スノウチニュース<№207> 令和4年1月


【鉄骨需要月別統計】
11月鉄骨需要量は35万3,450トン(前年同月比12.5%増)
21年度(4~11月)は315万6,500トン(前年同期比14.7%増)

国土交通省が12月24日発表した「建築物着工統計調査」の2021年11月着工総面積は10,125千平方メ―トル(前年同月比8.0%増)となり、前年同月比では2ヵ月連続増となった。10,000千平方メートル超は2ヵ月連続増となった。
▽建築主別は、▽公共建築物が356千平方メートル(同8.8%増)となり、同2ヵ月で増加に転じた。▽民間建築物は9,770千平方メートル(同8.0%増)となり、同9ヵ月連続増となった。
▽用途別は、▽居住建築物は6,389千平方メートル(同6.5%増)となり、同9ヵ月連続増となった。▽非居住建築物は3,737千平方メートル(同10.9%増)となり、同2ヵ月連続増となった。
▽構造別は、▽鉄骨建築のS造が3,464千平方メートル(同15.4%増)となり、同11ヵ月連続増となった。▽SRC造が141千平方メートル(同50.5%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少に転じた。
一方、▽RC造が1,747千平方メートル(同16.3%増)となり、同4ヵ月ぶりの増加となった。▽W造が4,675千平方メートル(同3.3%増)となり、同8ヵ月連続増となった。
▽鉄骨需要換算では、S造は34万6,400トン(前年同月比15.4%増)となり、同11ヵ月連続増となった。SRC造は7,050トン(同50.5%減)となり、同1ヵ月で減少となった。鉄骨造の合計では前月比34.8%減の35万3,450トン(前年同月比12.5%増)となった。
なお、21年(1~11月)では、S造が410万3,500トン(前年同期比13.7%増)、SRC造が7万3,900トン(同13.8%減)となり、鉄骨造の合計では417万7,400トン(同13.0%増)となった。
21年度(4~11月)では、S造が310万0,200トン(前年同期比15.4%増)、SRC造が5万6,300トン(同14.3%減)となり、鉄骨造の合計では315万6,500トン(同14.7%増)となった。

20年11月-21年11月 鉄骨需要量の推移

年/月 S造(TON) 前年比(%) SRC造(TON) 前年比(%) 鉄骨造計(TON) 前年比(%)
11 300,000 -14.5 14,300 208.6 314,300 -11.6
12 338,000 -16.1 11,300 109.7 349,300 -14.4
2021/1 318,300 19.6 4,800 -10.0 323,100 19.0
2 308,300 2.8 9,900 -4.9 318,200 2.5
3 376,700 3.6 2,900 -41.4 379,600 2.9
4 387,600 8.3 6,000 -39.7 393,600 8.5
5 387,600 10.1 5,400 -62.6 393,000 7.4
6 412,400 13.0 8,750 106.2 421,150 14.1
7 370,100 4.5 5,450 158.8 375,550 5.4
8 322,500 10.7 3,700 37.0 326,200 11.9
9 342,700 1.7 8,950 -29.0 351,650 0.7
10 530,900 61.7 11,000 105.3 541,900 65.7
11 346,400 15.4 7,050 -50.5 353,450 12.5
暦年計(21/1~11) 4,103,500 13.7 73,900 -13.8 4,177,400 13.0
年度計(21/4~11) 3,100,200 15.4 56,300 -14.3 3,156,500 14.7

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
日建連11月総受注額約1兆0,985億円(前年同月比13.9%増)
民間工事は7,702億2,900万円(前年同月比15.2%増)

