スノウチニュース<№166>平成30年8月

【鉄骨需要月別統計】
6月鉄骨需要量47万3,000トン(前年同月比3.3%減)
18年(1-6月)255万5,300トン(前年同期比0.9%減)

国土交通省が7月31日発表した「建築物着工統計調査」の2018年6月着工総面積は1万1,350千平方メ―トル(前年同月比8.2%減)の前年同月比で3ヵ月連続減となるものの、1千万平方メートル台を維持している。

▽建築主別は、公共建築物が456千平方メートル(同11.4%減)の同3ヵ月連続減となる。民間建築物は1万0,893千平方メートル(同8.0%減)の同2ヵ月連続減となったが、同3ヵ月連続1千万平方メートル台。

▽用途別は、居住建築物は6,785千平方メートル(同10.2%の減)の前年同月比で同率も含め同12ヵ月連続減となる。非居住建築物は4,565千平方メートル(同5.0%減)となり、同2ヵ月連続減となった。

▽構造別は、鉄骨系のS造は4,712千平方メートル(同1.7%減)の微減ながら同3ヵ月連続減となった。SRC造は36千平方メートル(同80.9%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減となった。RC造は1,688平方メートル(同24.3%減)の同4ヵ月連続減。木造は4,840千平方メートル(同4.2%減)の同13ヵ月連続減となった。

▽鉄骨需要換算では、S造は47万1,200トンとなり、前年同月比3ヵ月連続で40万トン台を確保した。SRC造は1,800トンとなり、16年8月の2,400トンを下回る低水準となった。鉄骨計では同3.3%減の47万3,000トンとなり、前月比では8.6%増となり、6ヵ月連続で40万トン台を維持した。

18年1月~6月(半年)では、S造248万8,100トン(前年同期比1.1%減)、SRC造6万7,200トン(同6.3%増)、鉄骨合計255万5,300トン(同0.9%減)と微減ながらも月平均では42万5,900トンとなる。

17年6月-18年6月 鉄骨需要量の推移

S 造 前年比 SRC造 前年比 鉄骨造合計
6 479,500 5.2 9,400 -1.2 488,900
7 434,100 11 10,800 148.5 444,900
8 459,500 -7.2 9,800 306.9 469,300
9 440,900 0.2 8,800 -2.5 449,700
10 410,300 2.2 12,300 116.8 422,600
11 452,700 9.0 12,900 296.5 465,600
12 365,200 -10.4 6,350 -27.4 371,550
18/1 396,000 -7.1 5,900 -7.7 401,900
18/2 369,500 -7.6 34,050 44.9 403,550
18/3 391,600 15.5 10,600  94.6 402,200
18/4 432,300 -0.7 6,650 -31.6 438,950
18/5 427,500 -1.9 8,200 -6.8 435,700
18/6    471,200 -1.7 1,800   -80.9 473,000

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
19年度建設投資、2.5%減の55.1兆円と予測
18年度は上方修正し56.5兆円 =建設経済研究所ら=

建設経済研究所、経済調査会は7月26日、最新の建設投資見通しを発表した。それによると18年度の見通しは4月に発表した53兆8,600億円(前年度比1.0%増)を上方修正し、56兆4,800億円(0.8%増)との予測に修正した。19年度の見通しは、前年度比2.5%減の55兆0,900億円とした。なお、18年度予算の執行状況や補正予算の編成などが進めば、次回以降の見通しで上方修正の要素もあるようだ。

政府建設投資は18年度が前年度比1.2%減の22兆7,600億円となり、19年度が5.8%減の21兆4,300億円と見込んでいる。一方、民間住宅投資は18年度が1.3%増の16兆2,000億円となり、19年度が0.9%減の16兆0,500億円と見込んでいる。また、民間非住宅投資(建築・土木)は、18年度が3.1%増の17兆5,200億円となり、19年度が0.5%増の17兆6,100億円と見込んでいる。

民間非住宅投資は企業収益の改善や生産の増加、個人消費の緩やかな持ち直しなどを背景に、企業の設備投資が底堅く推移していくと予測している。事務所、工場、倉庫ともに着工床面積が引き続き堅調に推移すると予測している。店舗など商業施設は14年度以降減少が続いており、今後もその傾向にあるとみられている。

日建連会員102社の17年度決算状況調査
4年連続14兆円超、工事粗利過去5年で最高

日本建設業連合会は法人会員を対象とした2017年度の決算(単体)状況調査結果をまとめた。回答があった会員の売上高総額は前年度比2.7%増の15兆2,070億0,100万円で4年連続14兆円を超えた。同調査は17年4月~18年3月に行われた本決算を対象に実施。会員141社のうち、102社の回答があった。

