スノウチニュース<№230> 令和5年12月


【鉄骨需要月別統計】
10月鉄骨需要量は40万9,600トン(前年同月比15.1%増)
23年度(4月~10月)需要量236万2,250トン(前年同期12.3%減)

国土交通省が11月30日発表した「建築物着工統計調査」の2023年10月着工総面積は10,859千平方メ―トル(前年同月比9.7%増)となり、前年同月比では9ヵ月連続減となった。前年同月比での10,298千平方メートル超えは、今年4月以来の9ヵ月ぶりとなった。
建築主別は、▽公共建築物が559千平方メートル(同33.0%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽民間建築物は10,300千平方メートル(同8.6%増)となり、同9ヵ月ぶりの増加となった。また、10,000千平方メートル超えは昨年8月以降14ヵ月ぶりとなる。
用途別は、▽居住建築物は6,236千平方メートル(同1.1%減)の微減ながら、同14ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は4,622千平方メートル(同28.4%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。
構造別では、鉄骨建築物の▽鉄骨造(S造)が4,015千平方メートル(同16.3%増)となり、同8ヵ月ぶりの増加となった。▽鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が161千平方メートル(同24.8%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。
一方、▽鉄筋コンクリート造(RC造)が2,725千平方メートル(同50.7%増)の大幅増となり、同5ヵ月ぶりの増加となった。▽木造(W造)が3,288千平方メートル(同10.4%減)となり、同22ヵ月連続減となった。
鉄骨需要換算では、▽S造は40万1,550トン(前年同月比16.3%増)となり、同8ヵ月ぶりの増加となった。40万トン超えは昨年の7月以来15ヵ月ぶりとなる。▽SRC造は8,050トン(同24.8%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。鉄骨造の合計では前月比25.9%増の40万9,600トン(前年同月比15.1%増)となった。
23年度(4~10月)の需要量は、▽S造が230万3,600トン(前年同期比12.2%減)、▽SRC造が5万8,650トン(同15.5%減)となり、鉄骨造の合計では236万2,250トン(同12.3%減)となった
23暦年(1~10月)の需要量は、▽S造が321万3,150トン(前年同期比12.0%減)、▽SRC造が9万2,950トン(同0.2%減)となり、鉄骨造の合計では330万6,100トン(同11.7%減)となった

22年10月-23年10月 鉄骨需要量の推移

年/月 S造
(TON)
前年比
(%)
SRC
(TON)
前年比
(%)
鉄骨
(TON)
前年比
(%)
2022年10月 345,200 -35.0 10,700 -2.5 355,900 -34.3
11月 345,600 -0.2 8,000 13.4 353,600 0.1
12月 318,600 -25.5 7,150 -60.6 325,750 -26.9
2023年1月 299,000 -14.0 20,150 178.8 319,150 -10.0
2月 343,200 3.5 2,900 -74.7 346,100 0.9
3月 267,200 -23.9 11,250 123.3 278,450 -21.9
4月 391,200 -3.0 7,900 -46.6 399,100 -4.5
5月 287,400 -15.9 7,500 -50.1 294,900 -17.3
6月 299,300 -29.6 11,100 70.5 310,400 -28.0
7月 313,700 -27.9 10,900 -11.4 324,600 -27.4
8月 290,500 -17.3 8,000 26 298,500 -16.3
9月 320,100 -0.7 5,200 40.6 325,300 0.0
10月 401,550 16.3 8,050 -24.8 409,600 15.1
暦年計(23年1~10月) 3,213,150 -12.0 92,950 -0.2 3,306,100 -11.7
年度計(23年4~10月) 2,303,600 -12.2 58,650 -15.5 2,362,250 -12.3

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
日建連10月総受注額1兆1,125億円(前年同月比2.2%減)
民間工事8,333億9,600万円(同3.7%増)