 日本建設業連合会(日建連)が12月23日に発表した会員企業95社の2021年11月受注工事総額は1兆0,985億2,600万円(前年同月比13.9%増)となり、前年同月比で3ヵ月連続増となった。うち民間工事が7,702億2,900万円(同15.2%増)となり、同3ヵ月連続増となった。官公庁工事が2,704億3,900万円(同25.4%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。
国内工事が1兆0,420億4,800万円(同17.3%増)となり、同3ヵ月連続増となった。民間工事の7,702億2,900万円のうち、▽製造業が2,023億6,300万円(同26.6%増)となり、同2ヵ月で増加となった。▽非製造業が5,678億6,600万円(同11.6%増)となり、同3ヵ月連続増となった。
官公庁工事の2,704億3,900万円のうち、▽国の機関が1,653億1,400万円(同3.6%増)となり、同5ヵ月ぶりの増加となった。▽地方の機関が1,051億2,500万円(同87.5%増)の大幅増となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽その他が13億8,000円(同68.0%減)の大幅減となり、同5ヵ月連続減となった。▽海外工事が564億7,800万円(同25.9%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。
21年度(4~11月)の受注工事総額が8兆3,429億6,900万円(前年同期比12.3%増)となり、▽民間工事額が5兆8,788億9,000万円(同16.0%増)、▽官公庁工事が2兆2,561億9,000万円(同3.1%増)、▽海外工事が1,920億3,500万円(同35.1%増)となった。
一方、11月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道が490億5,000万円(前年同月比108.1%増)の大幅増となり、前年同期比で4ヵ月連続増となった。▽東北が768億6,800万円(同17.2%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽関東が4,110億7,900万円(同0.5%減)の微減となり、同2ヵ月連続減となった。▽北陸が510億3,500万円(同39.4%増)となり、同2ヵ月連続増となった。
▽中部が1,317億4,500万円(同18.8%増)となり、同6ヵ月連続増となった。▽近畿が1,562億0,800万円(同7.5%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。▽中国が396億8,700万円(同63.7%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽四国が195億2,600万円(同42.3%増)となり、同7ヵ月連続増となった。▽九州が1,068億3,800万円(同234.4%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加に転じた。


11月粗鋼生産804万トン(前年同月比10.7%増)
10月普通鋼建築用55.8万トン(同6.4%増)

日本鉄鋼連盟は12月22日に発表した2021年11月の▽銑鉄生産は569.7万トン(前年同月比10.9%増)となり、前年同月比では9ヵ月連続の増加となった。▽粗鋼生産は804.0万トン(同10.7%増)となり、同9ヵ月連続の増加となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が583.3万トン(同10.3%増)となり、9カ月連続の増加。▽電炉鋼が220.7万トン(同11.7%増)となり、同9ヵ月連続の増加となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が622.0万トン(同8.4%増)となり、9ヵ月連続の増加。▽特殊鋼が182.0万トン(同19.4%増)となり、同9ヵ月連続の増加となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は707.9万トン(同8.2%増)となり、同9ヵ月連続の増加となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は555.9万トン(同7.7%増)となり、同9ヵ月連続の増加となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は152.0万トン(同9.8%増)となり、同11ヵ月連続の増加となった。
一方、10月の普通鋼鋼材用途別受注量では、▽建築用は55万7,842トン(同6.4%増)となった。うち▽非住宅が38万8,494トン(同4.4%増)、▽住宅が16万9,348トン(同11.4%増)となった。
21年度4~10月の建築用は353万8,944トン(前年同期比3.7%増)となった。うち▽非住宅が258万9,326トン(同6.8%増)となり、▽住宅が94万9,618トン(同3.9%減)となった。
21年1~10月の建築用は496万0,538トン(前年同期比2.6%増)となった。うち▽非住宅が364万6,725トン(同4.7%増)となり、▽住宅が131万3,813トン(同2.8%減)となった。


10月溶接材料の出荷量1万8,118トン(前年同月比7.2%増)
21年度(4~10月)の出荷量12万6,690トン(前年同期比10.4%増)

