スノウチニュース<№165>平成30年7月

【鉄骨需要月別統計】
5月の鉄骨需要量43万5,700トン(前年同月比2.0%減)
18年(1-5月)208万2,300トン(前年同期比0.4%減)

国土交通省が6月29日発表した「建築物着工統計調査」の2018年5月着工総面積は1万0,912千平方メ―トル(前年同月比2.7%減)の前年同月比で2ヵ月連続減となるものの、1千万平方メートル台を維持した。

▽建築主別は、公共建築物が435千平方メートル(同17.4%減)の同2ヵ月連続減となる。民間建築物は1万0,477千平方メートル(同2.0%減)の同2ヵ月で減少に転じたが、2ヵ月連続1千万平方メートル台となった。

▽用途別は、居住建築物は6,719千平方メートル(同0.0)の前年同月と同率になる。非居住建築物は4,193千平方メートル(同6.8%減)となり、同3ヵ月で減少に転じた。

▽構造別は、鉄骨系のS造は4,275千平方メートル(同1.9%減)の同2ヵ月連続減となった。SRC造は164千平方メートル(同6.8%減)の同3ヵ月連続減となった。一方、RC造は1,854平方メートル(同6.2%減)の同3ヵ月連続減となる。木造は4,538千平方メートル(同2.2%減)の同12ヵ月連続減となった。

▽鉄骨需要換算では、S造は42万7,500トンとなり、前年同月比で2ヵ月連続40万トン台を確保した。SRC造は8,200トンと1万トン割れが同2ヵ月連続となった。鉄骨計では同2.0%減の43万5,700トンとなり、前月比では0.7%減となったものの、5ヵ月連続で40万トン台を維持した。

18年1月~5月累計では、S造201万6,900トン(前年同期比1.0%減)、SRC造6万5,400トン(同21.4%増)、鉄骨合計208万2,300トン(同0.4%減)と微減ながら月平均では41万超で推移している。

17年5月-18年5月 鉄骨需要量の推移

S 造 前年比 SRC造 前年比 鉄骨造合計
5 435,600 -6.8 8,800 -55.7 444,400
6 479,500 5.2 9,400 -1.2 488,900
7 434,100 11 10,800 148.5 444,900
8 459,500 -7.2 9,800 306.9 469,300
9 440,900 0.2 8,800 -2.5 449,700
10 410,300 2.2 12,300 116.8 422,600
11 452,700 9.0 12,900 296.5 465,600
12 365,200 -10.4 6,350 -27.4 371,550
18/1 396,000 -7.1 5,900 -7.7 401,900
18/2 369,500 -7.6 34,050 44.9 403,550
18/3 391,600 15.5 10,600  94.6 402,200
18/4 432,300 -0.7 6,650 -31.6 438,950
18/5 427,500 -1.9 8,200 -6.8 435,700

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
日建連18年5月受注額約9,500億円(前年同月比14.7%減)
民間工事額約6,927億円(前年同期比3.7%減)

日本建設業連合会(日建連)が6月28日に発表した会員企業96社の2018年5月受注工事総額は9,500億0,700万円(前年同月比14.7%減)となった。うち民間工事は6,927億4,100万円(同3.7%減)の前年同月比3ヵ月で減少に転じた。官公庁工事は2,391億3,400万円(同29.9%減)の大幅減となり同1ヵ月で減少に転じた。

国内工事は9,343億6,500万円(同12.1%減)となり、同1ヵ月で減少に転じた。民間工事は6,927億4,100万円のうち、▽製造業が2,059億6,900万円(同40.3%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽非製造業は4,867億7,200万円(同15.0%減)の同1ヵ月で減少となった。

官公庁工事は2,391億3,400万円のうち、▽国の機関が1,549億0,800万円(同29.5%減)の大幅減の同5ヵ月ぶりに減少となった。▽地方の機関は842億2,600万円(同30.8%減)の大幅減の同7ヵ月連続減となる。▽その他が24億9,000万円(同44.1%増)の大幅増となり、同5ヵ月連続増となった。なお▽海外工事は156億4,200万円(同69.5%減)の同2ヵ月連続の大幅減となった。

一方、地域ブロック別18年5月分の受注工事額は、▽北海道531億4,200万円(前年同月比114.5%増)の大幅増となり、前年同期比で2ヵ月連続増となる。▽東北1,156億0,700万円(同44.3%減)の同1ヵ月で減少に転じた。▽関東3,744億4,100万円(同27.1%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減となった。▽北陸267億3,800万円(同10.6%増)の同2ヵ月ぶりに増加となった。

▽中部759億0,100万円(同32.7%増)の大幅増の同3ヵ月連続増となった。▽近畿1,700億1,100万円(同30.7%増)の大幅増となり、同2ヵ月で増加に転じた。▽中国306億5,800万円(同13.7%増)の同4ヵ月ぶりに増加となった。▽四国195億4,300万円(同0.3%増)の微増ながら同2ヵ月ぶりに増加となる。▽九州683億0,400万円(同17.1%増)の同5ヵ月連続となった。