日本建設業連合会(日建連)が発表した会員企業93社の2023年10月分の受注工事総額は1兆1,125億4,200万円(前年同月比2.2%減)となり、1兆円台は今年6月以来、前年同月比では1ヵ月で減少に転じた。民間工事が8,333億9,600万円(同3.7%増)。官公庁工事が2,700億6,200万円(同6.1%減)となった。
国内工事が1兆1,044億0,200万円(同0.6%増)の微増となり、前年同月比では2ヵ月で連続増となった。民間工事の8,333億9,600万円のうち、▽製造業が2,394億2,400万円(同88.6%増)の大幅増となり、同9ヵ月ぶりの増加。▽非製造業5,939億7,200万円(同12.2%減)となり、同7ヵ月ぶりの減少となった。
官公庁工事の2,700億6,200万円のうち、▽国の機関が1,711億1,600万円(同12.9%増)となり、同1ヵ月で増加となった。▽地方の機関が989億4,600万円(同27.2%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。▽その他が9億4,400万円(同85.7%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減となった。▽海外工事が81億4,000万円(同79.5%減)となり、大幅減が同6ヵ月連続減となった。
なお、2023年度上期(4月~10月)の受注総額は9兆0,196億9,700万円(前年同期比3.7%増)となった。そのうち、▽国内工事が8兆7,611億4,700万円(前年同期比7.5%増)、▽民間工事が6兆5,212億7,200万円(同6.7%増)、▽官公庁工事が2兆1,939億2 300(同9.7%増)、▽海外工事が2,585億5,000万円(同52.4%減)となった。
10月の地域ブロック別受注工事額は、▽北海道が676億2,200万円(前年同月比70.1%増)となり、前年同月比では2ヵ月連続増となった。▽東北が497億0,300万円(同14.5%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽関東が4,271億2,700万円(同0.7%減)の微減となり、同5ヵ月ぶりの減少となった。▽北陸が122億2,000万円(同63.8%減)の大幅減となり、同9ヵ月連続減となった。
▽中部が1,172億2,100万円(同1.5%減)となり、同5ヵ月連続減となった。▽近畿が2,664億7,400万円(同20.8%増)の大幅増となり、同4ヵ月ぶりの増加となった。▽中国が352億4,000万円(同21.4%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽四国が325億0,800万円(同135.5%増)の超大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。▽九州が962億8,800万円(同30.0%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。



10月の粗鋼生産752万トン(前年同月比2.6%増)
9月普通鋼建築用受注量42.7万トン(前年同月比7.8%減)

日本鉄鋼連盟は10月22日に発表した2023年10月の銑鉄生産は540.5万トン(前年同月比3.8%増)となり、前年同月比で2ヵ月連続増。粗鋼生産は752.4万トン(同2.6%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が547.3万トン(同3.4%増)となり、同2ヵ月連増。▽電炉鋼が205.1万トン(同0.5%増)となり、同15ヵ月ぶりの増加となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が580.6万トン(同1.9%増)となり、同22ヵ月ぶりの増加。▽特殊鋼が171.8万トン(同5.0%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は649.4万トン(同2.5%減)となり、同2ヵ月ぶりの減少となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は516.5万トン(同1.6%減)となり、同5ヵ月ぶりの減少となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は132.9万トン(同6.0%減)となり、同2ヵ月ぶりの減少となった。
9月の普通鋼鋼材用途別受注量は、▽建築用が42万6,969トン(前年同月比7.8%減)。うち▽非住宅が29万5,971トン(同11.6%減)となり、▽住宅が13万0,998トン(同2.4%増)となった。
22年度(4~9月)上期の用途別受注量では、▽建築用が255万9,095トン(前同期比11.7%減)。うち▽非住宅が183万7,371トン(同14.7%減)となり、▽住宅が72万1,724トン(同3.1%減)となった。
22暦年(1~9月)の用途別受注量では、▽建築用が391万0,792トン(前年同期比11.8%減)。うち▽非住宅が273万9,099トン(同17.0%減)となり、▽住宅が117万1,693トン(同3.1%増)となった。



9月溶接材料の出荷量1万7,802トン(前年同月比6.3%減)
23年度上期(4月~9月)の出荷量10万1,908トン(前年同期比4.8%減)

