スノウチニュース<№206> 令和3年12月


【鉄骨需要月別統計】
10月鉄骨需要量は54万1,900トン(前年同月比65.7%増)
21年度(4~10月)は280万3,000トン(前年同期比15.3%増)

国土交通省が11月30日発表した「建築物着工統計調査」の2021年10月着工総面積は12,094千平方メ―トル(前年同月比25.8%増)の大幅増となり、前年同月比では1ヵ月で増加に転じた。10,000千平方メートル超は3ヵ月ぶりとなり、12,000千平方メートル台は15年6月の12,357千平方メートル以来となった。
▽建築主別は、▽公共建築物が483千平方メートル(同24.6%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽民間建築物は11,611千平方メートル(同25.9%増)の大幅増となり、同8ヵ月連続増となった。
▽用途別は、▽居住建築物は6,766千平方メートル(同13.2%増)となり、同8ヵ月連続増となった。▽非居住建築物は5,328千平方メートル(同46.6%増)の大幅増となり、同3ヵ月ぶりに増加となった。
▽構造別は、▽鉄骨建築のS造が5,309千平方メートル(同61.7%増)の大幅増となり、同10ヵ月連続増となった。▽SRC造が220千平方メートル(同105.3%増)の超大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。
一方、▽RC造が1,619千平方メートル(同7.6%減)となり、同3ヵ月連続減となった。▽W造が4,882千平方メートル(同10.7%増)となり、同7ヵ月連続増となった。
▽鉄骨需要換算では、S造は53万0,900トン(前年同月比61.7%増)となり、同10ヵ月連続増となった。53万トン台は08年8月の53万トン以来の13年2ヵ月ぶり。SRC造は11,000トン(同105.3%増)となり、同1ヵ月で増加となった。鉄骨造の合計では前月比54.1%増の54万1,900トン(前年同月比65.7%増)となった。
なお、21年(1~10月)では、S造が375万7,100トン(前年同期比13.5%増)、SRC造が6万6,850トン(同6.4%減)となり、鉄骨造の合計では382万3,950トン(同13.1%増)となった。
21年度(4~10月)では、S造が275万3,800トン(前年同期比15.4%増)、SRC造が4万9,200トン(同4.2%減)となり、鉄骨造の合計では280万3,000トン(同15.3%増)となった。

20年10月-21年10月 鉄骨需要量の推移

年/月 S造(TON) 前年比(%) SRC造(TON) 前年比(%) 鉄骨造計(TON) 前年比(%)
10 328,400 -10.7 5,350 -2.9 333,750 -1.8
11 300,000 -14.5 14,300 208.6 314,300 -11.6
12 338,000 -16.1 11,300 109.7 349,300 -14.4
2021/1 318,300 19.6 4,800 -10.0 323,100 19.0
2 308,300 2.8 9,900 -4.9 318,200 2.5
3 376,700 3.6 2,900 -41.4 379,600 2.9
4 387,600 8.3 6,000 -39.7 393,600 8.5
5 387,600 10.1 5,400 -62.6 393,000 7.4
6 412,400 13.0 8,750 106.2 421,150 14.1
7 370,100 4.5 5,450 158.8 375,550 5.4
8 322,500 10.7 3,700 37.0 326,200 11.9
9 342,700 1.7 8,950 -29.0 351,650 0.7
10 530,900 61.7 11,000 105.3 541,900 65.7
暦年計(21/1~10) 3,757,100 13.5 66,850 -6.4 3,823,950 13.1
年度計(21/4~10) 2,753,800 15.4 49,200 -4.2 2,803,000 15.3

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
建設経済研・経済調査会の建設投資見通し
21年度の非住宅投資16.6兆円(前年度比3.9%増)
22年度の非住宅投資も16.9兆円(同2.2%増)