日本溶接材料工業会が発表した2021年10月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)では、生産量は1万8,810トン(前年同月比9.9%増)の前年同月比で6ヵ月連続増となり、出荷量は1万8,118トン(同7.2%増)の同7ヵ月連続増となった。在庫量は1万5,125トン(同19.8%減)となり、同12ヵ月連続減となった。
生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が7,822トン(同11.8%増)の同7ヵ月連続増。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が6,430トン(同10.3%減)の同22ヵ月ぶりに増加。▽被覆アーク溶接棒が2,471トン(同43.0%増)の大幅増となり、同3ヵ月連続増となった。その他を含む生産量計では1万8,810トン(同9.9%増)となった。
出荷量の主な品種は▽SWが7,377トン(同9.9%増)の同7ヵ月連続増。▽FCWが6,320トン(同9.8%増)の同1ヵ月で増加。▽溶接棒が2,373トン(同24.9%増)の大幅増となり、同7ヵ月連続増となった。その他を含む出荷量計では1万8,118トン(同7.2%増)となった。
在庫量の主な品種は▽SWが5,176トン(同23.9%減)の同10ヵ月連続減。▽FCWが5,158トン(同27.7%減)の同11ヵ月連続減。▽溶接棒が2,825トン(同8.4%増)となり、同14ヵ月ぶりの増加。その他を含む在庫量計では1万5,125トン(同19.8%減)となった。
21年度(4~10月)の生産量は12万4,794トン(前年度同期比10.7%増)となり、出荷量は12万6,690トン(同10.4%増)となった。また、21年(1~10月)の生産量は17万4,910トン(前年同期比3.2%増)となり、出荷量は17万7,865トン(同4.6%増)となった。
なお、財務省の貿易統計による輸出量は2,802トン(前年同月比23.2%増)となり、輸入量は5,407トン(同16.9%増)となり、輸出入とも大きく伸長した。

20年10月-21年10月 溶接材料月別実績表

生産量
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比% フラックス入りワイヤ 前年比% 被 覆
溶接棒
前年比% 合 計 前年比%
2020年 10 6,997 ▼22.9 5,829 ▼27.9 1,728 ▼25.6 17,120 ▼23.5
11 7,528 ▼16.6 5,855 ▼20.3 1,845 ▼9.2 17,429 ▼17.8
12 6,637 ▼24.1 5,297 ▼27.1 1,660 ▼30.0 16,014 ▼25.3
2021年 1 6,028 ▼18.5 5,346 ▼20.2 1,803 ▼13.5 15,419 ▼17.9
2 6,781 ▼8.1 5,644 ▼16.9 1,982 2.2 16,888 ▼8.0
3 7,372 ▼3.6 5,788 ▼20.2 2,157 ▼7.0 17,809 ▼9.2
2021年度 4 7,426 4.2 6,047 ▼10.7 2,145 0.0 18,294 ▼2.3
5 7,329 32.8 5,302 ▼0.7 1,994 15.5 16,917 14.7
6 7,947 58.7 6,488 ▼3.8 2,432 14.7 19,285 17.5
7 7,688 51.0 5,861 ▼5.7 2,217 ▼0.4 17,975 11.1
8 6,372 25.8 4,586 ▼6.8 2,406 49.0 15,365 11.1
9 7,512 31.4 6,133 ▼0.8 2,404 35.4 18,148 15.3
10 7,822 11.8 6,430 10.3 2,471 43.0 18,810 9.9
2021年度
(4~10月)
52,096 27.7 40,847 ▼2.7 16,069 20.5 124,794 10.7
2021年
(1-10月)
72,277 14.3 57,625 ▼8.1 22,011 11.8 174,910 3.2

