。90年暮れ大阪支社O記者から「元大阪鉄構組合理事長の汲川氏がT技術誌に連載寄稿したい、との要望ですが」との話があり、大阪時代に多くの鉄骨談義を聴いてきた私としては、昨今の鉄骨建築の礎を築いてきた先人の回顧も貴重と思い快諾した。
汲川氏の回顧録は「連載 翁の想い出 」3~4ページ(800字原稿用紙7、8枚分)になる。91年5月号から掲載し、92年11月号にわたり19回連載された。汲川氏が直面した出来事や人との出会い、奇遇な人脈など毎号固唾をのんで読ませて頂いた。そして驚いたのは米寿の人が書いた文章とは思えないほど文章力と記憶の鮮明さである。戦災によって資料が焼かれたにもかかわらず、半世紀以上前の登場人物がフルネームであることや、その時の出来事の年月日までが正確に記述されている。
汲川氏の回顧録では、26年に教授の斡旋で保岡勝也設計建築事務所に入社、茶室建築を学ぶも不況もあって身を引き、27年に嘱託技師として舞鶴海軍機関学校新営の鉄骨建築に従事する。嘱託職が完了し、30年から藤永田造船所で石油精製装置や工場などに取り組む。35年に長谷部竹腰建築事務所入所し、ビルや邸宅設計に従事する。38年に奥小路鉄工所に出向し、建築鉄骨などの工作部部長として住友金属関係の鉄骨工場建屋や鋼構造物製作などで西日本各地を奔走する。
汲川氏自身の業務内容や工事物件などの詳細を再現する一方、その時々の世界情勢や経済事情、軍部の動き、鉄鋼生産・輸入など始まる記録でもあり、建築設計・構造計算、鉄骨・橋梁製作、鉸鋲・溶接施工、鋼材・副資材にまつわる歴史でもある。
連載後、汲川氏から私に「原稿のやり取りや校閲などでO君や東京の編集部にご苦労かけ、無事に完結できた。制作費を出すので単行本化したい」と自費出版の申し出があり了承した。添削・加筆し、93年10月に『翁の想い出 -我が生がある限り-』刊行した。93年11月2日、大阪市内で「汲川圭司出版記念式典」を催した。その席で「はからずも、今月90歳。あなた方のお陰で立派な本ができ、冥途の土産ができ、思い残すことはない」と大層喜ばれたことを、今も鮮明に想い出す。
汲川氏の回顧録を28年ぶりに読む。私にとっては新たな感慨と、昭和の激動期を生き抜いたひとりの建築技術者の記録だけでなく世情も偲ばれる。暫し、鉄構人生一筋の汲川氏思いに馳せる。
【中井 勇】