 建設経済研究所と経済調査会が最新の建設投資見通しを11月16日に発表した。2021年度の投資総額は前回調査(7月実施)と比べ4,500億円減の62兆5,200億円(前年度比2.7%増)とした。住宅着工の回復動向が年度後半の鈍化による想定も影響する。22年度の投資総額は63兆0,400億円(同0.8%増)と予測した。
政府建設投資は21年度が前回調査から4,800億円減の24兆4,400億円(同2.0%増)、22年度は24兆6,400億円(同0.8%増)と推計した。政府の「防災・減災、国土強靱化5ヵ年加速化対策」などを踏まえ、22年度も公共事業関係費を前年並みとした。
21年度は国内外の経済活動の持ち直しにより民間建設投資が増加することや政府建設投資の増加が見込まれることから、建設投資全体としては前年度と比べて微増すると予測する。 22年度も引き続き民間非住宅建設投資が緩やかな回復により微増し、政府建設投資も21年度と同水準と見込まれる一方、民間住宅投資が微減する見込みであることから、建設投資全体としては21年度と同水準になると予測する。
21年度の民間非住宅建設投資は16兆6,000億円(前年度比3.9%増)と予測する。 事務所ビル、商業・店舗施設に回復の動きがあり、前年度より増加するものと予測される。ただし、 原油高やサプライチェーンの混乱などがあることから、年度後半は、増勢が鈍化する見込みである。
22年度の民間非住宅建設投資は16兆9,600億円(同2.2%増)と予測する。 国内外の経済活動の再開から、持ち直しが期待されるが原油高などの状況により回復過程は緩やかなものになると見込まれる。
▽事務所ビルは、20年度に見送られた投資が回復してきていると見られ、上半期の着工床面積は前年度比28.7%増となった。一方、コロナ禍もあり全国的に空室率が上昇し、東京で平均賃貸料の下落が続いており、年度後半は増勢の鈍化が見込まれる。
▽商業・店舗は、14年度以来、前年度比減少が続いてきたが、21年3月以降7ヵ月連続で前年同月比を上回り、19年度の水準値まで回復すると見込まれる。▽工場は、国内外の景気回復を受け、堅調に推移すると見られたが、足元では伸び悩んでいる。原油高、 サプライチェーンの混乱などの要因もあり、減速の影響が製造業をとりまく環境を不透明化し、 先行きが懸念される。
▽倉庫・流通は、堅調に推移してきたが、ここにきて伸び悩みの傾向が見られる。▽医療・福祉は、緩やかな減少傾向が続いている。▽ホテル・宿泊は、昨年度の大幅減少から減少幅は縮小したものの、回復の兆しはない。
民間住宅投資は、21年度が前回から3,700億円減の15兆4,000億円(同1.9%増)。コロナ禍の影響で低迷した着工戸数が例年並みの水準にある。だが、大都市圏でマンション着工数の回復も遅い。22年度は政府の住宅取得支援策の終了などを想定し、15兆1,000億円(同1.9%減)と推計している。
建築補修(改装・改修)投資は、コロナ禍による減少分が政府と民間合わせ順調に回復し、21年度は7兆5,400億円(同3.4%増)とし、22年度は7兆8,300億円(同4.3%増)と推計している。


日建連10月総受注額約1兆0,214億円(前年同月比4.7%増)
民間工事は7,316億3,400万円(前年同月比11.3%増)

日本建設業連合会(日建連)が11月29日に発表した会員企業95社の2021年10月受注工事総額は1兆0,214億2,700万円(前年同月比4.7%増)となり、前年同月比で2ヵ月連続増となった。うち民間工事が7,316億3,400万円(同11.3%増)となり、同2ヵ月連続増となった。官公庁工事が2,849億4,200万円(同10.2%減)となり、同2ヵ月連続減となった。
国内工事が1兆0,167億7,600万円(同4.2%増)となり、同2ヵ月連続増となった。民間工事の7,316億3,400万円のうち、▽製造業が1,831億6,400万円(同58.2%増)と大幅増なり、同1ヵ月で増加となった。▽非製造業が5,484億7,000万円(同1.2%増)の微増ながら同2ヵ月連続増となった。
官公庁工事の2,849億4,200万円のうち、▽国の機関が1,890億5,900万円(同8.9%減)となり、同4ヵ月連続減となった。▽地方の機関が958億8,300万円(同12.7%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽その他が2億円(同81.1%減)となり、同4ヵ月連続減となった。▽海外工事が46億5,100万円(同17,788.5%増)の超大幅増となり、同3ヵ月連続増となった。
21年度(4~10月)の受注工事総額が7兆2,444億4,300万円(前年同期比12.0%増)となり、▽民間工事額が5兆1,086億6,100万円(同16.1%増)、▽官公庁工事が1兆9,857億5,100万円(同0.7%増)、▽海外工事が1,355億5,700万円(同105.7%増)となった。
一方、10月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道が353億9,500万円(前年同月比39.1%増)の大幅増となり、前年同期比で3ヵ月連続増となった。▽東北が529億8,300万円(同8.4%増)となり、同6ヵ月ぶりの増加となった。▽関東が3,368億9,300万円(同26.7%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽北陸が393億3,500万円(同1.3%増)の微増ながら同6ヵ月ぶりの増加となった。
▽中部が1,709億0,300万円(同136.0%増)の大幅増となり、同5ヵ月連続増となった。▽近畿が2,411億1,400万円(同22.1%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽中国が398億1,000万円(同31.6%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽四国が151億7,900万円(同14.0%増)となり、同6ヵ月連続増となった。▽九州が851億5,600万円(同4.7%減)となり、同6ヵ月ぶりの減少となった。