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

生産量
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比% フラックス入りワイヤ 前年比% 被 覆
溶接棒
前年比% 合 計 前年比%
2020年 10 6,710 ▼21.2 5,757 ▼26.1 1,900 ▼11.0 16,897 ▼23.2
11 7,171 ▼10.5 5,929 ▼18.9 1,814 ▼11.7 17,209 ▼15.0
12 7,143 ▼16.9 5,615 ▼25.1 1,918 ▼23.9 17,022 ▼21.3
2021年 1 6,932 ▼1.0 5,878 ▼15.3 1,838 ▼17.4 17,053 ▼9.1
2 6,847 ▼1.1 5,689 ▼12.7 1,988 ▼2.2 16,851 ▼5.4
3 7,266 ▼1.5 5,404 ▼21.8 1,907 ▼10.4 17,271 ▼8.0
2021年度 4 7,996 20.7 6,561 1.4 2,497 32.5 19,700 12.6
5 6,937 24.6 5,865 2.8 2,146 6.0 17,016 6.7
6 7,981 43.0 6,340 ▼2.8 2,216 2.5 18,997 12.7
7 7,353 48.6 5,557 ▼6.6 2,101 2.8 17,173 7.8
8 6,834 28.8 5,535 3.2 2,345 22.5 16,871 12.3
9 8,231 29.1 6,063 ▼0.4 2,154 6.2 18,815 13.5
10 7,377 9.9 6,320 9.8 2,373 24.9 18,118 7.2
2021年度
(4~10月)
52,709 28.2 42,241 0.1 15,832 13.4 126,690 10.4
2021年
(1-10月)
73,754 18.2 59,212 ▼5.3 21,565 6.0 177,865 4.6

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
横浜市旧庁舎街区活用(複合タワー)は鹿島・竹中JV
S造・一部SRC造、地上34階建て、延べ床12万平米

JR根岸線・関内駅前の旧横浜市庁舎の活用事業計画では、旧庁舎(行政棟)の活用と新たに地上33階建ての超高層複合タワーなどで構成する再開発が8月に着工する。開発者は、三井不動産が代表の企業コンソーシアム(KANNAI8/カンナイエイト)に鹿島建設、京浜急行電鉄、第一生命保険、竹中工務店、ディー・エヌ・エー、東急、関内ホテルマネジメント(星野リゾート100%出資会社)で構成。
旧庁舎跡地(建設地、横浜市中区港町1-1ほか、敷地面積約1万6,523平方メートル)に建設される超高層タワービルは、S造・一部SRC造、地下1階・地上34階建て(高さ約180m)、延べ床面積約11万7,720平方メートルの複合施設。 設計・施工を鹿島・竹中JV。
旧行政棟はSRC造、地下1階・地上8階建て、同2万5,500平方メートルの改修工事でホテル棟として活用する。その他、LVA棟(商業施設)S造、地上2階建て2棟、同6,700平方メートルを合わせて、設計・施工は鹿島・竹中JV。2022年8月に着工し、全体完成は25年12月の予定。 なお、敷地の貸付期間は建設・撤去工事期間の7年3ヵ月と運営期間70年間の契約で、年間貸付料は2億1,000万円となる。
超高層タワービルに入居する主な施設は、▽3階に新産業創造拠点(横浜最大級のイノベーション拠点、延べ床面積約3,600平方メートル)▽4~5階にエデュティメント施設(テクノロジー、教育、スポーツ体験、同6,800平方メートル)▽6~7階にウエルネスセンター(市民の健康増進やスポーツ振興に寄与、同4,700平方メートル)▽11~14階に大学施設(大学誘致による産学連携の促進、同1万2,800平方メートル)▽15~30階にイノベーションオフィス(グローバル企業のイノベーションセンターを中心にした業務機能、同5万1,900平方メートル)。
旧行政棟(ホテル棟)は78年の開港100年記念事業として建設された。建築家、村野藤吾の遺作から日本建築学会は保存活用を要望し、市は企業コンソーシアムに7,700万円で売却。改修工事により▽1~2階に商業施設、▽3~8階に星野リゾートによるホテル施設となり、24年6月完成予定。
超高層タワーとホテル棟のほか、LVA棟2棟は▽ライブビューイングアリーナ(DeNAが運営する国内最大ビジョンを設けたライブ発信施設)、▽ライブ書店(有隣堂が運営する「横浜の発展史」を伝承する文化交流拠点)となり、活用事業計画は国際的な産学連携施設と観光・文化の集客施設の拠点となる。