地域ブロックにおける5月の前年同月比増加は北海道、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州74ブロックで、四国以外は2桁以上の大幅増となった。同減少は東北、関東の2ブロックの大幅減となった。

5月粗鋼生産909.3万トン(前年同月比1.8%増)
普通鋼鋼材の4月建築用56.5万トン(同10.3%増)

日本鉄鋼連盟は6月21日に発表した2018年5月の鉄鋼生産は、銑鉄、粗鋼、熱間圧延鋼材のいずれも前月比、前年同月比とも増加した。▽銑鉄生産は680.7万トン(前年同月比1.6%増)となり、前年同月比では2ヵ月ぶりの増加となった。▽粗鋼生産は909.3万トン(同1.8%増)となり、同2ヵ月ぶりの増加となった。

炉別生産では、▽転炉鋼が689.0万トン(同1.9%増)の同2ヵ月ぶりの増加、▽電炉鋼が220.3万トン(同月1.7%増)の同20ヵ月連続増となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が677.5万トン(同0.8%増)の同2ヵ月ぶりの増加、▽特殊鋼が231.8万トン(同4.8%増)の同7ヵ月連続増となった。

▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)生産は785.8万トン(同1.1%増)となり、同2ヵ月ぶりの増加となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は605.3万トン(同0.2%減)の同2ヵ月連続減となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は180.5万トン(同5.8%増)の同5ヵ月連続増となった。

▽普通鋼鋼材用途別受注量の4月は、▽建築用は56万5,373トン(同10.3%増)となった。うち▽非住宅用は40万8,129トン(同14.9%増)、▽住宅用は15万7,244トン(同0.0%)となった。

4月溶接材料の出荷量2万0,553トン(前年同月比4.0%減)
18年1~4月の出荷量8万1,669トン(前年同期比3.1%減)

日本溶接材料工業会がまとめた2018年4月の溶接材料生産・出荷・在庫実績によると、生産量は前年同月比で2.6%増の2万0,428トンの2ヵ月連続増となった。また、出荷量は同4.0%減の2万0,553トンで辛うじて2万トン台を維持した。在庫量は6.7%減の1万7,498トンとなった。

主要品種の生産量をみると、▽ソリッドワイヤ(SW)は7,765トン(前年同月比6.0%増)の同4ヵ月連続増となった。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は7,117トン(同1.4%増)の同4ヵ月ぶりに増加に転じた。▽被覆アーク溶接棒は2,608トン(同2.6%減)の同2ヵ月で減少に転じた。その他の品種を含む生産量計は2万0,428トン(同2.6%増)の同2ヵ月連続増となった。

一方、出荷量では、▽ソリッドワイヤ(SW)が7,960トン(同2.1%減)の同3ヵ月連続減となった。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は7,200トン(同0.1%減)の同4ヵ月連続減となった。▽被覆アーク溶接棒は2,443トン(同16.9%減)の同9ヵ月連続減となる。同出荷量計は2万0,553トン(同4.0%減)の2ヵ月連続減となった。

在庫量では、▽ソリッドワイヤ(SW)は4,516トン(同15.4%減)の同1年3ヵ月連続減となっている。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は6,744トン(同16.4%増)の同6ヵ月連続増となる。▽被覆アーク溶接棒は3,447トン(同32.1%増)の同9ヵ月連続増となる。同在庫量計は1万7,498トン(同6.7%増)の1年8ヵ月ぶりの増加となった。

18年1~4月の生産量では、▽ソリッドワイヤ(SW)は3万1,504トン(前年同期比2.1%増)、▽フラックス入りワイヤ(FCW)は2万8,460トン(同1.7%減)、被覆アーク溶接棒は9,659トン(同5.7%減)となり、その他品種を含む生産量計は8万0,667トン(同0.6%減)となった。

一方、出荷量では、▽ソリッドワイヤ(SW)は3万1,755トン(同2.7%減)、▽フラックス入りワイヤ(FCW)は2万8,545トン(同3.9%減)、被覆アーク溶接棒は9,895トン(同8.3%減)となり、その他品種を含む出荷量計は8万1,669トン(同3.1%減)となった。

【建築鉄骨関連】
日本溶接協会が「溶接マイスター」導入
19年度メドに全国で20人選抜か

日本溶接協会は、このほど2019年度をめどに「溶接マイスター」制度を導入することを明らかにした。同協会が認定している溶接技能者は17年度では▽手溶接8万1,495人▽半自動溶接9万3,440人▽ステンレス鋼溶接5万0,359人、▽その他の溶接5,153人の合計23万0,447人。この23万人の中から卓越した溶接技能・技術をもつ熟練技能者を顕彰するとともに、溶接技能者への人材育成と同協会が行う社会貢献の教育活動などに参画してもらう、としている。

溶接マイスターの実施に当たっては、初年度に全国9ブロック地区で推薦を受けた対象者から約20人を選抜する予定。この対象者は、同協会が各地で開催する高校生はじめ若年層を対象にした溶接教育プログラムの講師として派遣する。こうした実績をベースに溶接マイスターの活用・運用に向けて具体的な制度設計に当たる。