売上高の総額は公共、民間投資の底堅い推移を受け、2年ぶりに15兆円台を回復した。回答があった102社のうち、増収は64社、減収は38社だった。完成工事高は3.0%増の14兆5,084億8,700万円となり、3年連続で14兆円を超えた。

完成工事総利益(工事粗利)の総額は採算重視の受注戦略の定着などにより、8.0%増の1兆8,883億8,600万円で過去5年の最高値を更新した。工事粗利率(総額ベース)は0.6ポイント上昇の13.0%となり、61社が10%以上を確保している。

工事粗利の総額は、完成工事高の堅調な推移や採算重視の受注の定着などにより、過去5年の最高値をマーク。工事粗利率は3年連続で2桁を維持した。回答社の平均は11.2%で、16%以上は8社だった。

営業利益の総額は、工事粗利の増加を背景に7.2%増の1兆2,331億7,000万円と増加し、売上高営業利益率も0.3ポイント増の8.1%となった。7社が10%以上を確保し、回答社の平均は5.8%だった。

経常利益も7.2%増の1兆2,785億4,000万円となり、売上高経常利益率は8.4%で0.3ポイント上昇した。回答社の平均は6.0%で、10%以上は9社となっている。

当期純利益は3.9%増の8,813億6100万円で、売上高当期利益率は0.1ポイント上昇の5.8%だった。5社が8%以上を確保している。
自己資本は14.2%増の6兆5,750億6400万円、自己資本比率は2.4ポイント上昇の39.7%だった。回答社の平均は43.2%で、55%以上は24社となっている。25%未満は13社で前年度から4社減少した。有利子負債は3.8%減の1兆6,567億0500万円だった。

日建連6月受注額約1兆2,791億円(前年同月比6.5%減)
民間工事額約9,454億円(前年同期比2.2%増)

日本建設業連合会(日建連)が7月27日に発表した会員企業97社の2018年6月受注工事総額は1兆2,790億8,600万円(前年同月比6.5%減)となっり、1兆円台に戻ったものの、前年同月比では2ヵ月連続減となった。うち民間工事は9,453億7,400万円(同2.2%増)の同では1ヵ月で増加に転じた。官公庁工事は2,583億7,300万円(同38.3%減)と同2ヵ月連続の大幅減となった。

国内工事は1兆2,067億0,100万円(同10.2%減)となり、同2ヵ月連続減となった。民間工事の9,453億3,700万円のうち、▽製造業が2,103億2,900万円(同67.2%増)と2ヵ月連続の大幅増になった。▽非製造業は7,350億4,500万円(同8.0%減)の同2ヵ月連続減となった。

官公庁工事の2,583億7,300万円のうち、▽国の機関が1,536億0,700万円(同35.3%減)と2ヵ月連続の大幅減となった。▽地方の機関は1,047億6,600万円(同42.2%減)の大幅減の同8ヵ月連続減となる。▽その他が29億5,400万円(同556.4%増)の大幅増となり、同6ヵ月連続増となった。なお▽海外工事は723億8,500万円(同204.4%増)の同3ヵ月目で大幅増に転じた。

一方、地域ブロック別18年6月分の受注工事額は、▽北海道466億0,300万円(前年同月比5.0%減)となり、前年同期比では3ヵ月目で減少となる。▽東北1,034億8,600万円(同44.1%減)の同2ヵ月連続減となる。▽関東5,343億7,800万円(同13.9%減)となり、同4ヵ月連続減となった。▽北陸529億9,100万円(同14.2%減)の同2ヵ月で減少に転じた。

▽中部1,536億2,100万円(同32.0%増)の大幅増の同4ヵ月連続増となった。▽近畿1,625億8,100万円(同2.7%増)の微減となり、同1ヵ月で減少に転じた。▽中国581億9,400万円(同138.9%増)の大幅増で同2ヵ月連続増となった。▽四国238億4,700万円(同34.2%増)の大幅増の同2ヵ月連続増となる。▽九州709億9,100万円(同30.3%減)となり、同6ヵ月目で減少となった。

地域ブロックにおける6月の前年同月比での増加は中部、中国、四国の3ブロックで、同減少では北海道、東北、北陸、関東、近畿、九州の6ブロックとなった。

6月粗鋼生産876万トン(前年同月比4.2%増)
普通鋼鋼材5月建築用542.9万トン(同12.4%増)