10月粗鋼生産822.4万トン(前年同月比14.3%増)
9月普通鋼建築用47.9万トン(同11.2%減)
普通鋼建築用の上期298.1万トン(前年同期比3.2%増)

日本鉄鋼連盟は11月22日に発表した2021年10月の▽銑鉄生産は586.7万トン(前年同月比14.7%増)となり、前年同月比では8ヵ月連続増となった。▽粗鋼生産は822.4万トン(同14.3%増)となり、同8ヵ月連続の増加となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が601.3万トン(同13.4%増)となり、同8ヵ月連続増。▽電炉鋼が221.2万トン(同16.6%増)となり、同8ヵ月連続増となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が632.2万トン(同10.3%増)となり、同8ヵ月連続増。▽特殊鋼が190.3万トン(同29.6%増)となり、同8ヵ月連続増となった。
熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は710.7万トンと前月比横ばい、前年同月比10.0%増となり、前年同月比では8ヵ月連続の増加となった。
▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は561.3万トン(同10.5%増)となり、同8ヵ月連続増となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は149.5万トン(同8.0%増)となり、同10ヵ月連続増となった。
一方、9月の普通鋼鋼材用途別受注量では、▽建築用は47万9,060トン(同11.2%減)となった。うち▽非住宅が34万5,682トン(同7.2%減)、▽住宅が13万3,378トン(同20.1%減)となった。
21年度4~9月の建築用は298万1,102トン(前年同期比3.2%増)となった。うち▽非住宅が220万0,832トン(同7.2%増)となり、▽住宅が78万0,270トン(同6.7%減)となった。


9月溶接材料の出荷量1万8,815トン(前年同月比13.5%増)
21年度上期(4~9月)の出荷量10万8,527トン(前年同期比11.0%増)

日本溶接材料工業会が発表した2021年9月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)では、生産量は1万8,148トン(前年同月比15.3%増)の前年同月比で5ヵ月連続増となり、出荷量は1万8,815トン(同13.5%増)の同6ヵ月連続増となった。在庫量は1万4,428トン(同22.6%減)となり、同11ヵ月連続減となった。
生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が7,512トン(同31.4%増)の同6ヵ月連続増。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が6,133トン(同0.8%減)の同21ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒が2,404トン(同35.4%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。その他を含む生産量計では1万8,148トン(同15.3%増)となり、同5ヵ月連続増となった。
出荷量の主な品種は▽SWが8,231トン(同29.1%増)の同6ヵ月連続増。▽FCWが6,063トン(同0.4%減)の同1ヵ月で減少した。▽溶接棒が2,154トン(同6.2%増)の同6ヵ月連続増となった。その他を含む出荷量計では1万8,815トン(同13.5%増)の同6ヵ月連続増となった。
在庫量の主な品種は▽SWが4,731トン(同27.4%減)の同9ヵ月連続減。▽FCWが5,048トン(同28.5%減)の同10ヵ月連続減。▽溶接棒が2,727トン(同0.8%減)の同13ヵ月連続減となった。その他を含む在庫量計では1万4,428トン(同22.6%減)の同11ヵ月連続減となった。
21年度上期(4~9月)の10万5,984トン(前年度同期比10.8%増)となり、出荷量は10万8,527トン(同11.0%増)となった。また、21年(1~9月)の生産量は15万6,100トン(前年同期比2.4%増)となり、出荷量は15万9,747トン(同4.3%増)となった。
なお、財務省の貿易統計による輸出量は3,286トン(前年同月比40.7%増)となり、輸出量は6,185トン(同40.9%増)となった。