日本溶接材料工業会が発表した2023年9月溶接材料の出荷量が1万7,802トン(前年同月比6.3%減)の微増となり、同1ヵ月で減少となった。
出荷量の主な品種は▽SWが7,608トン(前年同月比5.0%減)となり、同4ヵ月連続増。▽FCWが5,906トン(同0.7%減)となり、同3ヵ月連続減。▽溶接棒が2,085トン(同12.1%減)となり、同2ヵ月連続減。その他を含む総出荷量計では1万7,802トン(同6.3%減)となった。
23年度(4月~9月)の総出荷量は10万1,908トン(前年度同期比4.8%減)となり、23暦年(1月~9月)の総出荷量では15万2,632トン(同3.0%減)となった。
なお、財務省の貿易統計による9月の▽輸出量は2,500トン(同20.0%減)となり、同4ヵ月連続減。▽輸入量は6,027トン(同9.2%増)となり、同6ヵ月ぶりの増加となった。
23年度(4月~9月)上期の総輸出量は1万5,642トン(前年同期比12.4%減)。総輸入量は2万4,063トン(同8.2%減)となった。23暦年(1月~9月)の総輸出量は3万1,199トン(同11.7%減)。総輸入量は4万8,619トン(同7.1%減)となった。

22年9月-23年9月 溶接材料月別実績表

出荷量 単位/トン
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比
フラックス入りワイヤ 前年比
被 覆
溶接棒
前年比
合 計 前年比
2022年 9 8,005 ▼2.7 5,948 ▼1.9 2,372 10.1 18,991 0.9
10 7,335 ▼0.6 5,722 ▼9.5 2,186 7.9 17,923 ▼1.0
11 7,630 2.3 5,821 ▼1.9 2,378 3.6 18,250 ▼0.2
12 7,073 ▼8.5 5,376 ▼13.5 2,202 ▼6.2 17,056 ▼8.3
2023年 1 6,282 ▼13.6 5,306 ▼4.2 2,382 15.1 16,180 ▼6.9
2 7,156 1.7 5,330 ▼10.4 2,340 10.3 16,961 ▼3.3
3 7,091 ▼10.4 6,096 ▼0.9 2,281 23.6 17,583 ▼3.7
2023年度 4 6,728 ▼6.4 5,660 0.5 1,810 ▼3.9 16,367 ▼2.6
5 6,469 ▼4.8 5,606 1.5 1,972 4.8 16,122 ▼1.0
6 7,554 3.1 5,873 3.2 2,099 ▼11.3 17,740 ▼1.4
7 7,322 6.1 5,403 ▼9.7 2,131 7.8 17,151 ▼2.0
8 7,199 13.2 5,331 ▼3.1 1,910 ▼11.3 16,726 1.4
9 7,608 ▼5.0 5,906 ▼0.7 2,085 ▼12.1 17,802 ▼6.3
2023年度(4~9月) 42,880 0.7 33,779 ▼1.5 12,007 ▼5.0 101,908 ▼2.1
2023暦年(1~9月) 63,409 ▼2.2 50,511 ▼2.7 19,010 1.8 152,632 ▼3.0

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
「東五反田二丁目第3再開発」の施工は竹中工務店
業務棟S造・20階、延床6.9万平米
住宅棟RC造・S造・39階、延床4.3万平米

目黒川沿いに開発される「東五反田二丁目第3地区市街地再開発」は高層業務棟と住宅棟の2棟構成となる。建設地は東京都品川区東五反田2-700ほか。開発面積は1.6ヘクタールに2棟の延べ床面積約11万2,300平方メートル。住宅棟は11月着工し、27年8月完成。業務棟は24年4月着工の27年2月完成の予定。
同開発の事業コンサルタントはアール・アイ・エー、設計は竹中工務店・アール・アイ・エーJV、施工は竹中工務店(特定業務代行者)が担当し、参加組合員に東急不動産が参画している。
建設する業務棟(オフィス・店舗・駐車場)は建築面積約4,074平方メートルに、建築規模はS造、地下2階・地上20階・塔屋2層建ての延べ床面積約6万9,069平方メートル(高さ104メートル)。住宅棟(共同住宅約390戸・駐車場)は建築面積約2,190平方メートルに、建築規模はRC造・一部S造、地下1階・地上39階・塔屋3層建て、同4万3,200平方メートル(同150メートル)。
開発地は、JR大崎駅と五反田駅の間に位置する東五反田地区のほぼ中央ゾーンにオフィスと居住機能を整備し、機能面や景観面と調和した複合開発地。北側には清泉女子大学、南側には大正大学や品川区立図書館など文教地域でもある。また建築物の浸水対策を図るほか、震災など帰宅困難者の一時滞在施設を計画し、地域防災性の向上を図る。地区西側に約1,500平方メートルの公園を整備し、公園や歩道と合わせ目黒川の親水空間を形成する。