連載/あの人、この人(21)
国技館・大鉄傘で播さんを想う

新春9日から「大相撲令和4年初場所」が両国国技館で行なわれる。横綱・照ノ富士を筆頭に館内を沸かせる取り組みを期待したい。テレビ観戦では国技館天井の優勝額が映り、鉄骨架構も映し出されると、この大鉄傘の設計をした今は亡き、異才の構造家・播繫(ばん・しげる)さんを思い出させる。
現在の国技館は1981年に計画され、84年11月30日に竣工した。設計は杉山隆建築設計事務所と鹿島建設が担当で、施工は鹿島建設。建築規模は地下2階・地上3階建て、延べ床面積約3万5,700平方メートル(収容人数約1万1,100人)の規模となっている。
初代の国技館は回向院境内で辰野金吾の設計によって建てられ関東大震災で再建し、58年まで使われた。その後、日本大学の講堂として使用される。二代目の「蔵前国技館」は84年まで使われた。春日野理事長(横綱・栃錦)によりJR両国駅前に三代目の「両国国技館」が実現した。この時の構造設計を担当したのが鹿島建設・設計エンジニアリング総本部構造設計部長の播さんでした。
播さんの経歴は、38年2月22日生まれの福岡県出身。63年3月に日本大学理工学部建築家学科卒、同年鹿島建設入社。80年技術長を経て86年小堀鐸二研究所兼務。89年設計部副部長を経て、KAJIMA DESIGN構造設計部長。91年設計・エンジニアリング総事業本部長。定年後の98年播設計室設立。耐震構法SE構法を開発し、同工法による木造建築のエヌ・シー・エス顧問も務める。
主な受賞作品は、▽JSCA賞「あきたスカイドーム」(91年)▽松井源吾賞「大阪東京海上ビルディング」(92年)▽日経BP技術賞「出雲ドームの架構技術」(93年)▽日本建築学会賞「出雲ドームなど一重膜建築の開発」(97年)▽英国技術者協会特別賞「長野オリンピック記念アリーナ(エムウェーブ)」(97年)▽日本鋼構造協会賞・日本建築学会作品選奨「長野オリンピック記念アリーナ」(98年)▽日本建築家協会賞「沖縄県立博物館・美術館」(08年) など多数。
私が播さんと出会ったのは、『T技術』誌の91年10月号巻頭座談会「建築家は構造技術者に何を求めるか!-デザイン・プロセスにおけるエンジニアの役割-」の司会をお願いした時で、肩書や実績に似合わない気さくな印象を受けた。こちらの主旨を述べると、即座にストーリーを語り、人選もして頂いた。播さん(当時53歳)の推薦もあって、第一線で活躍している建築家・構造家の佐々木睦郎(45歳)、難波和彦(44歳)、棚町弘志(47歳)、今川研修(44歳)、小林克弘(36歳)各氏となった。
座談の冒頭に、「僕は、本当はデザイン(建築)をやりたかった。僕らの年代での著名な建築家は村野藤吾、前川國男、丹下健三、芦原義信、菊竹清訓など著名な先生がおられ、その先生方の建築センスまでは絶対にいきそうにもない(笑い)。構造なら数学もできたし、組み立てることも好きなので、構造技術者になった(後略)」と述べ、座を和ましながら構造技術者と建築家との思考について言及した。
播さんの論旨は、80年代からの建築ブームによる国内外の建築現象に触れ、「これからの建築は、感性と技術が融合し、それが良質な空間であって、建設コストのリーズナブルが求められてくると思う。空間をつくっていく時の建築家と構造家の葛藤が、デザイン・プロセスにおける構造技術者の役割だと、僕は思う」と見解を述べ、建築家と構造家の役割についての論議が交わされた。
予定時間を大幅に超える座談となり、また播氏のモダン建築、ポストモダン建築、ハイテク建築のスケッチや参加者の建築作品の写真、鉄骨ディテール図など提供があり、建て頁8ページの予定が13ページになったが、読者からは好評を得た。播氏の意気込みが見事に当たった企画となった。