20年9月-21年9月 溶接材料月別実績表

生産量 単位/トン
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比% フラックス入りワイヤ 前年比% 被 覆
溶接棒
前年比% 合 計 前年比%
2020年 9 57,17 ▼36.6 6180 ▼22.4 1775 ▼26.7 15,740 ▼29.6
10 6,997 ▼22.9 5,829 ▼27.9 1,728 ▼25.6 17,120 ▼23.5
11 7,528 ▼16.6 5,855 ▼20.3 1,845 ▼9.2 17,429 ▼17.8
12 6,637 ▼24.1 5,297 ▼27.1 1,660 ▼30.0 16,014 ▼25.3
2021年 1 6,028 ▼18.5 5,346 ▼20.2 1,803 ▼13.5 15,419 ▼17.9
2 6,781 ▼8.1 5,644 ▼16.9 1,982 2.2 16,888 ▼8.0
3 7,372 ▼3.6 5,788 ▼20.2 2,157 ▼7.0 17,809 ▼9.2
2021年度 4 7,426 4.2 6,047 ▼10.7 2,145 0.0 18,294 ▼2.3
5 7,329 32.8 5,302 ▼0.7 1,994 15.5 16,917 14.7
6 7,947 58.7 6,488 ▼3.8 2,432 14.7 19,285 17.5
7 7,688 51.0 5,861 ▼5.7 2,217 ▼0.4 17,975 11.1
8 6,372 25.8 4,586 ▼6.8 2,406 49.0 15,365 11.1
9 7,512 31.4 6,133 ▼0.8 2,404 35.4 18,148 15.3
2021年度(4~9月) 44,274 31.0 34,417 ▼4.8 13,598 17.1 105,984 10.8
2021年(1-9月) 64,455 14.6 51,195 ▼9.9 19,540 8.8 156,100 2.4

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

生産量 単位/トン
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比% フラックス入りワイヤ 前年比% 被 覆
溶接棒
前年比% 合 計 前年比%
2020年 9 6,374 ▼28.3 6,089 ▼19.5 2,028 ▼14.3 16,579 ▼23.2
10 6,710 ▼21.2 5,757 ▼26.1 1,900 ▼11.0 16,897 ▼23.2
11 7,171 ▼10.5 5,929 ▼18.9 1,814 ▼11.7 17,209 ▼15.0
12 7,143 ▼16.9 5,615 ▼25.1 1,918 ▼23.9 17,022 ▼21.3
2021年 1 6,932 ▼1.0 5,878 ▼15.3 1,838 ▼17.4 17,053 ▼9.1
2 6,847 ▼1.1 5,689 ▼12.7 1,988 ▼2.2 16,851 ▼5.4
3 7,266 ▼1.5 5,404 ▼21.8 1,907 ▼10.4 17,271 ▼8.0
2021年度 4 7,996 20.7 6,561 1.4 2,497 32.5 19,700 12.6
5 6,937 24.6 5,865 2.8 2,146 6.0 17,016 6.7
6 7,981 43.0 6,340 ▼2.8 2,216 2.5 18,997 12.7
7 7,353 48.6 5,557 ▼6.6 2,101 2.8 17,173 7.8
8 6,834 28.8 5,535 3.2 2,345 22.5 16,871 12.3
9 8,231 29.1 6,063 ▼0.4 2,154 6.2 18,815 13.5
2021年度(4~9月) 45,332 31.8 35,921 ▼1.4 13,459 11.6 108,527 11.0
2021年(1-9月) 66,377 19.1 52,892 ▼6.9 19,192 4.1 159,747 4.3

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
芝浦1丁目計画のツインタワーのS棟、清水建設で着工
S造・一部SRC造・RC造、地上43階、延床27万超平米