【建築プロジェクト】
早稲田大学「新9号館」の施工は戸田建設
S造・一部SRC造・RC造・W造、15階、延床3.3万平米

  早稲田大学の早稲田キャンパス(東京都新宿区西早稲田1-6-1ほか)の新9号館建設は、敷地面積約73,655平方メートル、建築面積約3,275平方メートル。建築規模はS造・一部SRC造、RC造、W造、地下2階・地上15階建て、延べ床面積約3万,365平方メートル(高さ約70メートル)。新9号館の用途は、共通教室、実験実習室、演習教室、研究室、事務所、学生読書室、早稲田ポータルオフィスほか。設計は山下設計、施工は戸田建設、11月着工、27年1月完成予定。
同大学による建設コンセプトは、<新9号館の設計は、現代の「早稲田の森」を表現するために、建物の外観や内装に緑を配している>と自然のグリーン色を特徴としている。また、自然の降雨の無い所に樹木を植えない方針にし、樹冠で囲まれた「木立のひろば」を設け、交流空間とする。
建物の特徴は、中央部に外部吹き抜け空間(バイオフィリックボイド)により、全ての階に樹冠の緑や自然光が感じられる構造にするとともに、建物内の自然換気を促進させるとしている。


【時論・公論】
鉄骨造の実質生産量を考察

10月中旬、異業種交流会・幹事のK氏より「建築鉄骨状況」を克明に記述したメールを頂いた。論旨は、<2023年度初頭、建築鉄骨需要量は410万トン±10万トンと予測したが、現在それを下回り、業界筋では390万トン台の予測だ。中小物件は増加が見込めず、大型物件は工期遅れとなり、来年度も390万トン前後とみている>。
24年度の低水準に加え、<来年は、さらに2024問題(運送問題)、作業時間の制限が重なるともっと厳しい需要予測になる。鉄骨業界の先行き不透明、後継者難、鋼材価格高、採算性の見込みなどを考慮すると、このまま390万トン台が続けば、この先の鉄骨業界は非常に厳しいものがある>と、鉄骨ファブに厳しい分析をしている。
この数年厳しい鉄骨状況の中、鉄骨ファブ倒産は極めて少ないのは何故か。その要因を調べてみると、①金融緩和策による資金繰りが良い②工場認定制度定着と健全経営体質化③鉄骨需要量より実質生産量が多い④建築のハイブリッド構造と鉄骨製品の多様化⑤鋼材商社による受注物件の介入――などが経営維持となっている。
①物件受注から製品納入までの長期間の資金繰りでは金融緩和で維持できている②工場認定制度の定着で製品・経営とも健全化する③鉄骨ファブの与信の肩代わりだけでなく、鋼材商社の物件受注は増える傾向にある。
ここで考察するのは、④国土交通省の建築着工面積による鉄骨換算需要量と、⑤建築物のハイブリッド構造と鉄骨の多様化。鉄骨換算率では、着工面積1平方メートル当たり鉄骨量換算率はS造100キログラム、SRC造50キログラム。この換算法は統計開始から現在まで変わりなく、1981年新耐震法施行後も現行のままだった。
K氏の論旨でも、<ご承知の通り、昔からの脈々と繋がってきた換算方法で、例えば410万トンとした場合、実質生産量は445~455万トンとみている>と指摘するように、それぞれの立場で推測するか、目安値としている。
もうひとつ建築物のハイブリッド構造である。建築躯体は、鉄骨系のS造、SRC造、RC造(鉄筋コンクリート)、PCaPC造(プレキャスト・プレストレストコンクリート造)、LCT(直交集成材)による木造などに大別され、それら構造を柱・梁部材に使い分けているため分類ができていないため、ハイブリッド造は主体躯体構造に編入されている。
K氏は論旨でも、<鉄骨業界の生産能力は550万トン規模であり、390万トンは約7割需要である。過度な受注競争になれば受注単価の下落傾向を招く>と危惧する。鉄骨需要に一喜一憂せず、あくまでも目安値である。純鉄骨造は減少傾向であり、鉄骨とRC造・PCaPC造など異種構造との接合技術や製作技能が求められてくる。
【加藤 文雄】