その後、播さんとは接触がなかったが、連載企画「リレーエッセイ」が60回となり、心機一転するため「新・リレーエッセイ≪建築と私≫」で再スタートをする。その初回を播さんに登場して頂きたく、93年6月中旬にアポイントを取った。約束の時間に1時間ほど遅れたが、「僕も経験した」と言って、にこやかに応対して頂き快諾された。リレー先をお願いすると、「僕とは字が違うが同姓同名の<紙の建築家>坂茂さんにお願いした」と、絶妙なバトンタッチとなった。
その播さんのエッセイは(93年8月号掲載)は、『力の流れとデザイン -見せる構造-』と題し、<見せる構造とは、システムを単に装飾として用いるのは構造の視点から見ればナンセンスと言うほかない。まさに見せかけのハイテクデザインである。構造とは、もっと本質的なものであるべきで、ものを作れば必ず重力があるわけで、誰が見ても構造のシステムが地面に力を伝えていることが理解でき、それを合理的に美しく見せるのが構造デザインだと思う>と構造技術の神髄を問いかけている。
その後、播さんの作品論文や各賞の受賞記事などによる取材で会うことが度々あり、洒脱な人柄から日大・建築科卒で活躍中の斎藤公男、渡辺邦夫、中田捷夫、石塚馨氏ら建築家・構造家とは播氏と共通の交友でもあり、建築作品の取材や編集企画などでの情報提供をして頂けた。
そうした雑談中に私の二人の娘が適齢期に近づいており、「(鹿島建設に)いい人居ませんか」と言ったところ、「僕も二人の娘が独身だよ」と言われ、娘を持つ親の心情を語り合ったこともあった。
両国新国技館の建設では、「僕が春日野理事長と会った時、理事長は『前の国技館の大鉄傘のように歓声が轟き、響くような鉄骨づくりにしてほしい。大相撲は興行であり、観客の声援が力士を奮い立たせる大鉄傘にしてほしい』と強く要望され、それこそ構造家の腕の見せ所だった」と語り、「屋根架構鉄骨の力の流れをどのように伝えるか、見せる構造としての空間の美しさ、快適さ、緊張感などをデザインすることを主眼にした」と鉄骨架構に播氏の構造技術の粋が生かされる。
鹿島建設HPの『鹿島の軌跡』で、新国技館建設の経緯が紹介されている。<鹿島建設の当初出した工事の見積もりは161億5,000万円だったが、二子山と二人で鹿島建設の社長に会い、端数の11億5,000円を値引きさせて150億円に負けてもらった。(春日野理事長が鹿島の社長に)「相撲取りは相手を負かすのが仕事です。今日は負かしに来ました。(中略)150億円もの建設費は武蔵川理事長の時代から続く徹底した経費節約があって初めて完全に用意できるものであった。(中略)蔵前の土地を売って両国の土地に買い替え、差額で建設費の一部を手に入れることができた>と理事長談話を紹介している。大鉄傘づくりの要望を語る理事長と播さんとのやり取りを彷彿させる。
97年に独立して「播設計室」を設立。その後も「岡山ドーム」「埼玉県立武道館」などの代表作がある。一戸建て住宅向けの耐震構法「SE構法」を開発するなど、木造住宅の耐震化にも取り組んだ。
播さんは、丹下健三氏が設計した「代々木体育館」に触発されて構造設計の道を志した。「大事なことは構造の建築確認が取れるかどうかではなく、建築づくりのシステムを提案できるかどうか。設計基準から逸脱しないと、本当の構造設計者とはいえない」と話し、構造設計者の社会的地位を上げるための日本建築構造技術者協会(JSCA)などの活動などにも力を注いだ。
大相撲を見るたびに、播さんが語った「国技館完成後に、理事長から『私が望んだ通りの大鉄傘だ。よくやってくれた』と喜んで頂けたことが、何よりのご褒美だと思っている」と語ったことが、忘れられない。コロナ禍が収束し、観客の声援が大鉄傘に響き渡る大相撲場所に戻って欲しい。

【中井 勇】