建築鉄骨分野での溶接技能者不足が顕在化し、ベトナム・中国などの外国人技能実習生による対応策だけでは補えず、外国人労働者在留資格創設に期待している一方、溶接マイスター制度の導入により、国内の若年層はじめ外国人を対象にした実技指導により、技能者増加につながることに期待している。

同協会は、ここ数年の傾向は技能受験者数増ながらも合格率は低下傾向にあり、その対応として技能資格の取得可能なレベルに焦点を当て学科・実技教育に乗り出している。今後は、その一環として溶接マイスター制度が重要な役割を果たすものと思われる。

 

【建築プロジェクト】
「奈良県国際芸術村」に伝統工芸など7棟
大日本土木・森下組・八房建設JVで着工

奈良県は歴史文化資源の修復・活用や文化資源交流、人材育成の拠点として整備する「奈良県国際芸術家村」の建設工事に着手した。建設地はJR・近鉄天理駅の南東側約2キロに位置する国道25号に面した天理市杣之内町の私有地(約2.6ヘクタール)に、文化財修復・展示棟や複合棟、伝統工芸施設など7棟で構成する延べ床面積約1万1,000平方メートルの施設を建設する。

同建設計画は「教育・研究」「文化財修復」「人材養成」「交流・憩い」の4ゾーンを設定している。主な施設棟は▽文化財修復・展示棟SRC造、地下1階・地上2階建て、延べ床面積約4,996平方メートル、▽複合棟SRC造、地下1階・地上3階建て、同3,476平方メートル、▽農村交流施設・伝統工芸施設棟S造、地下1階・地上2階建て、同2,021平方メートル、▽情報提供施設(道の駅)・トイレ棟S造、平屋建て、同299平方メートル、ほか付属棟、回廊などとなっている。なお、同施設の南西側には公募による民設民営ホテルの誘致も検討している。

建築物の基本・実施設計を大建設計が担当し、屋外体験などの施設の基本設計をオオバが担当した。施工は大日本土木・森下組・八房建設JVが50億6,866万円で受注。完成は20年5月を予定している。

複合棟では、ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)と連携したMICE(国際的イベント)の誘致、国際的な人材養成研修を展開する。歴史文化資源を題材にした学術会議やフォーラム、シンポジウムなどの開催も予定している。屋外体験施設では発掘体験や遺跡を模したアスレチック場などを設ける。

 

【雑論・正論】
建築のDB方式5割超え

大手ゼネコンなどの建築工事で、設計・施工一括(デザイン・ビルド=DB)方式や特命発注方式が増えている。某建設専門新聞の昨年度調査によると、建築単体の受注工事高に占めるDB方式による受注の割合は前年度より8.5ポイント増の54.5%と5割超となった。特命比率も3.4ポイント増の48.7%と大きな伸びをみせている。

建築工事の大型化を背景に、工期短縮やコスト縮減に優位性のあるDB一括は実施設計から施工・監理までの一貫工程の迅速性が評価され、官公庁工事にも波及している。大手ゼネコン5社の実態では、8割超えのT社や6割台のK社、S社が5割前後となっている。また、準大手ゼネコンの大半が5、6割台を占め、主力物件をマンション建設に置くH社は8割超に達している。一方で、早い段階から施工業者を選ぶ傾向から特命発注となっている。

DB方式には設計団体や一部学識者らの弊害論も噴出している。建築知識を十分に持っている施主(発注者)は多くなく、建築分野の<情報の非対称性>という市場の欠陥を指摘する。建築知識・情報量では受注者(施工者)側が圧倒的な優位にある。平たく言えば、「素人が、知らない事をいいことに胡麻化すこともある」ということだ。

建築におけるDB分離論では、「設計事務所の役割は設計者が発注者側に立ち、専門的な立場や見地で発注者に代わって、施工者と交渉・指導・監理・検証し、情報の非対称性を解消する有効な手段になり得る。設計と施工とは別組織が担当すべきだ」というのである。設計者側からすれば、施工者側を性悪説で見ていることになる。

DB方式の実態は、建設工事費100億円超える大型物件では3、4割占めるとともに、短工期の東京五輪施設や官公庁の大型物件の獲得する動きも目立っている。このDB方式は、施工者にとっては物件数が増えなくとも受注額が増えるため、DB方式では効率の高い物件の商業施設や物流施設、工場建設では更に顕在化している。

一方、特命受注の増加は建築工事の大型化による物件当たりの受注額の増大が要因である。大型化に伴いフロントローディング(業務の前倒し)などの流れを鮮明にし、より早い段階から施工者を特定するためである。特命比率8割超のH社は土地持ち込みによるマンション建設を特命受注につなげる独自商法で実績を維持している。

DB方式や特命発注の問題は、発注者と施工者との<性善説>で成り立っている。双方が満足できればいいが、工事に瑕疵があれば損害賠償訴訟など面倒な問題に発展する。要求品質を確保のために設計事務所を起用するか。または、品質管理も施工者に委託し、コストや工期を優先するかは、偏に発注者側の決断にかかっている。

【加藤 文雄】