日本鉄鋼連盟は6月20日に発表した2018年6月の鉄鋼生産は、銑鉄、粗鋼、熱間圧延鋼材のいずれも前月比では減少したが、前年同月比は増加した。▽銑鉄生産は635.1万トン(前年同月比1.6%増)となり、前年同月比では2ヵ月連続増となった。▽粗鋼生産は876.0万トン(同4.2%増)の同2ヵ月連続増となった。

炉別生産では、▽転炉鋼が642.9万トン(同2.2%増)の同2ヵ月連続増となり、▽電炉鋼は233.1万トン(同10.1%増)の同21ヵ月連続増となった。

鋼種別生産では、▽普通鋼が662.3万トン(同4.4%増)の同2ヵ月連続増となり、▽特殊鋼は213.6万トン(同3.3%増)の同8ヵ月連続増となった。

▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)生産は785.3万トン(同6.1%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は610.1万トン(同6.6%増)との同2ヵ月連続増となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は175.2万トン(同4.2%増)の同6ヵ月連続増となった。

▽普通鋼鋼材用途別受注量の5月は、▽建築用は54万2,878トン(同12.4%増)となった。うち▽非住宅用は39万7,673トン(同12.6%増)、▽住宅用は14万5,205トン(同11.7%増)となった。

5月溶接材料の出荷量1万9,230トン(前年同月比5.8%減)
18年1~5月の出荷量10万0,899トン(前年同期比3.6%減)

日本溶接材料工業会がまとめた2018年5月の溶接材料生産・出荷・在庫実績によると、生産量は前年同月比で5.1%減の1万9,571トンの2ヵ月で減少となった。また、出荷量も同5.8%減の1万9,230トンとなり、2万トンを切った。在庫量は7.4%増の1万7,839トンとなった。

主要品種の生産量をみると、▽ソリッドワイヤ(SW)は6,981トン(前年同月比11.4%減)の同5ヵ月目で減少に転じた。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は7,106トン(同0.6%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽被覆アーク溶接棒は2,103トン(同20.8%減)の同2ヵ月連続減となった。その他の品種を含む生産量計は1万9,571トン(同5.1%減)となった。

一方、出荷量では、▽ソリッドワイヤ(SW)が7,258トン(同4.2%減)となり、同4ヵ月連続減となった。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は6,810トン(同6.8%減)の同5ヵ月連続減となった。▽被覆アーク溶接棒は1,937トン(同28.1%減)の同10ヵ月連続減となる。その他の品種を含む出荷量計は1万9,230トン(同5.8%減)の3ヵ月連続減となった。

18年1~5月の生産量では、▽ソリッドワイヤ(SW)は3万8,485トン(前年同期比0.6%減)、▽フラックス入りワイヤ(FCW)は3万5,566トン(同1.2%減)、被覆アーク溶接棒は1万1,762トン(同8.8%減)となり、その他の品種を含む生産量計は10万0,238トン(同1.5%減)となった。

一方、出荷量では、▽ソリッドワイヤ(SW)は3万9,013トン(同3.0%減)、▽フラックス入りワイヤ(FCW)は3万5,355トン(同4.4%減)、被覆アーク溶接棒は1万1,832トン(同12.3%減)となり、その他の品種を含む出荷量計は10万0,899トン(同3.6%減)となった。

 

【建築プロジェクト】
神奈川大学MMキャンパス国際経営学科
S造、22階・5万平方米、竹中工務店で10月着工

神奈川大学がみなとみらい21中央街区43街区に建設する「神奈川大学みなとみらい(MM)キャンパス」(建設地は横浜市西区みなとみらい4-5-1ほか、敷地面積7,848平方メートル)の施工者を竹中工務店に決めた。MMキャンパスは22階建て(高さ約99メートル)、建築面積5,496平方メートルに延べ床面積約5万平方メートルの新校舎を整備し、国際日本学部などグローバル系の3学部を集約する。

MMキャンパスのコンセプトは、「地域住民や企業との知の連携と、交流を図り、街と大学がつながる都市型の未来キャンパス」を想定している。おもに建物の低層部を活用し、地域社会や企業との連携・交流を図る計画。基本・実施設計は三菱地所設計が担当し、CM(コンストラクション・マネジメント)業務は日建設計コンストラクション・マネジメントが担当。10月に着工し、20年11月に完成。開学は21年4月の予定。

建物の構造・規模は、S造・一部RC造・SRC造、地下1階・地上22階建ての高層棟と同3階建ての低層棟による2棟構成となり、総延べ床面積約4万9,821平方メートル(うち容積算定外3,367平方メートル)。用途は大学施設のほかに店舗、駐車場となる。