野村不動産とNREG東芝不動産、JR東日本による「芝浦1丁目計画」(港区芝浦1-1-1ほか)は国家戦略特別区域の特定事業として建設に入った。この建設計画はNREG東芝不動産の「浜松町ビルディング(東芝ビルディング)」および、JR東日本が保有のカートレイン乗降場跡地を一体とした敷地面積 4ヘクタール超の土地に、約10年かけてオフィ ス・ホテル・住宅・商業施設などからなるS棟とN棟の超高層複合ビルを建設する。
建設規模は建築面積約2万8,192平方メートルに、▽S棟がSRC造・S造・RC造、地下3階・地上43階建て(高さ約235メートル)、用途は事務所、商業施設、ホテル、駐車場の複合ビルとなる。
▽N棟がSRC造・S造・RC造、地下3階・地上45階建て(同235メートル)、延べ床面積約27万平方メートル、同28万平方メートル。用途は事務所、商業施設、住宅、駐車場などの複合ビル。2棟は低層階と地下階で繋がり、総延べ床面積約55万1,438平方メートル。
設計は、槇文彦氏の槇総合計画事務所と清水建設、日建設計、ARUP(アラップ)の共同設計。▽S棟は清水建設によって10月に着工し、25年3月の完成をめざす。▽N棟の施工者は未定で、既存施設解体が26年1月に着手し、27年4月に着工し、31年3月完成となっている。
同計画は東京湾岸部の新たなシンボルになると共に賑わい創出と国際競争力の向上、未来につながる街づくりとなる。その特徴は、▽JR線の浜松町駅南口の東西通路拡幅とバリアフリー化や歩行者専用道路とすることで周辺地区との回遊性強化する。▽ビジネス交流を促進する「アフターコンベンション施設」や「次世代エネルギー交流施設」を整備し、 水辺環境や眺望を活かした国際水準のホテル施設による国際ビジネス、観光拠点の形成。▽芝浦運河の船着場やテラス、広場などによる憩いの水辺空間演出など観光スポットをめざす。
▽大地震など災害時の帰宅困難者受け入れや自立・分散型エネルギーシステムの導入。また、非常時のエネルギー供給によるJR線浜松町駅、ゆりかもめ線の竹芝駅・日の出駅周辺の防災対応力を強化する。芝浦地域冷暖房区域内のエネルギーネットワークを構築し、環境負荷の低減や二酸化炭素の排出抑制を図るとしている。


三井不動産の門真大型商業施設は竹中・綿半で着工
S造・4階建て、総延べ床20万平米、23年春完成

 三井不動産は門真市のパナソニック門真工場跡地(松生町204-3ほか、敷地面積は16万4,000平方メートル)で計画している大型商業施設「門真市松生町商業施設計画」の建設工事を10月末に着工した。このプロジェクトは、店舗施設や駐車場など総延べ床面積約20万平方メートルとなる。
A街区(敷地11万6,700平方メートル)に建設する商業施設の店舗棟はS造、4階建て、延べ床面積約10万2,800平方メートルの規模。約250店舗が入居する。建物内外にイベントスペースを設けてにぎわいを創出し、屋外にコミュニケーション広場を設ける。エレベーターは非接触ボタンの採用など感染症対策にも力を入れる。
店舗棟の東西側に立体駐車場棟をそれぞれ1棟ずつ建設する。規模はS造、地上6階建て2棟、同9万4,000平方メートル。駐車場の収容台数は約4,300台となる。
基本設計は石本建築事務所。実施設計・監理は竹中工務店が担当。店舗棟建設を竹中工務店が担当し、立体駐車場棟を綿半ソリューションズが担当する。2023年春完成の予定。
敷地北側のB街区(敷地面積5,600平方メートル)には、三井不動産レジデンシャルが11階建て155戸の大規模分譲マンションの建設を予定し、23年度竣工をめざす。南側のC街区(同3万4,000平方メートル)はコストコホールセールジャパンが店舗施設の建設を計画している。また、隣接するD街区(同7,700平方メートル)は東和薬品がオフィスを計画している。
三井不動産は17年3月にパナソニック工場跡地を取得した。京阪電鉄と大阪モノレールの門真市駅から徒歩8分と至便な立地で、近畿自動車道の門真ICから約500メートルと地の利も良く大型商業施設とした。