MMキャンパスに移転する学部は、横浜キャンパス(横浜市神奈川区六角橋3-637)から国際日本学部と外国語学部、湘南ひらつかキャンパス(神奈川県平塚市土屋2946)からは経営学部となる。経営学部は移転後、「国際経営学部」への改称を検討している。3学部を集約することで、グローバルな人材の養成を強化する。

 

【読者投稿】

五能線で津軽平野を巡る

気の置けない仲間6人と五能線に乗って津軽(五所川原と青森)の2泊3日の旅をした。関東が梅雨入りの日に東京を離れ、秋田新幹線経由で五能線「リゾート白神5号」に乗り、秋田美人の駅長のお出迎えのあるあきた白神駅で下車し、壮大な日本海を一望するホテルで1泊した。翌朝、白神1号で目的地の津軽に向かった。

日本海を左に臨みながら新緑の白神山地のへりを列車は走る。今頃東京は雨だろうなんて話をしていると車窓に碧い海原、波の浸食による奇岩の群れが次々と過ぎてゆく。

鯵ヶ沢を過ぎると車内で津軽三味線の生演奏サービス。二人の奏者が奏でる力強くテンポの速い撥の音に乗客は景色を愛でることを忘れ聞き惚れる。

立佞武多と佞武多

五所川原で驚くほどでかい灯篭を見た。高さ23メートル、重さは台車を入れ19トンもあるという。その巨大なものが「立佞武多(たちねぷた)」である。建物(まさに格納庫)に3基が納められている。ロケットの如く聳え立っている。8月の「立佞武多祭り」の日は格納庫が開き市中に繰り出していくという。なんとも壮観な光景となるだろう。

立佞武多の通過するエリアには電線がない。すべて地中化されているとのこと。明治期に電灯普及で電線が市街に張り巡らされた結果、立佞武多は小型化を余儀なくされたが、二十数年前に昔の設計図が発見され壮大な佞武多の復活と無柱電化となったそうだ。

どの立佞武多の足元にも大きく「雲漢(うんかん)」の文字がある。これは中国の「天の川」を意味し、七夕祭りがその原点であるという。祭りの起源には諸説あるようだが七夕祭り、精霊流しなどの習俗に起因を求めるのが主流のようだ。坂上田村麻呂の蝦夷征討にまで遡る伝説もあるようだ。

同じ佞武多祭りが青森では「ねぶた祭り」となり、弘前は「ねぷた祭り」となる。掛け声も五所川原は「ヤッテマエ」で、青森は「ラッセラー」となり、弘前では「ヤーヤドー」とそれぞれ異なるからおもしろい。どうやら合戦の鬨の声らしい。また、佞武多を灯す蝋燭を出せ出せ、昔の佞武多唄にある「いやいやよ」が語源とか、さらにおのおのに諸説があるらしい。

さて、「ねぷた(NEPUTA)、ねぶた(NEBUTA)」の語源は「眠たい」に由来し、弘前や五所川原の津軽で「NEPUTA」、北津軽の青森で「NEBUTA」。「眠たい」がそれぞれの方言で違いを作ったようだ。津軽弁はまこともって難しい方言である。

では、問題をひとつ。「せばだばまいねびょん」は何と言っていますか?答え「それじゃだめだね」です。ご当地では現在も普通に使うと、弘前出身者の話です。

五所川原滞在中は岩木山の威容がどこからも望め、津軽富士と言って人々が自慢するだけのものがあった。

縄文遺跡の三内丸山遺跡

新青森駅に近いところで念願の「三内丸山遺跡」を見学した。ここは、野球場建設中に発掘された遺跡とか。かなりの面積を持つ遺跡で他にも同様の遺跡の存在が複数予想されているようだ。稲作農耕が伝わる以前、今から4,000~5,500年前の縄文人の遺跡である(4,500年前はエジプトではクフ王のピラミッドが建造された時代)。

縄文時代は現代より平均気温が2度ほど高く、常食と思われる栗も豊富であり、掘っ立て小屋であっても風雨や寒暑に耐えられる竪穴住居であった。遺物が捨て場所からは魚介類、鳥獣の骨、木の実や種なども出土され、豊かな生活を想像させる痕跡があった。数多くの大人や子どもの埋葬も発掘され、故人を偲び安息を念ずる儀式も行われていたことは、素人なりにもうかがえた。

この遺跡を象徴するのが巨大な櫓(掘立柱建物跡)で、栗の丸太6本を柱に3層に梁で組み立てられて、高さ14.7メートルほどある。何のために建てられたかは定かではないが、多分物見櫓として使われたと思うが、縄文人も高い処が好きだったのかもしれない。