連載/あの人、この人(20)
脱サラ後、波乱に満ちたYさん

1988年の夏。編集企画でお世話になっているN設計(文京区)監理部・技術長のUさんが私に、「フィリピンのグランド・スパン・デベロップメント社(GSD)で1年ほど建築鉄骨の技術指導をしていたYさんが春に帰国したが仕事が無く、技術講習などの講師で凌いでいる。彼の宣伝も兼ねて『月刊 T技術』誌で鉄骨施工や品質管理に関する連載企画ができないか」との相談だった。
Uさんの話によると、YさんはK重工業・野田工場鉄構事業部の技術者だった。大手橋梁・鉄構ファブ仲間の技術者数人で鉄骨需要増と建築物の大型・高層化に伴い、鉄骨ファブ向きの技術指導業務が増えることを見込んで、仲間と一緒に辞め(脱サラ)鉄骨コンサルタント会社を興す計画を立てた。
Yさんは87年4月に<ファーストペンギン>よろしく、18年勤めたK重工を辞めた。だが、約束した仲間は誰ひとり辞めなかった。仲間から梯子を外され仕方なく、翌月<ひとり鉄構コンサル会社>のT企画を興すが仕事がない。見かねたUさんが「S製鉄・エンジニアリング本部と掛け合い、S製鉄が受注した海外プロジェクトの技術指導員としてフィリピンのGSD社に派遣された」と語ってくれた。
当時、韓国鉄骨の輸入もあり<海外鉄骨問題>が騒がれたが、S製鉄は中国、香港などの建築鉄骨・鋼製橋梁などのプロジェクトを受注すると、その製作を海外ファブに自社の支給材で加工させる<三ヵ国貿易>を盛んにしていた。S製鉄にとってGSD社は有力な協力工場のひとつだった。
後日、編集部を訪ねて来たYさんは、小柄ながら精悍な眼差しの技術者然としていた。自己紹介では、大阪府出身の46年2月11日生れ。69年3月に大阪大学・建築学科卒、同年4月K重工業に入社。鉄構事業部を経て、87年4月退社。同年5月にT企画設立の経歴。
そして現在は「S製鉄の委託でGSD社に赴任し、今年6月に帰国。本業は鉄構の設計・製作、検査・試験などのコンサルタント業務ですが、帰国間もないのでコンサルは皆無」と率直な話と誠実な人柄に好感が持たれた。連載企画を話し合った結果、編集スタッフに代わって全国の堅実なH、Mグレード・ファブの工場を訪れ、鉄構コンサルが見たルポルタージュ(ルポ)企画となり、題して『わが国唯一の鉄構コンサルタントYの工場訪問』を11月号から連載することで合意した。
こうした企画は編集記者でも訪問するファブを選定し、先方と交渉・承諾を得て、日時を決めるまでが大変で、取材内容もさまざまに制約もある。慣れない技術者が行うとなると一苦労だ。更に取材後の原稿書き、写真選択とキャプション記載とかなりの編集経験が必要だ。未経験のYさんがどこまでできるか、合意したものの大いに不安だった。だがYさん本人は自信に満ちていた。後日、提稿された原稿(文章)、写真(プリント)も予想よりも良く、まったく不安が解消された。
鉄骨ファブ団体・全構連の自主認定制度が82年に<建設大臣認定>となり、連載『Yの工場訪問』はグレード・アップをめざすファブにとって、ソフト(技術・技能資格取得)とハード(工場設備増強)の手本になるため、また読者も他の工場の規模や技術・経営指向などの内容が参考になるため号を追うごとに好評を頂くようになった。本誌の評価もYさんの知名度も上がってきた。
連載は有力ファブ20社となった。第1回は88年11月号のY建設工業・古河工場(茨城)からはじまり、最終回は90年4月号のY鉄工所・松茂工場(徳島)となった。鉄構コンサルの目線でみる工場規模・設備、製作工程・品質管理・検査など写真・図解で分かりやすい。また、応対した社長・役員、工場長・技術者らのコメントも的確な記述となっている。末尾にYさんの<一言コメント>で締めくくる感想文が良かった。海外ファブ(韓国・英国)の番外編を入れ22回連載となった。編集部としては続行を希望したがYさんの本業のコンサルが忙しくなり、惜しまれつつも終了することになった。