住居跡や祭事など使ったと思われる大型竪穴住居跡の数から500人前後の集落と推定されている。当時の日本全体の推定人口から判断するとかなり大きな集落だったようだ。縄文人は明日、明後日を思うより日々の糧を得ること、生き残ることに全力を尽くしていたと、個人的に先入観を持っていた。豈図らんや土偶や墓を作り、樹皮を加工し編んだ籠、骨から作った針や釣り針、銛などの制作、文字こそ持たぬが立派な文化が栄えていた(絵でも残してほしかった)。

縄文時代の人々が5,000年後を想像することもないだろうが、残されたこれら遺跡から我々の想像は5,000年前の世界へ時空を超えて限りなく広がってゆく。歴史が重ねてきた事象は不明部分が多くなることは必然である。残された僅かな遺物や痕跡を手掛かりとした考古学による考証とは、分析し推論して行く地道な作業から成り立っている。事件捜査のようだ。

案内してくれたうら若きボランティアガイド嬢の滑らかな説明に聞き入った。個人的な見解も交え中々のものだった。年寄りのへそ曲がりな質問にもサラリと躱し、動じることもない。彼女の案内・説明で見学者が縄文時代への想像を掻き立て、多くの人を古代史・考古学ファンにしてくれるようエールを送りたい。

津軽の佞武多と縄文の三内丸山遺跡を巡る真面目な旅でしたが、もうひとつの楽しみは(ひとりを除き呑ベイ5人は)お酒でした。かつてと比べれば随分と酒量が減りましたが津軽の美味い肴と酒でした。幸いにも旅行中の3日間は晴天に恵まれました。

須之内太郎

 

【雑論・正論】
生還9回の陸軍特攻兵

なぜか若者たちに読まれている新書がある。『不死身の特攻兵/軍神はなぜ上官に反抗したか』(鴻上尚史著、講談社現代新書刊)。陸軍の第1回特攻隊の九九式双発軽爆撃機による<万朶隊(ばんだ)>の特攻隊員として出撃した佐々木友次伍長(21歳)が出撃の度に生還し、上官の命令に抗い9回も生還してきた実話の本である。

鴻上氏は早稲田大学在学中に劇団を結成し、演出・映画監督・司会など多方面で活躍。BS朝日『熱中時代』の終戦特番で元特攻兵・佐々木氏が入院する札幌市内の病院を訪ね、5回にわたる面談によって執筆されている。

佐々木伍長は大本営の偽情報によって、1944年(昭和19)11月12日と12月5日の2回「敵艦に体当たりした」と新聞報道され、その度に地元では<軍神・佐々木友次>として盛大な葬儀を挙行。そのため出撃の度に上官は戦死を強要し「敵艦船を見つけ次第、突っ込め。今度帰ってきたら承知せんぞ!」と、生還を認めなかった。

佐々木伍長の出生は、北海道石狩郡当別村(現・当別町)の開拓農民の7男5女の12人兄弟の6男で、23年(大正12)6月27日生まれ。子どものころ上空を飛ぶ新聞社の二翼飛行機の操縦士に手をふり、操縦士が応えてくれたという。17歳で<逓信省航空局仙台地方航空機搭乗員養成所>に入所。憧れの飛行機乗りをめざす。

この養成所は陸軍が必要な時に軍人操縦士をバックアップ役で前線投入される<予備士官養成機関>であった。それでも佐々木少年は憧れの飛行機乗りになったことから操縦術の腕はメキメキ上達した。その後にフィリピン第四航空軍<万朶隊>(ばんだ、将校4人・下士官8人)に配属され、隊長の岩本益臣中尉に可愛がられる。

44年以降、戦火はますます悪化する。10月25日、海軍最初の特攻隊<敷島隊>の零戦5機が250キロ爆弾装着して出撃した。「敵空母に体当たりし大戦果を挙げた」との大本営発表の偽情報が、「零戦1機でも空母撃沈できる」という<盲信>となり、海軍・陸軍が競い合うように特攻作戦を続け、前途ある若者の無駄死となった。

フィリピン、沖縄沖での特攻戦死者は海軍2,525名、陸軍1,388名(海軍は正確だが、陸軍に記録が無い)の若者が散った。命令を下す上官は「私も後に続く」、「最後の1機で私も特攻する」と言って送り出したが、そう言った上官が特攻したとは聞かない。戦後、<命令した上官>らは特攻の美化や自己に都合の良い解釈で逃げ、<命令された特攻兵>の生き残りを恥じ真実を語れずじまい。体験を語った佐々木氏は92歳で天寿を全うした。

若者たちが<残酷で非人道な特攻兵>の実態を知り、このような事態を繰り返さないためにも読んでほしい。

【加藤 文雄】