この企画のほか、巻頭座談会の司会やコメンテーターとして出席して頂いた。さらに読者の質問・相談に回答する『技術Q&A』の執筆陣にも加わり、平易な回答を得意とした。89年11月にYさんをコーディネーターにした『英国鉄構業界視察とバルセロナ五輪施設見学』を本誌と共同で企画した。参加者は設計事務所、ファブ、鋼材・溶接商社、副資材メーカーなど11名。この視察には私も参加した。
英国ファブは、日本のMグレードクラスのAMCO社とHグレードクラスのWARD社の工場をYさんの解説で見学。英国鉄構協会との懇談ではYさんの進行・通訳で進められた。市内視察ではロンドンはテムズ川沿いドックランド地区の超高層ビル建設を見聞し、バルセロナは磯崎新・川口衛氏の設計で建設の「スポーツパレス」など五輪施設を見学。パリは新都心のデファンス地区の超高層ビル群やリチャード・ロジャースとレンゾ・ピアノ氏による奇抜な設計の「ポンピドーセンター」などの見学となった。
視察旅行でのホテルは、Yさんとツイン室のためさまざまな話題を交わした。例の<脱サラ>を尋ねると、「(戦後二番目の)大型景気が続き、鉄骨需要も増加(年産700万~800万トン)していた。大臣認定工場が定着し、品質管理や品質検査も厳しくなった。技術屋の役割が十二分にあると見込んで、仲間と独立の計画をした。私が辞める時も(慰留などで)大変難しかった。仲間の(辞められなかった)心情もよく分かるので固執しない」と淡々と語り、仲間に裏切られたといった感情は無かった。
その後、Yさんのコンサル業が多忙を極めようになり疎遠となる。私は94年4月に雑誌編集から専門書籍の制作・出版業務となる。ある日、突然来社したYさんはCAD・CAMセンター(以下、CADセンター)の社長就任あいさつだった。鉄構コンサルから建築鉄骨の施工図、現寸型板、積算リストなどをパーソナルコンピューター(パソコン)で処理するCADセンター社長へと華麗な転身となった。
98年2月に私はK出版を早期退社し、某技術者団体の仕事の傍らHPライターなど文筆業をする。ある時、知人から「CADセンターが倒産し、個人保証をしていたためYさん家(港区・白金)のが取られた」との情報が入った。千葉県内の暮らからCADセンター社長になって高級住宅地・白金に住むことになる。やっと得た邸宅が抵当物件で無くなるとは、まったく不運な巡りあわせと深く同情した。
Yさんに近い知人の話では、「群雄割拠するCAD業界にあってシステムのバージョンアップの遅れと社員が大企業的な甘えもあった。また、2次元図形情報は効率化にとどまりで、3次元のBIM(Building Information Modeling)開発に至らなかったのが致命的だった」。このことが販売低迷の要因となった。社長が鉄構技術者で、先端IT技術の経営には無理があったのかもしれない。
ある場所で偶然にYさんと出会った。「今のご自宅は?」と聞くと、「家が競売物件となり、その競売で息子が買い戻してくれた。今も住んでいる」とのことだった。なんと親孝行な立派な息子と感心した。時間もなく、倒産に至った詳しい経緯には触れずに別れた。
08年11月に山東省の視察に行った時、Yさんが中国・青島市郊外の鉄構ファブで技術指導していると聞いており、皆で出向いた。中国は高層建築ブームが続き、鉄骨重要が急増している。訪問した鉄構ファブも鉄骨、橋梁、プラント架台などの製作に追われていた。Yさんは鉄構コンサルに戻って、工場長・幹部技術者との懇談や巨大工場を案内してくれた。まさしく<水を得た魚>であった。
Yさんの歩みは、87年に大手重工を<脱サラ>し、<一人鉄構コンサル>を興し、CAD販売社長に就任。21年後に再び裸一貫の<ひとり鉄構コンサル>へと戻った。まさに波乱に満ちた人生だ。

【中井 勇】